#2 ○鑑定、祝賀会、ハズレ聖女
さあ~、やっと鑑定が始まった。儀式になると思ったが、
時間が押したため、同じ部屋、同じメンバーで行うことになった。
祝賀会で、結果の公表は行われる。
鑑定の実施は、神官と魔導士リザリアで行われた。
鑑定は、エリカから始まった。
「職業は【聖女】、魔法適性は【緑魔法】、称号は【召喚されし者】」
「おお、神に感謝します」の声が上がった。
「農産物を豊穣にする魔法が使えるといいな~」と声が上がった。
次はユミナの、鑑定が始まった。
「職業は【聖女】、魔法適性は【光魔法】、称号は【召喚されし者】」
「おお、神に感謝します」の声が上がった。
「浄化や回復の魔法が使えるといいな~」と声が上がった。
最後は私エミリアの、鑑定が始まった。
「職業は【町娘】、魔法適正は【生活魔法】、称号は【召喚に巻込まれし者】」
「ええ~、そんな~」と落胆した声が、一斉に上がった。
それって、自分も同じだよ! 異世界マンガ、定番の鑑定結果ね!
散々聖女達のリーダ? みたいにして、この結果だよ!
異世界マンガで追放になるのって、こんなインパクトなんだ、と思った。
いや、そんな余裕ないでしょ!
どうやって生活できるか知らないし、バックも消えてるし、体一つだけだよ!
と自分に言っていた。どうしよう!
追放だよね! そんなストーリやめてよねと祈った。
ところが、そこで救世主が現われる、と歓迎したい
発言がでた~! 良かった~!
神殿長より
「聖女様を二人も授けて頂きました。普通なら一人です。」
「これは、神に感謝しましょう」
「召喚頂いた方を、粗末に扱うと、次回は一人も
授けて頂けないこともありましょうぞ!」
よく言ってくれた! と私は思わず、心の内で呟いた。
その時、リザリアが、ニヤと一瞬また笑った。
嫌な予感しか、しなかった。
リザリアは、宰相に耳元で何か囁いていた。
宰相は、思いもかけない事を言われた様な表情をしていた。
少し私を眺めていた。
そして、ヒソヒソと話込んでいた。
「そうか、それなら、お前とリリアーヌに任せよう」と。
あれ? 私は追放でなければ、何だろう?
リザリアは、お茶を出した侍女へ指示を出した。
宰相は「神殿長、王城追放などしません」と確約のような発言をした。
私は、リザリアには、不安な事ばかりしか、思い付かなかった。
何を企んでいるんだろうか?
そして、聖女様達を伴い、神殿長、神官、宰相が部屋を出て行った。
祝賀会へ、向かったのだ。
残ったのは、宰相補佐のシルバーリオン、魔導師副師団長のブロードリオン、
リザリアだった。
◇◇祝賀会にて
祝賀会は、中央に玉座があり、王太子殿下のイスが並んでいた。
王弟殿下の開催の挨拶、
「ここに集まった諸君、《異世界聖女召喚の儀式》ご苦労であった」
「無事、聖女様が、おふたり召喚できたこと、大儀であった」
「我も、成功を心から、祝おう」
「では、神殿長から、聖女様を紹介する」
神殿長が聖女様達を伴い、ステージ中央へ立った。
「それではみなさん、聖女様をご紹介させて頂きます」
「私のすぐ隣の聖女様からご紹介です」
「名は、エリカ、鑑定結果について」
「職業は【聖女】、魔法適正性 辞書引きなさい は【緑魔法】、称号は【召喚されし者】」
まわりから声が上がった、
「おお、神に感謝します...」とざわめいた。
「農産物を豊穣にする魔法が使えるといいですな~」
「でも、それは訓練次第なんでしょう?」
エリカは、聖女様の白シルク地に神殿の紋章が刺繍された、マントに
包まり、光が反射した部分がキラキラと輝いている、頭にベールを付けていた。
そして、軽く一礼した。
すると、周囲から拍手と、どよめきが起こった。
静かになった頃合いで、神殿長が次の聖女様を紹介する。
「聖女セリカ様の隣の、聖女様のご紹介です」
「名は、ユミナ、鑑定結果について」
「職業は【聖女】、魔法適正は【光魔法】、称号は【召喚されし者】」
まわりから声が上がった、
「おお、神に感謝します...」と、またもざわめいた。
「浄化や回復の魔法が使えるといいな~」
「でも、それは訓練次第なんでしょう?」
ユミナは、聖女様の白シルク地に神殿の紋章が刺繍された、ローブに
包まり同じ様に、光が反射した部分がキラキラと輝いている、頭もベールだった。
そして、軽く一礼した。
すると、周囲から拍手と、どよめきが起こった。
静かになった頃合いで、神殿長が、聖女エリカと聖女ユミナの
称号を提案する。
「私より、こちらの聖女様達の称号を提案します」
「聖女エリカ様は、緑魔法に期待しています」
「≪緑の聖女≫ としたいと思いますが、いかがでしょうか」
周囲から拍手と、どよめきが起こった。
そして次は、
「聖女ユミナ様は、光魔法に期待しています」
「≪光の聖女≫ としたいと思いますが、いかがでしょうか」
やはり周囲から拍手と、どよめきが起こった。
王弟殿下と王太子殿下は、このようすをみて、互いに首をコクとした。
王弟殿下より、
「うむ、この歓迎の声に応えて、≪緑の聖女≫と≪光の聖女≫に定めよう」
と一声を発した。
更に周囲から拍手と、どよめきが起こった。
祝賀会に参加した人の中から、もう一人いましたよね? とヒソヒソと
声が上がっていた。
そこで神殿長が
「私共が聖女様と鑑定したお二人の聖女様は、ご紹介は終了します」
「授かったことを、神に感謝します」
そこで、宰相が王弟殿下と王太子殿下を見ると、互いに首をコクとした。
宰相がステージ中央へ立った。
「えー、残念ですがもう一人の方は鑑定で聖女様でないことが、わかりました」
「しかし、この方も授かった方ですから、粗末な扱いは出来ません」
「王女様の離宮で、貴族でないことから、ハウスキーパとします」
「王弟殿下と王太子殿下のご慈悲を、受け賜りました」
軽く拍手と、「さすが、慈悲深いですな...」などがパラパラと聞かれた。
王弟殿下より
「サー! みなのもの、祝賀会を始めようではないか」
の一声で、宴会が始まった。
王女様専属侍女のマリアはこの様子をみてから、宴会の食事を集めていた。
そして、応接室へ戻って行った。
◇◇聖女じゃなかった人は?
