#3 ○王城の生活が始まる
◇◇王女様の離宮にて
リザリアが言っていた部屋? リリアーヌが用意した部屋に入った。
私は、とても立派な貴賓室のような部屋の中で、全然落ち着かなかった。
とても、混乱している。
王女様の影武者? どうやら命が狙われている?
どうしよう? 王城を追放になった方が、良かった?
リリアーヌとリザリアは、私に付き添っている。
ええい! 女は度胸だ! うん? 何かのアニメ、みたいな?
ああ、空に浮かぶ城が出て来るやつ、海賊のおばあちゃんの言葉かな?
そして思い切って、聞いてみた。
先ずは、リザリアへ聞いてみた。
「私って、お城を追放かもって流れがあったけど」
「追放されてたら、どうなると思う?」
「あなたは、この国の第一王女のエリアーヌ様とソックリなの」
「だから、その影武者役に、選ばれたのよ」
「私達は、王女様とは幼い頃からの、幼馴染なの」
「ね~、リリアーヌ」
「エミリアさん、この部屋に来たので、お話します」
「私は、王女様専属の侍女長です」
「昨日の晩さんで、王女様は毒を盛られたの」
「そのために、、この部屋で臥せっていることにしてあるの」
王弟殿下と王太子殿下は、自称現王妃(東エルムズ国出身)イザベラが、
犯人だと思っているそうだ。
それは、二年前にも、前の王妃が暗殺された。
その時も同じような、状況だったそうだ。
自称現王妃は、この国の乗っ取りを企んでいるみたい。
現在は、当時まだ側妃だったイザベラが、勝手に正妃を名乗り出した。
現国王は、三年前から臥せっている。
国王代行の王弟殿下が、国王から承認が出ていないため保留にしてる。
だから、自称現王妃になるそうだ。
問題は、毒味役が、倒れるまでに少し時間が経っていたらしい。
毒を入れた経路を特定するのに、時間がかかってしまうから。
そのために、犯人捜しも時間が、かかってしまう。
王女エリーヌの毒は問題ないそうで、安全確保と完全回復のため
別の場所で保護されているそうだ。
そして、リザリアから
「お城を追放された場合なんだけど、お城の外にポツンといた場合よね」
「あなたの、さっきの変装程度なら、変装した王女様と思われるのよ」
「すぐに自称現王妃の配下に誘拐されて、拷問とか、暗殺よ」
「それに、他の貴族に売られる場合もあるの、わかる?」
「それは性奴隷にされたり、奴隷に売られても同じ、後は娼館行で娼婦ね」
「エミリアは望むなら、そちらを選んでも、いいわよ~」
「私は、いいえ! それは望みません」、ふ~、ゾットしちゃうな!
リリアーヌから
「ここにいれば、私達もいるし、マリアは小柄だけど戦闘メイドよ」
「戦い方によっては、騎士にも負けないの」
「そしてここの離宮だけど、ここは王女様のものになっているの」
「この離宮の衛兵や騎士達は、あなたを守るためのものなのよ」
「しばらくは、この離宮で、食事をすれば安全でしょう」
◇◇影武者レッスン(詰込み教育)の説明を受ける
私は、リリアーヌから説明を受けている。
具体的には、この部屋にしばらく居て王女エリーヌの所作や、
マナーにダンス、この国の風習、そして魔法を学ぶことになった。
また、リリアーヌやリザリアは、王女様とは幼馴染だから
王女様のクセや所作も、よく知っているそうだ。
私は、
「そんな大役が自分にできるかな?」と呟いてしまった。
リリアーヌが、
「必要な指示や人前に出る時期も、私とリザリアが判断するよ」
「宰相が調整してくれるから、大丈夫よ」
リリアーヌは、
「固くならずに、私に任せてついてきて欲しい」と言ってくれた。
「それと、リザリアは優秀な魔導士なのよ」
