#7 ○公務:式典参加(高貴な訪問者と奇妙なうわさ)
◇◇最近の離宮での生活
10日程経った頃、息抜きに庭園の指定場所へ
マリアをお供に散歩は許された。マリアとは、あれ以来仲良くしている。
いい息抜きになってきた。
リザリアの魔法レッスンに、時々マリアも参加している。
上手く、リザリアを働かせることもできてきた。
食事は、自分の部屋でレッスンを兼ねて済ましている。
やはり、日本人向けのフレンチやイタリアンレストランの味は無理ね。
王族向け(ロイヤル)の宮廷料理なのだが。でも、少し醤油を垂らして
食べたくなる時がある。ガーリックとバターに醤油は欲しくなるね。
ストレージには、魚醤はあるけど、チートは見せられない。
まあ、慣れるしかないなと思った。
でも私は、日本人向けの味付けが合うから、一人で日本に残ったのに。
召喚されてしまったから、台無しになっている!
人生理不尽に感じる時もある!と思うが、とてもやりきれない思いを抑えた。
◇◇王都修道院のバザーと炊出し
公務(式典参加)になってから1週間。
式典は、王都修道院のバザーや炊出しへの参加だった。
王都修道院は神殿と並び、この国の信仰の中心になっている。
公務として重要なのは、単純に出席をするだけじゃ終わらせて貰えない。
開催先とのご挨拶や、上級貴族(公爵家、侯爵家、伯爵家)との
親睦を通して、近しい触れ合いが大切になっている。
王女様が、この国の半分(北地方)の臣民に人望があるのは
それを大切にして役割を果たしているからなの。
大変なのは、それを引継いで、決して落とさないようにすることなの。
自分に公務参加の重要性と目的を言い聞かせ、気持ちを切換える。
本当は、ドキドキが収まらない。
王都修道院の院長へ、いつもの日常の挨拶できていた。
院長は、「お元気なお姿が見れて、良かった」と喜んでくれた。
私は、刷り込みイメージの実演の力もあり、何とか果たせたと思った。
毎月恒例で、行われていて、王女様はいつも参加しているようだった。
また、ドキドキが始まった。いつも出席しているなら、少しでも違和感が
あれば見抜かれてしまうかな?
リリアーヌは
「王女様は訪問する上級貴族に挨拶をします、近況などもお聞き下さい」
「私が王女様の横に必ずいます、何かあればすぐにフォローできます」
私は、その言葉に心強く思った。
年齢は同じくらいなのに姉のような存在を感じた。
ところが、リリアーヌの年齢をほかの侍女に聞くと20才だった。
えーと、ステータスでは、私の年齢は18才だった。
顔が若くなったのも、そのためなのかも?
リリアーヌは姉でもいいかもと思った。
召喚されていいことがなかったが、また18才になれるのも、いいなと思った。
教会のバザーや炊出しは、沢山の人でにぎわっている。
私の、開催の挨拶も問題なく終えることがた。
リリアーヌは
「いつもの3倍の人出になっていますね」
「皆さん、王女様への回復祝いも兼ねて来てくれていますね」と言っていた。
私も、
「開催の挨拶のあと、いつものように皆さんへ向けて、ゆっくり見渡しながら、
手を振ったら、皆さん一層嬉しそうに拍手を強めて、応えてくれているのを
感じました」と伝えた。
リリアーヌは
「その気持ちを忘れないでくださいね」と言った。
私は、王女エリーヌに浸っていて嬉しい自分。
同時に、ヤバイ沼にハマっていくような自分を感じていた。
私は、上級貴族の、ご来賓の方々へのご挨拶を、丁寧に行っていた。
かなり高位の貴族も多いが、リリアーヌが囁きアドバイスをしてくれる。
私は、それでも、かなりの知識が入っていると感じた。
いつしか、流れに乗れてきた? ドキドキは収まっていた。
◇◇変装した高貴な訪問者
突然、何か? 変装した高貴な方が来られた。
とても嬉しそうな顔をして、私に近付いてきた。
私はすぐに気付いた。王女エリーヌの婚約者だ。私の婚約者になるの?
リリアーヌはすぐに、変装した高貴な方を侍女達の後ろへ招いた。
2人でヒソヒソ話をしていた。
リリアーヌは話が終わると、私に握手をさせて、送り出した。
私は、盗聴魔法を使って、【遠隔盗聴】をしていたよ。
二人は、とても親しげに話していた。婚約者より親しくない?
