今世妹は転生ヒロインで前世義妹は転生悪役令嬢
初めての執筆です。閲覧ありがとうございます。
とあるところに、武力を重んじる国‐ストーグ国があり、その首都ストロニスに元高ランク冒険者の営むパン屋‐天使の食卓がありました。そのパン屋の家族は、父と母と長男と長女の四人で仲睦まじく暮らしており、家族の長男‐そう、俺「アラン」は転生者である。
前世の死んだ理由は、俺と結ばれてすぐ亡くなってしまった義妹の葬式の帰り道、錯乱した女が「あなたはわたしのもの」とかなんとか喚きながらナイフらしきものを腹にもらいその後の記憶が無いのでそれが原因だと思う。
生れてすぐから前世の記憶を持っていたが、前世にとらわれず今世をきちんと生きようと早々決意した。義妹と結ばれたので未練はもう無いからだ。だが、前世の記憶により怪しい行動とることの無い様に、両親には子供らしく振る舞うことは忘れなかった。
そうして、平和に過ごしていたある日、一つ下の妹の四歳の誕生日におしゃれした妹「レジーヌ」が、自分の姿をよく見ようと鏡の前に立ったと思ったら、いきなりこの国の第一王子「リオン・ブレイスター」の名前を叫んで倒れた。
さすがに、両親もいきなり人の名前叫んで倒れるとは思わなかっただろう。初めて慌てた様子をみせていた。だけど俺は、そんな慌ただしい中ふと考えていた。
(あれ?「リオン」や「レジーヌ」って前世義妹とイチャラブしながらやった乙女ゲーのヒロインと攻略対象者の名前と一緒じゃね?)と。
前世体が弱く入院していた義妹に暇つぶしにと、一番最初に持ってきた乙女ゲーだったはずだ。ただ乙女ゲーを持ってきたのはいいが、いつの間にかヒロインが攻略対象たちにキスなどをされると、俺も義妹にその行動をするという謎ルールが出来上がっていたが、どうしてああなったんだろうか。他の乙女ゲー持ってきても変わらなかったし。ただね義妹よ、隠していたつもりかもしれぬが兄妹もののエロゲーが置いてあったときどうしようかと思ったよ。それはやらなかったけどな。
閑話休題
とりあえず、少し調べたら乙女ゲーの設定と一緒だったため、まぁその乙女ゲーなんだろうと思う。色んな意味で忘れられないゲームだったから設定もきちんと覚えていた。
そして妹は、奇行を始めたり、モブやら攻略やら言い出したので確実に転生者であると思う。同郷として多少は手伝っても良いと思うが、パン屋の手伝いは疎かにしないように躾はします。
さて、転生者であろうが妹は妹だ。元高ランク冒険者の両親に掛け合っていろいろ教えてもらうことにしよう。奇行を始めた妹ヒロインが変なことに首を突っ込まないで危険な目に合わないようにとか何とか言って。
そして妹ヒロインが前世の記憶を思い出して五年たったある日、パン屋に身なりの整った貴族のご令嬢らしき女性が飛び込んできた。顔を涙と鼻水でぐしゃぐじゃにして。そして、妹ヒロインに抱き付いて殺さないでと泣きじゃくる。あぁ、きっとこの子も転生者なんだろう思いながら、妹ヒロインの攻略するから諦めろの声でさらに大きな声で泣く転生悪役令嬢「メイ・アロソミア」を慰めるとする。さすがに店内で騒がれるのはこっちが困るので、転生令嬢を従業員の休憩室に連れていき話を聞くことにする。
最初は泣いてばかりで話が聞けなかったが、頭をなでたりしてあげたりしていたら落ち着いてきたようだ。話を聞くに、兄といっしょにこの乙女ゲーをやっていたが、兄ばっか意識していてゲームの内容が分からずこのままではバットエンドになると思い泣いていたらしい。自分のところと同じく兄妹仲が良かったんだろう。さすがにかわいそうなので少しは手伝ってやろう思っていたが次の一言で固まってしまう。
「助けてよぉ。伊吹にぃ…」
「…え?琴音?」
まさかの前世の義妹である。お互いにきちんと確認をして、完全に転生令嬢は義妹であることが分かった。その後、転生令嬢である義妹の対応にとても困ってしまった。椅子に乗っている俺の膝に横向きで乗り、今世の名前である「アレン」を耳元でずっと愛おしそうに何度も満足げに呼ぶのだ。理性がやばい。そしてそれは、迎えの従者が来るまで続いた。さらに帰り際「待ってるから」と顔を赤くしながら満面の笑顔で爆弾放り投げてくるので、従者に睨まれてしまった。そりゃ、前世の最後の別れ方があんまりだったもんな。
ふーん。そっかー。待ってるか―。今世は健康そうだしなー。
「お父様、お母様貴族のご令嬢と結婚する方法ありますか?」
「あらあら、さっきの子ね。うふふ」
「あるにはあるが…」
「本当?教えてほしいな」
「…難しいぞ」
「教えてほしいな」
「…かなり難しいぞ」
「教えてほしいな」
「まてわかった。わかったからその恐ろしい眼をやめてくれ。それは___
さらに五年後、俺はストーグ国主催の最強決定戦に出ていた。この大会は、ストーグ国の国王が観戦し、優勝者には国王に何でも願いを叶えてもらえるという優勝景品がある。そのため各地から猛者が集まるのである。これは、武力を重んじるこの国であってこそだと思う。
そして、俺はこの大会に優勝し、国王の前に跪いている。
「面をあげよ」
「はっ」
「此度の戦いみごとであった。一つ聞きたいのだが、そなたの武器の名はなんというのだ?」
「”魔装”と申します。魔力にて装備作りあげるものです。」
「ふむ。では、優勝の景品は何が良い」
「はっ、ではアロソミア侯爵家の長女・メイ様との婚姻をお許しください」
そういった直後、国王の隣に立っている体格の良い男‐王国騎士団長が特大の殺気を向けてきた。アロソミア侯爵家の家長であるトゥージュ・アロソミアである。愛娘のいきなりの結婚で納得がいかないのであろう。今にも切りかかってきそうだがこらえているようだ。
国王はそんな様子を見て笑いながら言われた。
「がっはっはっは。そなたの願いを叶えてやろう。それが茨の道であっても」
最後ボソッといってるけど茨じゃなくてもはや怪獣のような気がしますけどね。と思っていたら。
「アレンー!!待ってたよー」
と笑顔で飛び込んでくるどこぞの転生令嬢。
「ああ。お待たせ」
と俺も笑顔で迎える。
この笑顔を守るためなら決して負けないからいいか。
ヒロインは主人公たちの助けもあり無事王子たちとハーレム築いております。