魔王と高校生と幽霊③
今回はキリがいいところまで書こうと思ったら、長くなってしまいました。
でも、これぐらいが丁度いいんでしょうかね?
魔王side
「今日もいい天気だ」
今日も太陽が元気に顔を出して光っている。
朝、外に出て日の光を浴びる。
こうしていると、朝の眠気が吹っ飛んでいく。
「さてと、掃除するか」
あの二人が付き合うようになって、何日か過ぎた。
二人の仲は私から見てもいたって良好。
とても楽しそうにおしゃべりしたり、二人で出かけたりしている。
「青春しているな」
良い事である。
若い時は若い時にしかできないことがある。恋するのも部活動をするのも人の自由だ。
‥‥そういえば私が高校生だった頃の部活の部員達は今頃何をしているのだろうか?
また部員達で集まって食事でも行きたいものである。
そう思いながら掃除を終えると
「「おはようございます」」
噂の二人組がやってきた。
「ああ、おはよう。二人の仲も更に深まっているようだな」
「「ええ//まあ//」」
全くこの二人はまんざらでもなさそうに恥ずかしがって。
「いや~、今まで自分で起きてたんですけど、最近は彼女に起こしてもらう事が嬉しくて~//」
「たいしたことはしていませんよ//わたしが好きでやっている事なんですから//」
「いやいや、君みたいに可愛い子に起こしてもらうなんて他のクラスメートに聞かられたら、俺は今頃裁かれているよ」
「どういたしまして//。それに、わたしはあなただから好きなんです//。自分に自信をもってください//」
二人は何も聞いてないのに、いきなり惚気話を話してきた。
これが世に聞くバカップルという奴か、なるほど確かに少しくるものがある。
「それより、早く行かないと学校に遅れるぞ」
「そうですね。それではいってきます」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
二人は楽しそうに登校していった。
「幸せそうな感じを出しおって」
全く今の二人は最高に幸せだという感じがよく伝わってくる。
‥‥見ている者を多少イラつかせるかもしれないが。
「‥‥‥どうしたものか」
真栄城は気づいているのだろうか?自分の体におこっている異変に‥‥
そして、彼女がどうして彼に惚れるようになったのか気になってきた。
一目惚れなら一目惚れでいいのだが、その一目惚れした時のシーンを見てみたくなった。
私は何かをしようとしたら、とことんこだわる性格をしている。
中途半端にはしたくない。関わり、知ろうと思って、知的好奇心を刺激されてしまった。
「少し調べてみるか‥‥」
私は朝食をとり、すぐに出かけた‥‥
真栄城side
いや~幸せだ~。
彼女がいることがここまで幸せとは思わなかった。
学校に到着した俺は席に座って、授業の準備をしていた。
彼女は学校にいる間の俺を邪魔するわけにはいかないと、今頃学校や周辺を見回っている頃だろう。
「おい、どうしたんだよ」
少しボーっとしていると友達がしゃべりかけてきた。
「何が?」
「何がって、最近お前はおかしくないか?」
「どこが?」
「最近よくボーっとしてるし、何か独り言をぶつぶつ呟いているときもあるし、前のお前から比べると少し変わったよ」
ヤバいな彼女と会話しているところを登校中にでも見られたのか
「大丈夫だ、まあ最近忙しいんだよ」
主に彼女の事で。
「忙しいって、体調悪そうに見えているし、無理はするなよ」
「はいはい」
別に俺は無理はしていない。
むしろ心は満たされている。
この充実をおまえ等に分けてやりたいくらいだよ。
今までの俺の人生から見てもここまで幸せな時間はなかった。
放課後にまた彼女と会えると思うとなると心がウキウキしてくる。
それなのに俺の体調が悪くなるなんてことは有り得ない。
全く心配性な奴だ‥‥。
‥‥俺はそう思っていたが、その日の午後の体育の時間に俺は立っていられないくらいつらくなり、俺はその場で倒れるのであった‥‥‥。
