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「私、次来るまでにはもっとテニスの練習をしておくわ! このネットとラケットとボール、そして作業着はどちらで買えるの?」
「えぇ!? えっと、ど、どこで……? ど、どこだろう? クリス」
「え、僕に聞くなよ、分かんねぇよ。とりあえず作ってもらって後で配達してもらえば?」
「そうだね! そうしよう! あ、ちなみに作業着なら私の手作りなので簡単なもので良ければお作りしますよ、スカーレット様専用のものを」
「まあ! あなたドレスまで作れるの!?」
「あ、いや今着てらっしゃる物程度のものが限界ですが……」
「十分よ! とても動きやすかったしメイドが居なくても着やすくて、何よりも軽かったわ! お化粧品も作れてドレスまで作れるなんて、あなた本当に何でも出来るのね!」
「いや~、それほどでも」
手放しに褒めてくれるスカーレットに気を良くして思わず照れた仕草をすると、隣からクリスが小声で茶々を入れてくる。
「器用貧乏なだけなんですぅ~、だろ?」
「うっさい!」
とは言え、まぁ実際はクリスの言う通りである。服飾関係の裏方の仕事をしていた事もあるので、裁縫やら型作りなどは一通り知っている。それを使って自分の服をいそいそと拵えていたのは秘密だ。部屋着など誰に見せるでもないのでそれで十分だったのだ。
「はぁ、私今日は本当に感動したわ! 私のお友達にも沢山宣伝しておくわね!」
それを聞いて私はパァっと顔を輝かせた。
「ありがとうございます!」
「それじゃあ今日はこれで失礼するわ! テニス用品も届くのを楽しみにしているわね!」




