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生前

「どうやら、ここまでか」


 自分の死期が分かるとは嫌なものである。

 力が失われていくのが分かる。


「どうなされました? 魔王様」


「私も老いにはかなわなかったようだ」


「そんな……まだ、あなた様には死は早すぎます……」


「そんな顔をするな、今の私に思い残すことなどない。魔界は平穏無事に今まで治めることができた」


「それは魔王様のお力があってこそ成し遂げられたことです」


「大丈夫だ、次期魔王の人物の人格と力なら今の魔界と変わらず平和を保っていくだろう。もう私がいなくても大丈夫だ」


「魔王様……」


「側近よ、私が亡き後は次期魔王と共に魔界のことは任せた」


「はっ、たしかに」


「ふっ、これでよう……やく……寝……むれ……る」


「魔王様!」


「…………」


「……確かに承りました。安心してゆっくりおねむりください。魔王様」














ピピピピピピッ


 私は鳴っていた目覚まし時計を止めた

 どうやら懐かしい夢を見ていたようだ。

 あの時、私は意識を手放したはずだった。

 だが、私は意識が少しして戻ったのを感じ、目覚めてみると人間の男の子として生まれていた。

 私がなぜこうなったのかは、よく分からないが、おそらくは魔王として強すぎる力と魂が記憶も引きつけて転生したのだろう。


「まあ、そのおかげで魔法や技が使えたりするので便利でもあるが」


 その後、私は天羽あもう 明日太あすたと名づけられ、すくすくと育っていった。

 大学を卒業したあと、何をしようか悩んでいたが、祖父が年でアパート経営がつらくなったと言っていたので、アパート経営を継ぐ事にした。

 最初は慣れないこともあったが今では人間の生活にすっかり馴染んでいる。


 魔界で暮らしていた頃の私は最強とも呼ばれていた。

 私は魔王といつの間にか呼ばれ、慕う者がたくさん出てきた。

 そうして慕ってくれる者の為にも魔界を治める事にしたのだ。

 魔界では多少の戦争はあったが、少なくとも食べ物に困ったり、病気が流行ったりする事はなかった。

 全て対策をこうじていたのが、功をそうしたのだろう。

 おかげで、民からも慕われていた。


「今の私には慕う者もいなければ、従えている者もいない。こうして考えてみると寂しいものだ」


 しかし、これで良かったのだろう。何時まで1人の人物が出しゃばる訳にもいかない。

 次の世代へと託していくのが、重要な事である。


「今の私は魔王ではない。これからはアパートの大家として生きていく事を決めたのだ」


 魔王の座は次の者に託した。

 今の私はタダの人間にしかすぎない。

 これからはこの世に生きる普通の人間として生きていこう。

 誰から見ても普通の人生だと思われるような、安息とも言える私の平和な日々を。















 しかし、魔王は知らない。


 これから魔王が送る日常は普通な物もあるかもしれないが、非日常的な事に満ちてしまっていることを。

 

 魔王の心とは裏腹に人生に様々な出来事が起こることを。


 今の魔王には考えもつかなかった。

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