「レッスンの成果に役立つような魔法にも期待してね」
「魔法も、リザリアが教えてくれるよ」
選択の余地はなさそうなので、取り敢えず提案を受けることにした
(王位継承権3位の王女の身代わり!!)。
◇◇一人になれたので状況を整理する
この提案って私には次善だけど、受入れるしかなかったな、と思った。
「ここなら、命を守ってくれる人達がいるし、戦闘メイドもいるしね」
「少しだけ、こっちの方がいいのかな? 今は、自力で生活できないし」
でも、さっき見せて貰った絵姿は自分とは違う、と思った。
リリアーヌは、
「絵姿は、アレンジされるからね。私はソックリに見えるよ」と言ってたね。
しかし、本当の気持は、
「日本に帰るのが一番だけどね! 日本人向けの味付けが好みだしね」
「和食そのものが、好き」
「異世界マンガではチートで王女様が、自分で料理する話はあるよね」
「現実に、王女様に料理させてくれるかな? 少しづつ調べよう」
「何となく情報を集めれば、日本にも何とか帰れそうな気もしてきた」
でも現実は、
「今は生きる為にここにいるしかないかな?」
「ここに居ても、綱渡りだ。命懸けで生き延びる感じかな?」と心細くなった。
「身代わりが務まらなきゃ、王城追放で、すぐに事件に巻込まれるね」
「自分を守れる力が必要。あと自力で生活できる力がないと、この状態から
逃げることもできないよ」
「じゃあ、色々力をつけたり、この国のお金の事を知り、稼がないとね」
「詰込み教育もあるけど、この状態から逃げる為に、色々と準備しなくちゃ
いけないわ」
そう、聖女様になるあの二人の高校生は、異世界のファンタジーな風景を
楽しむみたいだし。
異世界に来れたから、私も負けずに、楽しんでやると思いなおした。
◇◇召喚当日から、侍女達の磨き上げ
当日から、侍女による着替え、入浴時は洗顔、洗髪、体の隅々までの
磨き上げに慣れることから始まった。
侍女達は、「王女様は肌はモチモチのスベスベだったね。これでは、
一皮剥ける位磨かないとね」と思いっきり磨き洗いされた。
そして、その後はマッサージ。ビシビシとつらいな~。
心の中では、少しづつでいいんじゃない! と思っていた。
私は、そんなに手入れしていないかなと思ったが、会社の先輩達はエステに
行ったりして磨いていたなと思った。
私はメイク後の鏡に映る自分の姿を見て思わず、え、誰?と思ってしまった。
メイクで変わるのは知っていたけど、こんなに変わるのかと、驚いていた。
王女エリーヌのドレスを着た、何故か丈直しがほとんどいらない?
侍女達が部屋に食事を運込んできて、手際よく並べている。
マナーレッスンを兼ねての食事が始まる。
祝賀会はお昼頃だったから、晩餐になるのね。
もう今晩から、リリアーヌからお小言が始まっている。
明日からは、コルセットの締め付けも始まるなと思った。
◇◇召喚翌日の朝
朝は侍女に起こされて始まった。
私は昨日の入浴で、学びがあった。
よく異世界マンガの転生令嬢物などで、侍女のお世話に戸惑う場面も
体験したので、よくわかった。こんな感じなんだと。
気持を構えたりしないで、侍女に身を任せればいいと分かったのだ。
ここの侍女達は王女様の専属、プロ集団だからね。
最適な温度で洗顔して、顔を拭いてもらった。優しく触れてくれる。
そして鏡で素顔を見た。
あれ? 何か懐かしい顔だ。昨日は周りに振り回されて、気づいていなかった。
この顔! 私が高校生の頃の顔だよ。17~18才位みたい。
いつから、この顔になっていたの?
24才だから歳なりの顔つきになっていたはずだけど!
それが、また少女の顔になっている?
