#28 ○現王妃イザベラと王太子妃コゼットの悪だくみ(4)
①王妃イザベラの元に潜入したマリアは...
②王妃イザベラの和平申し立て
をおくります。
◇◇王妃イザベラの元に潜入したマリアは...
〔《緑の聖女》幽閉の塔の生活〕
私(《緑の聖女》エリカこと、戦闘メイドのマリア)は、先程案内された部屋にいる。年配の侍女の配下はリンゼシアと名乗った。
いま、侍女は待機の部屋に居る。まー私の監視役だろーね。余計なことを話さないように、あまり話しかけるな、と言われてるね。
王女エリーヌ(エミリア)の幽閉の塔と比べると、一時的用なのか質は落ちるかなー? まー王女エリーヌ幽閉用の方が待遇は格段に高い。あー、そうかー、手配したのがギル(王弟殿下ご令息:ギルバート)だからねー。彼は王女様大好きだったんだよねー。
先程、晩餐をとったけど、離宮に居た頃に、毒味役で食べたグレードの食事だったねー。聖女様は、一応王族並みの扱いになっているようだねー。
明日、聖女様の力を見せて頂きたい、と言っていたから、果たして誰か目立った人が来るといいなー。
さっきは、ネズミさんが出てきて、指でニコニコ顔にしてたから、外部への連絡は終わったんだろーな。
最近は、エミリアと侍女の待機部屋のベッドで、いつも一緒に寝てたからなー。何かこのベッドは、フカフカ過ぎて寝付けるかなー。
リザリア師匠は、あのフカフカのベッドの上で、嬉しい時に良く、コロコロと転がっていたけど、よくあんなことできるなー。体が沈み過ぎるんだよねー。
そーいえば、一緒に寝てて思うけど。エミリアは少し体温が高いのか、ポカポカしてるんだよねー。いつも抱き枕のようにして背中からキュウしちゃってたなー。本当に嫁さんにならなきゃー、私がもらっちゃおうっかなー。
〔《緑の聖女》力試し〕
翌朝、朝食をとった後に、年配の侍女がきた。手には、しおれた花の鉢植えを持っていた。
「こちらで、聖女様のお力を、お見せください」としおれた花の鉢植えをテーブルにおいた」
さー私の力の見せ所だー!! 私はコップに水を入れて、静かに祈りを捧げてから、ゆっくりとコップの水をしおれた花の鉢植えにかけてから、草魔法を発動させた。
すると、鉢植えのしおれた花が、徐々にゆっくりと復活してきた。
侍女二人が「聖女様ー、さすがですー。まことに、《緑の聖女》様ですねー」と拍手をして、褒め称えていた。
年配の侍女は、「私、申し遅れましたが、イザベラ様の副侍女長をしている、エルザリアと申します」と嬉しそうに名乗った。
エルザリアは、ウキウキとしたようすで、戻って行った。イザベラへ報告するんだろう。まー本人の確認をするよねー。
リンゼシアは「聖女様、おつかれさまでございます。いまお茶を入れさせて頂きます」とお茶を入れに行った。
すると、ネズミさんが出て来て、手で『いいねー』をしている。私は首をコクッとして、アイコンタクトでよろしく、と伝えた。
私は、さすがー、リザリア師匠のアイテムだー、草魔法も発動すると感じた。
〔イザベラの秘密通信〕
イザベラは、副侍女長のエルザリアから報告を受けている。そして先ほど持たせた鉢植えを確認していた。しおれた花が、見事に復活していた。
そして、イザベラは手紙を書き出した。普通の手紙サイズではなく、小さなメモ紙サイズだ。そして、ハト通信担当を呼び出した。
イザベラは、ハト通信担当に小さなメモ紙を渡す。ハト通信担当は、小さなメモ紙を小さく丸めると、金属で出来た筒に入れて、イザベラから渡されたアイテムで、封書の魔法をかけた。
そして、窓を開けて、指笛を鳴らすと、ハトが飛んできた。ハト通信担当は、ハトの足に金属の筒を付けて、「頼むよ」と言って空に舞い上がらせ飛び立たせていた。
この世界でも古くから行われていた、ハトを使った通信になる。筒に入てたものは、恐らく密書であろう。
そうして「あの子は、アリシアを大切に扱っているはずだけど、一応手紙でも確認をしているからね」と補佐官に話しかけた。
すると、イザベラの補佐官が「はい、ありがとうございます。もしも公開したり、更に儀式的に行うのであれば、無傷でなければ困りますから。あの女のことだから、扱い方が不安でしかないです」と答えていた。
◇◇◇◇◇◇
ここは、王弟殿下直轄領の領都にある王太子殿下の居城である。ここの主はエルモ川で北地方の軍と対峙しているためいまは不在である。
ここにハトの通信が届いた。厳重な封書の魔法を解呪して、封を開ける人物がいる。
いま密書を見ているのは、王太子妃殿下である、コゼットだった。密書は、
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王太子妃へ.
