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「また二人で悪巧みですか?」
「悪巧みだなんて人聞きの悪い! 今後の傾向と対策を練っていたのよ」
「そうそう。悪巧みなんてしてねぇよ」
「どうだか。どうせこの3人もいつか客になるかも! なんて考えているんでしょう?」
「バレてら」
あっけらかんと言うクリスを肘で小突いた私は上品に、ほほほ、と笑っておいた。
「ははは! まぁいざって時はあんたに頼むよ。確かにスッキリしそうだ。でな、話戻していいか?」
「もちろん」
「その他にもまぁ細かい事はあったんだが、まぁそういうのは別にいいさ。料理の件は困るが、どのみち一部屋ずつに風呂は予算的に無理だからな。そんな事よりも今、ちょっと妙な話が出ていてな」
「どういう事ですか?」
「聖女は何やら計画表みたいなのを持ってるみたいで、それにこれから起こる事が細かく書き込んであったらしいんだ。で、俺たちはそれについてちょっと疑ってる」
「と、言うと?」
「覚えてるか? 一週間前の城下町の火事」
レイモンドの問いかけにトワはコクリと頷いている。
「ええ、覚えていますよ。何の証拠も無くて自然発火で片付けられた奴ですよね?」
「そう。あれをな、聖女が言うには放火だって。で、その後犯人はすぐ捕まったんだが、それを見つけたのが聖女様なんだよな」
神妙な顔をしてレイモンドが言うと、その続きをヒューが話しだした。
「最初は特に違和感も無く流石聖女! なんて流れだったんですが、そういうのがその後も何度か続いたんですよ。で、そのいくつかは聖女が解決したんです。証拠もないのに。どうもこれがきな臭いという話になりまして。で、寮に来ると言うのでついでに探りを入れてみたら」
「やべぇノートが見つかったんだな、これが。おまけにそこには市井で起きた小さな事件が事細かく書かれてた」
ノーマンは言いながら2つ目のマドレーヌを頬張っている。
でも私はここでふと疑問に思った。
「ねぇねぇ、どうして市井で起こった事をトワは知らないの?」
「ああ、そっか。ヒマリには詳しく話していませんでしたね。俺は王の騎士団なので基本的には城の警備と王の護衛が仕事なんですよ。そして白の騎士団と黒の騎士団が町の護衛。聖の騎士団は主に教会の警備なんです。ちなみに聖女という役職は教会に準ずるので、聖女の護衛は主にこのノーマンの仕事なんだよ。一週間に一度起こった事を話し合う定例会があるんだけど、今回はほら、俺寝込んじゃったから」
「ふぅん。管轄が違うって奴か。なんか警察みたいだね。ていうか聖女、やっぱり預言者か何かなの? 私の事もまるで見てきたかのように悪口書かれてたし」
「いやお前、あれは別に悪口じゃなかったぞ。ただの真実だったろ? だから訂正後の記事もお前んとこだけ直ってなかったろ?」
「うぐ……ま、まぁ私の事はいいのよ! でもあんた達も変な事言ってたじゃないの!」
「ああ、ブロッコリー事件ですか? あとクリスのコンプレックス事件」
「そう、それ」
「手紙もだぞ! なるほど、読めたぞ! 聖女はやっぱ魔女だな!」
「相変わらず単純ねぇ。で、そのノートには他に何が書いてあったの? ていうか、そこに書かれてる事が全部当たるんなら、聖女が犯人なんじゃないの?」
思わず思っている事をぽろりと言うと、トワを含めた団長4人組が青ざめた。
「ヒマリ! それは外では絶対に言っちゃ駄目だからね!? そんな事言おうもんなら、次の日には絶対に首刎ねられるから!」
「え、マジで? 分かった。気をつける。でも今は別にいいよね?」
「いや、まぁうん……今はいいけど」
渋々頷いたトワに私は言った。




