借金
僕の友達の一人にN氏という奴がいた。N氏は言葉は悪いが馬鹿なのだ。例えば、レンタルしたDVDを返そうとしていたのにN氏の友人に、
「それ、かしてくれないか?」
と聞かれ、すぐに貸してしまった。そして数日後にレンタルショップから電話が掛かってきて気付いたのだった。N氏はそのDVDを貸した友人が返したと思っていたのだ。普通は人が借りたDVDを他人が返すとは考えないだろう。このように考えもしないで行動をしてしまうため、N氏は馬鹿だと言われるのだった。このようなN氏の笑い話のなかに恐ろしい話がある。
ある日、僕がN氏と食事をして、そろそろ帰ろうかといっていた時に、
「俺、ヤミ金に手を出してしまったみたいでな。明日の午後に『耳を揃えて持ってこい』って怒鳴られちまった・・・。」
僕にはどうすることもできないと分かったので、辺り触りのないように聞いてみた。
「大丈夫そうなのか?」
「ああ、何とかする。ただ・・・」
「ただ?」
「明日ニュースに出るかもしれない。」
と、N氏が言ったので、死ぬことは無いだろうよと笑って慰めて僕たちは別れた。
そして次の日。僕はいつものように昼食を食べ、大きな石のように佇む固いソファに腰掛け昼時のニュースを見ていると、
「速報です。今日の正午過ぎ病院に両耳のちぎれた男性が病院に運び込まれました・・・」