用件のみ伝える.
依頼のもの用意できた.
同意も取れた.
こちら依頼のもの、安全を確認する.
無傷であるか.
正妃.
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ほほほーーーほ、と突然コゼットが笑い出した。
傍らに控える補佐官が「コゼット様、いかがでしょうか?」
コゼットは「ええ、やっとこちらの要望のものが用意できたそうよー。しかも、同意まで取れたそうよー。同意はもっと時間がかかると思ったけどね。意外と早かったわね。下手に手を出したりしたら、天罰が落ちるからね」
「はーっ! それは良きことですなー」
「それで、向こう要望のものは、無傷でしょうね? と聞いているけど、大丈夫よね。まーお互いイザの時は公開して行うから、無傷でないと成立しないわね」
「はい、王族の幽閉の塔へ入れてありますし、一応王女様として扱いうように、申し付けております」
「それでは、いよいよ私が主となって、南地方と北地方を分ける、和平交渉を始めましょう」
「はーっ! それでは、王弟殿下と王太子殿下が、繰り返しウワサ話※を確認している件ですが、もう断ってもよろしいでしょうか?」
※ウワサ話:王弟殿下直轄領の領都、シュトガドルの幽閉の塔に幽閉中。何故、コゼットが王女エリーヌを捕縛している?
「いえ、それはまだね。向こうから和平交渉を、こちらに向かって、呼びかけることになっているから」
「はーっ! それでは、いつも通りに、ハグラカシておきましょう」
「では、あちらに無傷だと、送っておいてね」
「はーっ! かしこまりました」
◇◇王妃イザベラの和平申し立て
〔宰相を呼び出し〕
王妃イザベラは、宰相が来るのを待っている。まだ、時間にはかなり早い。イライラしているのが周りに伝わっている。
補佐官が「王妃様、時間にはまだ早いです。宰相殿のことですから、早めに到着はすると思いますが...」と諫めている。
「ふん、分かっているわよ。いまは、宰相を押し切る勢いを溜めているからね。今日は、勢いが重要なのよ!!」
すると「只今、宰相殿がお着きです」と知らせが入った。
しばらくすると、宰相がドタドタと急かされながら、足音が近付いてきた。
宰相が座ったらすぐにイザベラが「宰相殿、南と北地方の争いをいつまで静観するつもりなのかしら?」と詰問された。
宰相は、心の声は、軍を招集して派遣したのはお前だろ!! と思った。が、「いえ、そろそろ王弟殿下と王太子殿下に呼びかけようと思っていました」と答えてた。
その答えを待っていたように「では、すぐに私から呼びかけましょう」と言い出した。
しまった。イザベラの術中にやられたという顔をして見せた。
「あなた、何か不満がありそうね」と宰相に喰ってかかってきた。
「いえ、それをするのであれば、重臣を集めて協議をしてからだと思いまして」とタジタジを見せた。
「あなた達が、そんなだから、時間がかかっているんでしょう。だから私から南地方の主に呼びかけましょう」と言い飛ばした。
ふえ! 確認だけはしないと「ええっと、王妃様は、王弟殿下と王太子殿下に呼びかけをされるのですね」と確認した。
「いえ、私は南地方の主に呼び掛けて、和平交渉をしてあげますから」と、また言い飛ばした。
うーん、「王妃様、ご確認ですが、南地方の主と王弟殿下と王太子殿下は同じですよね」と確認した。
イザベラは、ここぞとばかりに「私が南地方へ行って、決定権があるものを確認して、交渉を進めます」と、また言い飛ばした。
ふえ! 王弟殿下と王太子殿下以外に、決定権があるものは、いないじゃあないのかー? と思っていた。
そして「あなたは、このことを重臣達に話しておきなさいな!! いつまでも時間をかけていると民に迷惑をかけるからね!!」と、また言い飛ばした。
えーーー!! 勝手に和平交渉って、内容はどーするの!! と思っていると。
「いいから、和平の内容は私に任せてもらうわ。相手のでかたをみて、最小限に留めるから!! 早く伝えに行きなさい!!」と部屋から追い出されていた。
宰相は、あいつの王位継承権って何位だったけー? と思っていた。
