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「いいのよ! ヒマリはもう私の大事な大事なお友達なんだから! あ、ちなみにこの会の取りまとめ役はルチル様なの!」

「あ、ルチ、姫が……それはそれは、身に余る光栄です」


 まさかの大ボスがルチルだと聞いて私は妙に納得してしまった。なるほど、ルチルならやりかねない。


 何かに納得したように頷く私に、突然マリアンヌがズイっと顔を寄せてきた。その頬は何故か赤らんでいる。


「あのね、その、このお話をしてもいいかどうか分らないんだけど、ヒマリのお腹にはもしかしたら騎士様の赤ん坊が居るかもしれないって……ほんとう?」

「ひえっ! ど、どうしてそれを!?」


 トワは確か言っていたはずだ。この話は王にしかしていない、と。ところがどうだ! マリアンヌが知っているではないか! という事は、ほとんどの貴族の女子たちが知っているかもしれないと言うことだ。


「姫が口を滑らせたの。内緒よって言われたから誓って誰にも言ってないわ。でもその……どうしても聞きたくて。きゃっ!」


 恥ずかしい! と両手で顔を覆ったマリアンヌは耳まで真っ赤だ。どうやら今日わざわざここまで伝言を伝えにきてくれたのは、それが聞きたかったらしい。


 しかしトワと約束をした手前(これからはトワとクリスに買い物に行って欲しいというのが本音だが)、ここはきちんと嘘をつかなければなるまい。


 私は両頬を手で抑えて出来るだけ恥ずかしそうに見えるようにコクリと頷いた。


「お恥ずかしいお話なんですが、そうなんです……まだ分からないんですけど、この世界でははしたない事ですよね……だから聖女にもそんな風に言われてしまうのかもしれませんね……」


 そう言って涙を浮かべた私を見てマリアンヌが息を呑んだ。


「恥ずかしいだなんて! そりゃ確かに良い顔をしない家が多いとは思うけれど、私はあまりそんな風には思わないわ。だって、赤ちゃんが出来るのはとても喜ばしい事だもの!」

「そう言って頂けると胸のつかえが解けます。私の世界では結婚と妊娠の順番が逆になってしまう事を授かり婚と呼んでいました。ほら、赤ちゃんは神様から授かるものですから」

「赤ちゃんは……神様から授かる……!」


 私の一言に何故かマリアンヌは驚いたような顔をして私を凝視してくる。そんなマリアンヌに驚きつつも、私は話を続けた。


「そうです。赤ちゃんはタイミングが合えば必ず出来るという訳ではないです。タイミングをズラしても出来る時は出来るし、合わせても出来ない時は出来ない。それはもう神にしか分からない事です。だから私の居た世界では赤ん坊は神様が授けて下さった宝物、つまり授かり婚と呼ばれていたんですよ」


 そこまで言った時、何故かマリアンヌが私を拝みだした。


「マ、マリアンヌ様?」

「なんて素晴らしい話なの……赤ん坊は神様から授かった宝物だなんて、とても胸に響くわ……あ、涙が……」


 そっと顔を上げたマリアンヌは何故か涙を零し、とても慈悲深い顔をしている。そんなマリアンヌを見て慌てたのは私とクリスだ。


「な、泣いてんぞ! おい!」

「ハ、ハンカチハンカチ!」


 あまりの衝撃に私がハンカチを取りに行こうと立ち上がると、手をしっかりとマリアンヌに繋ぎ止められた。


「大丈夫よ、ヒマリ。ハンカチなら持っているわ。ごめんなさい、ちょっと感動してしまって……そう、早く分かるといいわね、ヒマリ」

「ソ、ソウデスネ……」

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