魔王side
「‥‥‥という感じだった」
「なるほど、それが真相なんですか」
私は調べてきた成果を坂本に報告していた。
調べるために近くの事故現場に行ったり、新聞の記事などから調べてみたが、そこから得られた情報を元に、答えらしきものを考察してみた。
「これが真相なのかはまだわからん。本人に確認しようにも、記憶をほとんど忘れていては何も分からんだろう」
「それで、そのことを彼に言うんですか?多少のショックを受けるかもしれませんよ?」
「まあ、そうだとしても今分かっていることは伝えなくてはならんだろう。あいつは高校生だ。一人暮らしをしているし、それなりに根性はあるだろう。自分の身に何が起こっているかを知り、事実を受け止めるのも大切なことだ」
もうそろそろ学校も終わる頃だろう。
学校が終わった後にアパートに帰ってきたら自分の身に何が起こっているかを伝えて、そこから考えて、あいつ自身の答えを決めていけばよい。
ん?この霊力の感じは‥‥。
近くに見知った霊力が感じられたので、私は外にでて、霊力の方に向かってみると、そこには慌てた彼女がいた。
「どうかしたのか?」
「あっ!大家さん。大変なんです!真栄城さんが倒れたんです。今は保健室で横になっています」
「‥‥分かった。私が保護者代理として向かおう」
坂本にバイトを中断することを報告し、なぜ彼が倒れたか大体の理由に見当をつけながら私は学校に向かった。
少しばかり早くなってしまったが問題ないだろう。
知るのが早くなってしまっただけだ。
そこから、あいつ自身が決め、答えを出したそのときは、大家として‥‥。
真栄城side
俺はふと目をあけると天井が写っているのが分かった。
この天井は保健室の天井だっけ?
なんで俺はこんなところにいるんだ?
確か俺は体育をしていて‥‥
「気がついた?」
保健室の先生が話しかけてきた。
「君は体育の時間いきなり倒れたの。調べてみたけど、熱もないし、外傷も見当たらなかったわ。おそらく疲れが溜まっていたんでしょう。しっかり休まないとダメよ」
そうだ、俺は気を失ったんだった。
「他に問題も見当たらないようだし、帰っても大丈夫よ。あ、あと保護者代理の人が迎えにきているようだから。それじゃあお大事にね」
保健室の先生はそういってベッドから離れていった。
保護者代理の人って、いったい誰だろう?
「気がついてなによりだ」
そう思っているとなぜか大家さんが目の前にいた。
「迎えに来た。彼女に助けを求められてな」
「大丈夫ですか。真栄城くん」
後ろから彼女もやってきた。
「体育の時間、遠くから見学していたらいきなり倒れちゃうんですもん。本当に心配したんですから‥‥」
心配かけちゃったな。
「大丈夫、大丈夫。少し休めばまた良くなるって」
「そうだといいんですけど‥‥」
早く元気にならないと。
「大家さんもすいません。心配かけて」
「ごめんなさい大家さん。わたしが見える人が他に大家さんしか思い付かなかったので、頼ってしまって」
「気にするな、これぐらいのことぐらいなら、お安いごようだ」
大家さんは本当にいい人だなあ
「む、そういえば」
「どうかしたんですか?」
「いや、もうそろそろ近所の人が訪ねてくる時間だったかもしれん。‥‥‥すまないが近所の人が訪ねているか見て来てくれないか」
「分かりました!わたし見に行ってきます」
そう言って彼女は壁をすり抜けて飛んでいってしまった。
「‥‥‥さて、どうしてお前が倒れたか分かるか?」
「?、疲れが溜まっているからでしょう?」
保健室の先生から聞かなかったんだろうか?
「まあ、そう考えるのが普通だな。だが、原因は別にある」
「いきなり何を言ってるんですか。大家さん」
原因は他のところにあるって?
別に外傷もないし、病気でもない。なら、疲れで倒れたんだろう。そう考えて当然だ。
「‥‥‥原因は彼女だ」
「は?」
原因が彼女にある?
