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 ハシゴから下りてきたスタンは私の言葉に嬉しそうに頷いて見せた。もう見違えるほど自信満々のスタンに、思わず私も嬉しくなってしまう。


「そうなんです! 地元ではただの警備だったんですが、今は護衛の仕事をしているんですよ!」

「護衛!? 誰の?」

「有名な俳優です。今はちょうど休憩中で、屋上で昼食を取っていた所だったんです」

「俳優さん!? 凄いね! でも休憩中だったのにわざわざごめんね」

「いえいえ。もう食べ終えたから大丈夫。それにしてもこんな所でどうしたんですか? 迷子にでもなりましたか?」

「ううん、聖女様が召喚されたから城下町はお祭り騒ぎでしょ? それに乗じて買い物に来たの」

「なるほど。それでその大荷物?」

「そうなの。ちょっと買いすぎちゃったよね、どう見ても」


 そう言って私が両手の袋を持ち上げると、スタンもおかしそうに笑って頷く。


「もう少しで勤務が終わるので、それまで良かったら待っていてもらえますか? 私が家まで持ちますよ」

「え! でも悪いよ! 仕事終わりにそんな事してもらうなんて!」


 私の言葉にスタンは柔らかく微笑んで首を振った。


「お礼も兼ねてなので気にしないでください」

「お礼ってあんなに立派なお肉貰ったのに!」

「ははは! 美味しかったですか?」

「もう、すっごく! ローストビーフにして食べたの! ジューシーで噛んだら肉汁が溢れて……最高に美味しかった!」


 前のめりでお礼を言った私を見てスタンがそっと手を伸ばしてきた。何事かと思って思わず身構えたが、そんな私にスタンが申し訳なさそうに笑って頭を撫でてくれる。


「あ、驚かせてすみません。何だか急に撫でたくなって。また良い肉が手に入ったら持っていきますね」

「そ、そうだったんだ! ちょっとびっくりしちゃった! 誰かに撫でられるなんてもう何年も無かったから。それに今度良いお肉が手に入ったら、次は一緒に食べようね」


 そう言ってにっこり笑うと、私の頭を撫でていたスタンの肉球がじんわりと暖かくなった。


「ええ、是非!」


 はにかんだように笑ったスタンを見て私がほっこりしていると、突然誰かが私たちの間に割って入ってきた。


「よぉ、スタン! うちのパートナーに手、出すなよ?」

「こ、高位妖精様!?」

「クリス!? あんた何でここに居るの! 聖女のお披露目会に出るんでしょ!?」


 スタンと私が突然現れたクリスに目を丸くして驚いていると、クリスはふふんと鼻で笑った。


「聖女? あー、ないない。僕はやっぱヒマリ選んで正解だったわ」


 どこかやさぐれた様子のクリスを見て私が唖然としていると、横からスタンが小声で尋ねてきた。


「高位妖精様は聖女様にお会いしに行ってたんですか?」

「そうなの。なんかね、パートナーを私と聖女間違えたかもだからそれを確かめに行くって朝出てったんだけど……」

「間違えた? そんな事ってあるんですか?」

「知らない。でもこんな事初めてだって言ってたからクリスのポカよ、きっと」

「ヒ、ヒマリさん! 相手は高位妖精様ですよ!?」

「あー、いいのいいの。こいつ、ほぼうちに居直り強盗したようなもんだから」

「い、居直り強盗……」

「おい! 全部聞こえてんぞ! てか、何でスタンがこんなとこいんの? 地元帰るって言ってなかったか?」


 私たちを軽く睨んだあと、クリスは自分の身長の二倍程ありそうなスタンを見上げて言った。

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