魔王の日常①
私はだいたい朝の6時に起きる。
朝起きたのち、顔を洗い、歯を磨き、着替えて外にでる。
そして箒を取り習慣となっている朝の掃除を開始する。
掃除とはいいものである。
朝早く目が覚めて暇が多かった時に始めてみたが、何より気持ちいい。
魔王でいたときにはこんなことなどしたことがなかったが、自分の領地が自分の手できれいになっていくという光景は見てて気持ちがいいものだ。
「さて、けっこう集まったな」
そうして私は誰も見ていないのを確認し、炎魔法を使ってゴミを処理した。
一度炎魔法を使っているところをご近所の人に見られたが、「燃えないゴミを燃やしてはいけないよ」と怒られただけだった。
まあ、「魔法をつかって燃やしました」などど言っても信じてもらえないだろうが。
朝の掃除が終わる頃に丁度、男子高校生が出て行く。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。7時30分ぴったりにいつも君は出てくるな」
「まあ、時間は真面目に守ろうと心掛けていますので」
「うむ、いい心掛けだ。時間というものは限られている、その限られた時間を有効に使おうとするのは大切なことだ」
「それでは、いってきます」
「うむ、いってらっしゃい」
これは何時ものことだ。
しかし、自分にもあの時ような生活があったと感じると思うと懐かしく感じる。
学生と挨拶を交わしたあと、朝ドラを見ながら朝食をとる。最近のヒロインは外人さんか、金髪とは魔界では珍しくもなかったが、日本では珍しいらしい。
洗濯、家の中の掃除をすませると時計は10時を指していた。
さて、ここからが暇なのだ。
まだバイトまで時間がある。ほかにする事もない……ネットでもするか。
11時になったので、昼食をとりバイトに向かうことにした。
私がバイトをしているところは、とある喫茶店である。その店長とは知り合いなのだが……
到着して店に入ると
「お待ちしておりました。魔王様」
「……敬語はまだいいとしても、魔王様はやめてくださいと言ったはずですよ。坂本さん」
「すいません。まだ昔の習慣がぬけなくて」
この人物は坂本 良平 私のバイト先の店長であり、私が魔王だった頃の部下である。
「三十代の店長が二十代の私に敬語を使っていることがそもそもおかしいですから、また誰かに魔王様なんて呼ばれたら大変なことになりますよ……」
「すみません……」
初めて会った時は大変だった。
なにせ、ふと入った喫茶店で、いきなり『魔王様!』と声が聞こえて、見てみると大人がひざまずいていた。
周りは騒然とし私も何が何だか分からなかったが、大人から感じる魔力と言葉から私の元部下と判断し、とっさに睡眠魔法を使い周りの人を眠らせて事情を聞いてみると、この大人の男がかつての我が軍の将軍グランであることが分かった。
将軍グランは私より先に寿命で亡くなっていたが、どうやらこの世界に先に転生していたらしい。
それから賛辞の言葉を沢山送られたが、私はもう魔王として暮らす気持ちはなく、普通の一般人として扱ってほしいと頼んだのだが、どうも慣れないらしい。
物はついでにと暇な時間を潰すためにアルバイトを頼んだ。
しかし、『魔王様を働かせるなんてとんでもない!』と断られたが、『私を平凡な一般人の男として扱う特訓だ』と言って、なんとか納得してもらい働かせてもらっている。
「それにしても魔王様の料理は評判がよいですよ」
「お世辞はよしてください」
「お世辞ではありませんよ。お客さんみなさんが料理がおいしいと誉めてくださるのですから、おかげでお客さんが増えましたよ」
「料理をするのは楽しいですからね、私の喜んでくれるのなら幸いですよ」
「魔王様の料理がいただけるのなら、私ら部下たちなら卒倒しますよ」
別にたいしたものではないと思うのだが……
しばらくして午後五時くらいになった。
「魔王様、もうあがってけっこうですよ」
「ご苦労様でした」
「いえいえとんでもない。魔王様、本当にありがとうございました」
バイトを終え、私は今日の夕飯を何にしようか考えていると、冷蔵庫にはほとんど何も入ってないことに気づき、スーパーに買いに行くことにした。