君にとって
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私の町では、夕方の5時になると、
夕焼け小焼けのメロディーが流れる。
それは、子供達に「日が暮れるよ」という合図。
さっき、そのメロディーが流れた。
けれどまだ、私は大きな木の下にいる。
理由はもちろん、君に会うため。
他人から見れば、いい笑いもの。
信じたところで来ないことは、
馬鹿な私でも何となくだけどわかる。
正直な話、薄々と気付いていた。
君が来てくれることなんてないって。
だってさ、 知ってるかな?
君が、離れ離れになってからの2年目の誕生日で、
送ってきてくれたキャラクターのキーホルダー。
実はね?
あのキャラクター、貰った時にはもう好きじゃなかった。
正直、キャラクター系には飽きてた。
だけど、君がくれたからって、私は喜んで鞄につけた。
もちろん、好きだからじゃなくって、君がくれたから。
君は、今の私の好みを知ってる?
キャラクターだけじゃない。 読書だけじゃない。
食べ物だって、ファッションだって、好みは変わったよ?
君はそれ、知ってる?
私は何度も伝えようとした。
毎年の君からの誕生日プレゼントも楽しみにしてた。
だけど、君からの贈り物には、君の住所がない。
ただ、私は寂しかった。
君と話したいことは山ほどあるのに、
私には、それを伝える手段がない。
君からの一方的な贈り物。
だけど、その贈り物もいつしかなくなった。
何となく、気付いていたよ?
だけど、認めたくなかった。
君が10年前の約束を忘れてるなんて。
だけど、信じたくなかった。
君がもう、私のことをどうでもいいと思ってるなんて。
信じた私が馬鹿だったのかな?
こんな時間まで、一途に君だけのことを想って、
こんな時間まで、時間を気にしながら読書を続け、
今日の今日まで、君を好きでいた私が馬鹿だったのかな?
町の人に、「忘れろよ」と何度言われたことか。
「俺と付き合え」と言い寄られたこともあった。
だけど、いつだって私は、
「待ってるって、約束したから」って笑って誤魔化した。
そんな生き方が、間違ってたのかな?
わかんないよ。 わかんないよ。
ねぇ、 教えて? 何が本当で、何が嘘なの?
私がこのまま待ち続けても意味はあるの?
ねぇ、教えて?
君は忘れてるだけなの? それとも、何?
嫌いになっちゃったの? ねぇ、教えて?
私は君にとっての何? わかんないよ……。