何をわけの分からないことを言っているんだろう。
彼女は俺にとってのオアシスだというのに。
「彼女はな、幽霊であるが幽霊の中でも悪霊に分類される方だ」
悪霊って言われても。
悪霊だからなんだっていうんだ。
「悪霊は人に取り憑いて、その取り憑いた人の生気を吸って生きている。今お前は彼女に生気を吸われ続けている」
「吸われ続けたら、どうなるんですか?」
「だいたい想像はつくだろう?生気は生きる気力、つまり命と言っても過言ではない。それが吸われるということは良くても廃人、最低死ぬということだ」
俺は信じられなかった。
彼女がそんなことをしているなんて。
「彼女がそんな事をしているわけがないじゃないですか!」
「お前が寝坊するようになったのが何よりの証拠だ。彼女が憑いてから、寝坊するようになった。彼女に起こしてもらっているとも言ってたな、自分で起きられなくなったんだろう。休んでも休んでも彼女に力を吸われているからな。それで体は無意識に睡眠をとって回復しようとしている」
彼女と一緒にいると俺がダメになっていくなんて‥‥。
「まあ、彼女もそれを分かっていないだろう。生きるために勝手に行われているからな知らないのも無理はない」
彼女は悪くないんだ。
なら、俺が生気を吸われても丈夫なくらい強くなればいい。
俺の事を好きになってくれた女の子だ。
俺が頑張らないでどうするんだ。
「もう一つ伝えたいことがある」
もう一つ?いったいなんだ?
「彼女がどうしてお前に惚れたかだ」
俺に惚れたのは一目惚だって言ってたじゃないか。
「彼女はな、事故に巻き込まれ死ぬ直前に呟いた言葉が 恋をしてみたい だった。過去視を使ったから間違いない」
「過去視って?」
「過去視とは過去を見ることができる特技だ。そんな事はどうでもいい」
どうでもいいって、この人は何者なんだろう?彼女が見えるようになったのも大家さんのおかげだったし。
「彼女が呟いた言葉には彼女にとっての全ての願いが込められていた。そして、それが元となり彼女の魂はここにとどめられ、願いを元にして彼女が形成された。だが‥‥」
「だが?」
「彼女の願いは強すぎた。自分の記憶をほとんどなくしてしまうほど。彼女は恋をしたいという願いにとらわれすぎた。恋をしたくてどうしようもないほどにな」
それってつまり恋をするには誰でも良かったってことか?。
例え俺じゃなくても誰でも‥‥
「彼女は言うなれば産まれたての小鳥だった。見えたものが親に見えるようになるように、見えたものが恋人に見えたんだろう。それで、初めて恋人と見えるようになったのがたまたまお前だったというわけだ」
嘘だ。
彼女は俺だから惚れたと言ってくれたんだ。
誰でもない俺だから。
嘘に決まっている!
「まあ、それは燃料のような物にしかすぎ「もういいです!」な‥‥?」
「彼女はただ恋したかっただけかもしれません。でも、俺は本当に彼女が好きになってしまったんです。だから、俺は別にどう思われようとも、どうなっても、彼女の所にいます。それでは‥‥」
俺は走って去っていった。
この現実を認めたくなかった。
やはり、俺には俺の事を好きになってくれるような子はいないのだろうか‥‥。
魔王side
「全く人の話を最後まで聞かない奴だ」
真栄城が走り去ってから、私は溜め息をついた。
まあ、あいつの答えを聞けたのだから良しとするか。
このままいっても、あいつがくたばるのが先か、幽霊の彼女が成仏するのが先かのどっちにしか転ばないだろう。
別れはつらい。互いが互いを思えば思うほどにな。
「私は大家だ。私の住人が困っているのなら、なんとかしてやらないとな」
それが元魔王として、大家として、私のアパートの大事な住人にやってやれることだ。
幽霊side
「どうやら誰も来てなかったようですね。大家さんに報告しないと」
わたしは急いで学校に戻ることにした。
幽霊なので、飛ぶことができ学校に戻るのも楽チンだ。
わたしは学校まで飛んで戻っていった。
「今のは‥‥。どうやら最近、死亡事故があったと聞いて来てみたら、何もいないので、なんともないと思ったらビンゴだったようだ。」
怪しい人物が見ていたことに気づかずに。
次回でおそらくこの長編?は終わりになると思います。