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「わっかんねぇよ! 何せこんな事妖精界でも初めての事なんだから! 何か最初から嫌な予感はしてたんだよな。予言書引く時からさー」


 そう言ってクリスは私の隣に戻ってきてまたチキンを食べ始める。妖精は本当に自由だ。


「ねぇ、予言書引くって何?」

「ん? 行き先決める予言書は別に一つじゃないんだよ。予言書選定の儀式って言うのがあってな? 部屋の真ん中に台が置いてあんの。で、そこに手乗せると山ほどある予言書から一冊落ちてくんの。めっちゃ光ったから珍しく当たり引いた! と思ったら……これだもんなぁ。やっぱ僕に虹色はまだ早かったんだよ」

「へぇ、そんなくじ引きみたいな感じなんだ。誰の所に行くかは完全に運って事?」

「そう。かんっぜんに運! で、その後それを読んで解読すんの。僕の場合は『金の年に召喚されし乙女』だったから今年じゃん? で、巷で噂になってた異世界から来た女を探してたって訳」


 ワインを飲みつつフンと鼻を鳴らしたクリスに私は目を丸くした。


「いやあんた、そりゃどう読んでも私じゃないでしょ!」

「なんでだよ」

「なんでって、そもそも私はもう乙女って年齢じゃないし、召喚されたって訳でもないじゃん! 勝手にこっちに倉庫通ってやってきた不審な社畜だよ!? どこをどう間違えたら私の所に来ちゃうの!」


 自分で言ってて何だが、流石にこの年齢で乙女とか言われると何だかいたたまれない。


「くぅぅぅ! お前、若く見えるんだよ~!!」

「それはありがとう。でも流石に乙女ではないわよ。それはもう全世界の乙女達に土下座しないといけないレベルで乙女ではないわ」

「ヒマリ、そこまで自分を卑下しなくていいのに! 私はあなたをまだ乙女だって思ってるわ!」

「止めてよ恥ずかしいでしょ! 私はもう大人よ。でも嬉しいからルチルにビールのおかわりをあげよう」

「ありがとう!」

「そんな言うほどの年齢ですか? ヒマリは。確か24才でしたっけ?」

「そう。乙女って言ったらそれこそ十代までじゃない?」

「どうでしょう? 俺はまだ24は十分乙女でも通用する気がしますが」

「そうかなぁ~?」


 何だか悪い気はしないが、クリスのは多分本当に間違えたのだろう。


「まぁ何にしても一回会ってくれば? もしかしたら何かビビビ! っと来るかもよ?」

「そうかぁ? 僕は結構ここでの生活気に入ってんだけどな」


 ボソリと言ったクリスに私は思わず驚いてしまった。いつも文句ばかり言ってるが、案外私たちは上手くやれていたのだろうか。


「そう言ってもらえるのは光栄だけど、間違いだったら正した方がいいと思う。そういうのって後からジワジワとボディブローのように効いてくるから。でももしあんたが聖女に会って違うなって思ったらまた戻ってくれば? 別に追い出しはしないわよ、私だって」


 私の一言にクリスが顔を輝かせた。それまでしょんぼりしていた羽が虹色に輝く。


「そ、そっか! そうだよな! 流石のお前だって追い出したりしないよな!?」

「何よ、本気で私が追い出すと思ってたの? ていうか、追い出すつもりならもうとっくの昔に追い出してるわよ」

「それもそうだよな! ヒマリ! おかわり!」


 そう言ってワイングラスを差し出してくるクリスを見て私は苦笑いを浮かべながらビールを注いでやった。


 それにしてもそんなにも薄情な女に見えていたのかと問い詰めたい。



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