四季 「春」
“綺麗な桜の下には、死体が埋まっている”
彼女はまた突拍子も無いことを言い出した。
世にある未知を研究する会、通称ヨミ研。
会員数二名。
会長である彼女と、副会長の僕だけだ。
とはいえ僕はオカルト的なものに何ら興味はなく、むしろ怖い。
年甲斐もなく本気で泣き叫ぶくらいに怖いものは苦手だ。
はっきり言って、幼馴染である彼女に付き合わされているだけ。
UFOだの霊だのに目が無い彼女の、ストッパーとしての日々を送っている。
というわけでやってきたのは町外れの神社。
神社自体がさびれているので、人影はない。
神社の表に桜はない。
しかし、その裏にある少し開けたところに、恐ろしく綺麗な桜が咲いている。
場所が場所だけに本当に埋まっていそうだ。
本当に掘るのかと尋ねれば、彼女は満足気に頷くばかり。
まったく、いい気なもんだ。掘るのは僕だっていうのに。
ざくざくと、シャベルで少し湿っぽい土を掘り起こしていく。
彼女は呑気に鼻歌なんて歌いながら僕の作業を眺めている。
……なんだろうか、昔にもこんなことがあった気がする。
一体何だったかなと思いながら、勢いよくシャベルを突き立てると、カツンッと何かに当たった。
まさか…本当に骨が…?
背中に変な汗をかきながら、恐る恐る覗いてみると、クッキーの缶が出てきた。
あれ、これって……。
ちらりと彼女を見てみるとなんだか照れくさそうな顔をしている。
そうか、思い出した。これは僕らが昔埋めたタイムカプセルじゃないか。
掘りに行きたかったのならそう言えばいいのに、と言えば、僕がまったく覚えていない様子だったので、自分だけ楽しみにしていたようで恥ずかしかったらしい。
普段は冒険少年みたいなのに、偶にこういう女の子みたいなことを言うから困る。いや、女の子なんだけれど。
君がそんなだから、ついつい僕は離れられないのだ。
どんなに怖いものが苦手でも、膝が笑っても。
綺麗な桜の下には、思い出が埋まっていた。