〔イザベラの勝手に...〕
今は、宰相が重臣達を、緊急招集していた。
そして、自称正妃イザベラの勝手な会見があった事を説明していた。
宰相が「えー、...という訳でして、南地方の主に和平交渉をすると...!! ...で、その主は、王弟殿下と王太子殿下と決まっていなくて...!! 南地方...決定権があるものを確認...交渉を進め...」という次第であります。
そこで、財務大臣が「いいですか!! 宰相!! 王位継承権の下位のものが勝手に交渉をして...」
「何かを勝手に決めても...国としての裏付けがありません!! 私は、決して認めません!!」
それを受けて宰相も「その通りです。いま、我々はイザベラが現状の立場を維持した状態...単なる側妃であり...東エルムズ国との和平交渉の...単なる人質なのであります」
そこで、外務大臣が「しかも、交渉内容は一任してください...!! どんな譲歩になるか...!! ですから、我々が全権大使としていないことを...ここで決めて...それを公表すべきです!!」
財務大臣から「王位継承権第一位と二位の、王弟殿下と王太子殿下が交渉相手でない...?国としての意志にならない...!!」
外務大臣も「この国、南と北の地方を対峙させたのは、ただの現側妃イザベラ...この事態を作り利用して...!! 何を決めようが、...全て無効です!!」
そして宰相が「王弟殿下と王太子殿下を無効とされても...これを否定できるのは、王位継承権第三位の王女エリーヌであります。今は...王弟殿下直轄領、領都シュトガドルの幽閉の塔におられる。...最後は王女様を...国の代表で決議すべきです!!」
そして宰相の補佐官が「しかし、ウワサですが、王太子妃コゼットが王女エリーヌを捕縛しているとの話もあります」
そこで、宰相が「いや、それなら、領都シュトガドルで王弟殿下のご令息:ギルバート殿とのウワサも聞いているだろう」
「はあ、その話もありますが...。下世話に、お二人がアツアツ...」
「こら、それだけではないゾ!! 領都シュトガドルで巨大なオーガと魔獣討伐戦の話を聞いていないのか!! 西方諸国一番の賢者を倒した英雄リザリア参加だけではないゾ!!」
「ご当地の冒険者ギルドのギルド長から秘匿情報で、もうひとりの英雄、王女エリーヌ様も参加していたんだーーー!!」
更に、冒険者ギルドのギルド長は「ご安心ください。ギルバート殿と王女エリーヌのアツアツの件は、ギルバート殿が王女様を大切にお守りしているからなのです」と。
「ですが、ご存知の通り、今の北地方の繁栄は、シュトリアル国のユリウス様あっての存在になっております。王女エリーヌ様は、そんなことは、わきまえておられます!!」とワシは聞いておるぞ!!
そこで補佐官が「私は今回の件で心配ごとが一つあります。王太子妃コゼットが捕縛している、王女エリーヌが本物であった場合です。宰相殿は、その場合はどうなされますか?」
「フハーーーハ、なんだそんなことを心配しているのか!! もう一度整理する」
「『西方諸国一番の賢者』は、都市一つを簡単に炭にするツワモノだーーー!! その賢者を倒した英雄が我が国に二人いる!!」
「その一人、王女エリーヌが、王太子殿下直轄領の領都が破壊されたーーー!! とのウワサすらない!! たかが王太子妃コゼットに簡単に捕縛されるハズもなかろう!! ウワサのみに翻弄されるなーーー!!」
「いま領都シュトガドルにおられる、王女エリーヌは、内々に知られている、『ガラーム将軍が忠誠を誓い』、『西方諸国一番の賢者を倒した英雄リザリア』と共に在る。ご本人も『英雄王女エリーヌ』である。そんな王女様に最後は、託すしかないじゃろーーー!!」
そこで、この会議では、最後には領都シュトガドルにおられる王女エリーヌ様へ託すことに決まったーーー!!
さー、我らが地球世界の娘、エミリアちゃんは本人の意志とは関係なく、ドンドンと役割が、勝手に積み重ねられていくので、あったーーー!!
次回、
・王妃イザベラの和平交渉...その波紋は...
どう展開されるのか...