侍女の磨き上げもあるが、ツヤツヤ、プルンとしている。
聖女には選ばれなかったけど、何か得した気持。
朝食は、リザリアと向かい合って座わった。
リザリアは、ゲスト扱いになっているそうだ。
リリアーヌから、お小言を受けながら、頂いた。母の実家で食べたような味。
◇◇レッスンが始まる
マナーやダンス、この国の習慣、歴史などレッスンを毎日しっかりと
詰め込まれている。
所作は王女の専属侍女を10年やっているリリアーヌから叩きこまれている。
その後は、侍女達と入浴やマッサージ、日々別人のようになっていくメイクなど
毎日予定がギッシリだ。
私は、王女エリーヌの絵姿のみしか知らない、でも侍女達は
日々楽しそうに私のお手入れしてくれる。
会社の先輩達は、ネイルサロンにも通っていたな~。
私は、通っていないから同じなのか知らないけど、
ネイルケアまでしてもらっている。
食事の時などでも、日々侍女達との距離が縮まっていくのを感じた。
異世界物のマンガにある、姿勢や歩き方、マナーなどキツイと思って
いたけどあまり、クドクドまでは言われなかった。良かった。
私って、素質があるのかな? と思った。
でも、シッカリ疲れているから、夜は寝つきがとてもいい。
ベッドも異世界マンガにあるような、天蓋付きで、布団の肌触りも
全然違う。
私の簡易パイプベッドも懐かしいけど、こちらの方が良く眠れる。
一応、王女様と同等の扱いなんだよね。
こんな状況なのに、異世界に来たから、思いっきり楽しんでいる。
召喚から4日目、レッスンの最後にリリアーヌから、繰返し優雅に手を振る
練習をさせられた。
その後、リリアーヌの取って置きの景色を見に、この離宮の最上階、5階の
ベランダへ案内された。
5階のベランダは、手摺から1歩手前で止まってと指示された。
弩銃※で狙われるからだと言われた。
そうだ! 命を狙われているんだった。ゾッとした。
※現代では、強力なボウガンのような弓
手摺から1歩手前まで行くと、王城の壁や見張りの塔の先に城下の街並みが
見えた。とても現実とは思えないほどのファンタジーな街並みだった。
これが見れたのは本当に良かった。異世界の街並みだ!
私は、リリアーヌからレッスンを受けた通りに、手を合わせて心で呟いた。
『この国の臣民が、健やかに、豊かな心で生活ができますように』
としばらく思いを込めて祈った。
静かに目を開けてみると、見張りの衛兵達が手を振っていた。
リリアーヌは、
「さっき教えた通りに手を振ってあげて」と言われた。
私は、優雅に手を振った。すると、見張りの衛兵達が嬉しそうに応えていると
感じた。
更に、城内からも手を振る人達がいた。その人達をゆっくり見ながら
手を振っていると嬉しそうに応えていると感じた。
リリアーヌは、
「王女様は、ここから城内の人達に、時々手を振っていたのよ」と言った。
一通り城内を見渡しながら手を振った。
そのあと、リリアーヌから、
「1歩後ろに下がって、手を振るのを止めて」と言われた。
言われた通りにした。
リリアーヌから「何か感じた?」と聞かれた。
私は、「皆さんが、私に嬉しそうに手を振り、それに私が応えると、
更に、嬉しそうに、手を振ってくれているのを感じました」と答えた。
その答えにリリアーヌが、
「上出来ですよ。パレードや式典の時は、それを感じて下さい」
と微笑みながら言った。
臣民は、必ずあなたに、嬉しそうに応えてくれますよ!(^^)!
王女様を慕う臣下達が多くて、先日の事件の後に、今日は元気な姿を
見せたので、皆は、嬉しくて一斉に手を振ってくれたそうだ。
私は思わず、「え、私でいいのですか?」と言ってしまった。
するとリリアーヌは、
「今のあなたは、どなたですか?」と問いかけてきた。
私はハッとして、「私は、王女エリーヌでした。」と答えた。
リリアーヌは、
「しっかりと役に浸って下さい。頼みますよ。」と言われてしまった。