今は、お昼をいただいています。
さすがに、質素なお食事になる。まさか王女だけ豪華な食事をする
ことはできません。
ついたてで少し囲いを作った、スペースで食事をします。
さすがに庶民と一緒の食堂ではなく、少し高位の方や、この国の聖女様達も
一緒に食事します。
食事風景も、窓や廊下を通る方からも見えます。
庶民の方と同じ食事をすることも、親近感を持って頂くポイントになります。
そんな王女だから、臣民が慕ってくれるんだね。
簡単に野菜が入ったスープ、ポトフみたいな感じになるのかな。
それと、固めのパンになる。
私は、異世界マンガでもみた感じの食事だ! と思った。
先に、侍女マリアが食べます。お毒味役です。
今日は、リザリアもいるので、やはり先に食べてます。
少し間を空けるため待っていると、周りの人の話が聞こえてきた。
「今日は野菜が多いね!」
私はポトフ風でも、ごちそうになるんだね、と思った。
パンはモチロン、食パンのミミなしの柔らかさはないね。
バゲットくらいかなと思っていたが、表面はもっと固いね。
でも、さすがにパン1つ丸ごとではなく、スライスしてくれていた。
さあ、大丈夫の合図が出た。食べよう。
ポトフから頂く。薄塩な優しい味付けで、野菜の味がする。
これは、これで美味しく感じる。パンは、ポトフに浸して食べる。
これも、小麦粉が真っ白なものから作っていないので、
色合いも違って感じたが、まあこれもパンだと思った。
なんか、王宮の食事と違って新鮮さを感じた。
これも、異世界マンガにある食事かー、と体験できたことが嬉しかった。
本日の式典は、特に問題もなく、訪問者も多いため時間も押していたが、
無事に、公務は終了した。
ふー。肩の力を抜いた。さすがに緊張無しでは、無理だからね。
馬車に乗るときには、モチロン、標準的侍女の偽装アイテム※と
侍女の服装で、髪を結いあげた侍女エミリアになっているからね。
最悪の事態で王城から脱出できるように、侍女エミリアの証明も貰っている。
※標準的侍女の偽装アイテム:栗色の髪/茶色い目など、見た目を地味にする。
馬車は、侍女用の馬車に乗ってる。隣はリリアーヌ、向かいはマリアだ。
◇◇奇妙なうわさ
帰りの馬車で、リリアーヌに聞いてみた
「ねえ、リリアーヌ、先日会った影武者さん、アリシアはお元気ですかね」
リリアーヌの表情は一瞬ピックと引きつった
「エエット、突然どうしちゃったの?」
「今日の式典で色々なウワサを聞いちゃったから?」
「どんなウワサなの」
「ええっと、パラパラとした話になります」
「本当の王女様は治療のため、南地方へ向かった?」
「行先は、たぶん、王太子直轄領らしい?」
「でも、王太子妃のコゼットは王女様とは折り合いが良くないのになんで?」
「王太子妃のコゼットは、本当なら王都で殿下に寄り添っているハズなのに?」
「何で王太子直轄領から、ほとんど出てこない?」
「エエット、コゼットの話は枝葉かな?」
「それで南地方へ向かった王女様が、盗賊に襲われた?」
「盗賊は屈強な王国の騎士様に、捕縛された?」
「ああ、ここでコゼットのことになるみたい?」
「盗賊を調べたら西エルムズ国の盗賊ギルドだった」
「王太子妃の出身国とのウワサがあるみたい(王族の庶子?)」
「そして、王女様は南地方へ向かった?」
「王太子直轄領に到着したら、王女様はいなかった?」
「今は行方不明になっている?」
「今日の式典で、来られた王女様は、どう見てもいつもの王女様だった」
「あれは間違いなく、本物の王女様だ!」
「じゃあ、南地方へ向かった王女様は、オトリじゃあないのか?」
「でも、何でオトリ? 誰が計画しているの?」
「このウワサで一番気になるのは、これみたいね」
「盗賊ギルドの話が本当なら、妹である王女様が毒を盛られた、迂闊さ!」
「直轄領に向かった王女様が西エルムズ国の盗賊ギルドに襲われている!」
「王太子妃との関係もあるのに、なんで直轄領に向かわせた!」
「本物の王女様が、行方不明になったらどうするんだ! またしても迂闊さ!」
「それで、王女様と、一緒に守護するアリシアが心配になったの」
「でもね、リリアーヌ、私は殿下の評判も心配なのよ!」
「これって、王弟殿下も同じと思われているのかな?」
リリアーヌは、困惑した顔をのぞかせた
「ねえ、こんな情報をいつ聞込んだの、エミリア」
「ズート私と一緒にいたでしょう?」
なるほどね、ネズミさん達情報も少し入っているしね。
それに、今の私はエミリアだった。
「リリアーヌは、ナゾの高貴な方がきた時、私と離れていたでしょう」
「それと、訪問する方も途切れたので、次の方が来るまで時間が空いたの」
「それと、食事の時に修道院長と部屋の外で話していたでしょう」
「食事は、王女エリーヌの個室ではなかったしね」
「仕方がないですね。あなたには、王女様役に集中してもらうためにね」
ふ~と、大きく息を出した。大きな溜め息?
