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「そうだった! 思い出した! あんの陰険聖女! 私の事を出しゃばり姫って呼んだのよ!? しかも誰にも聞こえないように、すれ違いざまによ!? 何なの!? あの女!」


 ルチルはそれだけ言ってまた人参を握りしめて怒りに任せて食べ始める。


「そんな事を言われたのですか? 姫」

「そうよ! そりゃ私は全っ然おしとやかじゃないし? あちこちからじゃじゃ馬の末の姫って言われてるわよ! でもね! 初対面の奴にそんな事言う!? 普通!」

「あー……それに関しては私は何も言えないかもー……」


 何せ初対面でルチルを見るなり「その化粧、正気か?」と聞いた女だ。これはもしかしたら根に持っているのか? そんな事を考えながらチラリとルチルを見ると、ルチルは何故かにこやかだ。


「何言ってるのよ! 確かにヒマリは本当の事を正直に私に言ったけど、その後ちゃんと手直しまでしてくれたじゃない。面と向かって真っ向勝負してくるのと、こちらが反撃出来ないと分かっていて陰険な事してくるのは全然違うわ」

「そ、そう? ならいいけど。で、ルチルはそれで怒ってここに来た、と。パーティーほっぽりだして」

「うん」

「うん、じゃなくて。そういう事すると余計に後から何か言われるんじゃないの?」

「かもね。でもいいの。どうせ? 私は出しゃばり姫ですし!? ふんっ!」


 そう言ってそっぽを向いたルチルを見てトワとクリスが呆れたような顔をしている。


「まぁとにかくとんでもない聖女だって事だけは分かったわ。で、クリス、あんたは結局どうすんの?」

「え? ここに居るけど? 当然じゃん! 何にもピンと来ないどころかあれは絶対に聖女じゃない、むしろ魔女だ!」

「魔女ってあんたね。でも不思議。どうしてあんた達の事そんなズバズバ言い当てられたんだろうね?」

「それがさっぱり分からないんですよ。聖女はこちらにやってきてから王と王妃以外とは話をしていないはずですし、何よりもクリスさまの事なんて知るはずもない。それなのに彼のコンプレックスまで言い当てるなんて……謎です」

「そうなんだよな。お前だってブロッコリー嫌いとか誰にも教えてないだろ?」

「もちろん。騎士たるもの弱みはそう簡単には人には見せません」

「そう? ブロッコリー残そうとしてたじゃないの。案外気づいてないだけで周りにはバレてんじゃないの?」

「あ、あれは! 気を抜いていたからで! ヒマリの前以外でブロッコリーを残そうとしたことなんてありませんよ! むしろいつも最初に食べるのでブロッコリーが好きだと思われている疑惑があるぐらいです!」

「ああ、そう。嫌いなもの先に食べるタイプなんだね」

「あ、うん、そうかも。最後は好きなもので締めたいから」

「それは分かる。僕もそう」

「私は逆~。いっちばんお腹減ってる時に好きな物たべた~い。ヒマリは?」

「私? 私もルチルタイプかも。って、そんな事はどうでもいいのよ! とりあえずクリスはこれからもここに居る。聖女はガチでヤバい奴って事でいい?」

「いいと思うわ」

「ああ」

「そうですね」


 三人は同時に返事をしてハーブティーを飲んだ。それを聞いた私は、聖女には絶対に関わらないようにしようと心に決めたのは言うまでもない。


 ところが、この聖女事件は思わぬ方に向かって進んでいく事になる。



 聖女がやってきて一週間。町はまだお祭り騒ぎで賑わっていた。城下町には沢山の屋台が並び、あちこちで今も大バーゲンをしている。


 だというのに私はと言えば。


「ひぃ、ふぅ! もういっぱ~つ! よっこいしょ~!」

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