行きたいところってある?
「夏休みに旅行したいなーって思ってるんだけど、アヤカはどこか行きたいところある?」
「え、二人で行く前提?」
「嫌だった?」
「嫌じゃないけど、ちょっとびっくりしただけ。んー、私は別に行きたいとこないな……。ユミはどこか行きたいの?」
「沖縄! 北海道! 福岡とか、名古屋も大阪も行きたいし、京都も気になるよね。仙台も良さげだし、四国も興味ある」
「たくさんあるね……」
「アヤカはないの? 本当に? 好きなマンガの聖地に行きたいみたいなのとか、テレビで見たアレが気になるとか、そういうのないの?」
ユミにそう言われて、私は少し考えてみる。
「……ないことはないけど、そんなにお金かけてまで遠くに行きたい気持ちがないかな。近場で遊ぶほうがお金かからないし、よくない?」
「えー? いや、お金かかるのが困るのはわかるけど。でもたまにはどこか遠くに旅行に行くのはアリじゃない? 早めに予約したら割引みたいなのもあるし……。っていうか、ないことはないって言ったね? それを聞かせてよ」
「大したことじゃないよ。こないだ読んでたマンガが福岡が舞台だったから福岡は行ってみたいかもー、って思っただけ。でもそこまでするほどの興味じゃないから……」
「いいじゃん福岡! 行こうよ!」
「……そもそも私、旅行ってしたことないかも」
「え? 修学旅行とかあったでしょ?」
「修学旅行は別だよ。アレは学校行事だから。それ以外で旅行した記憶、ないなぁ。ユミは慣れてるの?」
「んー、私もそんなに旅行に慣れてるわけじゃないよ。親戚のとこにたまに行くくらいかな。だから家族以外とは旅行ってしたことないかも」
「……家族以外としたことないのに、私と二人で旅行に行きたいの?」
「やったことないからやってみたいんだよ。……アヤカは大事な恋人だし」
「改めてそう言われると、照れるなぁ」
「で、結局アヤカは旅行したくないの?」
「……正直、その、二人で、何日も一緒にいることになるのが、ちょっと不安というか、照れくさいというか……」
「それは私もちょっとわかるけど……」
「だよね?」
「でも、それも含めて、恋人と旅行っていう経験をしてみたいなー、って気持ち」
少し照れくさそうなユミが、とてもかわいく見えた。
「……ユミがそこまで言うなら、じゃあどこか行こうか」
「いいの?」
「いいよ」
「どこにする? さっき福岡って言ってたから、福岡にしよっか」
「そうだねー……。ユミは他に行きたいとこたくさんあるんじゃなかった?」
「福岡も気になってたから、アヤカが行きたいなら福岡がいいよ」
「それなら、福岡で決まりかな」
「ホテルとか飛行機とか、色々と予約しなくちゃね。……っていうか、アヤカ、旅行用のキャリーバッグ持ってる? 旅行したことないんだよね?」
「……持ってないかも?」
「だよね、それも買わなくちゃ。……旅行の準備ってワクワクするね」
ふにゃっとした笑顔でユミが楽しそうに話す姿が、とても愛しく感じた。
それから二人でアレコレ話して、買うものや泊まるホテルなど、いっぺんには決められないから、少しずつ色々と見て進めていくことになった。決めることがたくさんあって大変だけど、すごく楽しい。
その時間を楽しく感じるのは、大好きなユミが一緒にいてくれるからかな、と思った。ユミと一緒に過ごせる幸せな時間を、大事にしたい。
〈了〉