「余計な話は、抑えていたの」
「でも、ウワサだからね。必要なことは教えるけど、少しづつね」
「まず、王女様とアリシアは無事よ。脱出して別の場所にいるから」
「エート、次は王弟殿下と王太子殿下ね」
「二人の評判は前から良くなかったの、南地方優先の施策ばかりしたからね」
「西エルムズと交易して、かなりの収益を挙げているからね」
「でも、そのウワサ話の通り、更に信頼もガタ落ちになったようね」
「そうね、こんなところかな?」
「ねー、リリアーヌあと必要だと思うのが、ナゾの高貴な方が来たでしょ」
「私の頭に入ってるイメージから、王女様の婚約者が変装したように見えたよ」
「エミリアって、ウワサ話の地獄耳とか! あの人も分かっていたんだ!」
「別に、私はリリアーヌが相手してくれたから、いいかな? と思っているよ」
「だって、嫁ぐのは王女様本人だし、私が嫁ぐわけないでしょう」
「私は、キラキラしたお方のお相手をするのは、トッテモ苦手だからね」
「これからも、『あなたがお相手をする』で、よろしくお願いしますね」
あれ? リリアーヌは何か困った顔をしたよね! まさかはないよね?
私は、本当に男性と付き合ったことがないし。異世界マンガの政略結婚
とか現実では、無理! だと思う。
結婚させられないように、しないとね。
ああ、でも王女様の人生最大イベントなんだから、そんな心配いらないか?
私が仮に頼んでも、出してくれるハズないものね!(^^)!
◇◇私の毎月の報酬
帰りの馬車で、商業ギルドに寄って、エミリアの名で登録した。
そのあとで、預金カードの作成をしてもらった。
リリアーヌは、もう今月分を王女様からエミリアへ振替する手続きをしていた。
預金カードを確認すると、500万ゴルド(日本円で500万円相当)あった。
私の使い魔ネズミさん達の情報によると、家族3~4人で家を借りても、
金貨3枚で生活できるようだ。
市場の情報から考えて、金貨3枚(30万ゴルド)を日本円は30万円とした。
日本円で考えても、頂き過ぎでしょう、と思った。
でも、命懸けだから、危険手当が大きくないとね、と思った。
私は、素直に受取ることにした。
馬車の中で、来週の《異世界聖女召喚祝い》について話した。
リリアーヌは、
「開催の挨拶は、王太子殿下が自分の功績を輝かせるための演出ですから、
おそらく、とても目立つような挨拶をするでしょうね」。
「あとは、来賓の方々の対応は、本日と同じように行えばいいですよ」
「対応は今日のように私も横にいます」
「でも、来賓の方々を、ほとんど覚えていたようですね」
「パレードは、手を振ればいいですし、もう慣れていましたしね」
「今日は、来週の式典のリハーサルになって、心配していませんよ」
「何か不安なことはありますか?」
と一気に言われてしまった。
「先程のウワサ話から、王弟殿下と王太子殿下の最大イベントなのよね」
「わかりました、いつも通りの、しとやかで優しいエリーヌでいます」
「何かあればリリアーヌに頼ります。よろしくお願いします」と答えた。
何か、リリアーヌは厳しくも優しい姉でもあるし、頼もしく感じた。
それとも、私が甘えん坊なのかな?
婚約者の件は、王女様本人が受けるんでしょう、と感じた。
本日(2025/04/29 16:00頃)改訂をしました。