シルバーリオンとブロードリオンは、私の持ってきた雑誌を見ていて
「この国の建物と似ているね」
「お城なんか、ほぼ同じようなの、あるね」
「でも、この女性たちの服装って、露出がすごいよねー」
「これなら娼婦達にも、負けないね !(^^)!」
え、日本の雑誌だよ! そんなもの載っているはずないけど、と見ると
ああ! サイクリング車やマウンテンバイクに跨る
ランニングとショートパンツ姿の女性か?
意地悪な心で、じゃあビキニならドウナッチャウ? と思った。
そう! 異世界マンガでは、肌の露出が多いと、ハシタナイ姿に
思われるんだよね。
素足ですら、見せてはいけないと、何かの異世界マンガでみたような?
気付くと、リザリアが寄って来てた。そして、何かを私の髪に絡ませた。
チョット、何しに来たのと見ると、片方の手はティーポットを持っていて、
お茶を入れにきたようだった。
何か、服の飾りボタン? が絡んだようだった。
あ、やはり、仕掛けてきたのか!
私は、(ワザットか?)困り顔のリザリアへ、
「あの、これかつら(ウィッグ)なの。直ぐに取るから」
すると、「やはりね! 少し髪が浮いているような感じがしてたんだ」
私は、ウィッグを取りながら「ワザット、絡めたのかしらね?」
「いいえ、お茶を入れて、少し話したかったの」
「あなた、私の大切な幼馴染に顔が似てるなっと
私は思っていたの」
私は、ウィッグを取ったあと、地毛を包んだ、頭のネットを取り、
髪を降ろした。地毛の長い金髪が広がった。
するとリザリアが「やはり、似てる! 残念なのは瞳が違うのね!」
「でも瞳も何か、違和感を感じているけどね?」
私は、マズイな! スパイと間違われたら嫌だな、と思い先制で言った。
「そうね、でも本当に偽装をするなら、もっと上手くやるのが普通よね」と。
「それで、瞳はどうなるの?」
なんだ、良かったー! スパイは気にしていないか!
私は、カラコンも取った。
リザリアは、私の顔をマジマジと見ていた。
そして、「シルバーとブロード、こっち見て」と声をかけた。
二人は、雑誌から目を離して、私を見て一瞬、固まったが、
何とか話し出した。
「王女様、お戯れをなさっていたのですか?」
「変装なんて、おやめください」
「お人が、悪うございます」
「試さなくても、あなたに忠誠を誓っていることは、
決して忘れたりはしません」と。
しかし、私のポカンとした表情に気付いた。
あれ! 彼らは何か違和感を感じた表情になる。
「え、リザリア、これはどうゆうことだよ!」
「ゴメン、この方を王女様の影武者にする試験を、してみたの」と。
「あれ? だって影武者ならいるだろう!」
「ああ、そうか? あの影武者じゃ、俺たちは見抜けるな!」
「だって、幼馴染だからな!」
「え、でもウソだろ、違いがわからないゾ」
リザリアは満面の笑みを浮かべて
「あなた達は、マダマダ未熟者だからね」
私の、何か言いたそうな、表情を見て
「エミリア、大丈夫よ、先程の聖女様より、いい待遇を考えているの」
「特別貴賓室みたいな部屋で、専属侍女が、かしづいてくれる、
優雅な生活に、キットなるわ」
私は、薄々ある予感がしていた。
そこへ、侍女姿で気品がある人と小柄な侍女が、入ってきた。
シルバーとブロードが
「やあ、リリアーヌとマリア」と声をかけた。
ところが、そのリリアーヌとマリアは、全く二人を無視していた。
「シルバーとブロード、部屋の外へ出て、ドアを見張って」と指示した。
「チョット、これから何を始めるんだ?」
「いいから、指示通りしてね」と強い口調で言った。
二人は、何か渋々と部屋の外へ出て行った。
私は、何を始めるつもりなのかと、警戒していた。
「リザリア、この方ね?」
「そう、エミリア嬢、だね」
私の正面まで来た。まっすぐ私を見ると、
リリアーヌとマリアは、ハットした表情をして一礼した。
「すみません、お立ち頂き、上着を脱いでください」
私は、エ! やはり何が始まるの? と顔に表情を出してしまった。
リリアーヌは、
「失礼しました、取り急ぎのため、気が急いてしまいました」
「何か、ご無理なことは致しません」
と、また一礼した。
リザリアも何もしたりしないよ、大丈夫だと言ってた。
私の服装は、いつも通り。インナーと●●クマンショップの
パンツスーツだった。ファッションのおしゃれもしていない。
私は立ち上がり、ジャケットを脱いだ。
すると、
「胸を張って真っ直ぐ、お立ちください」など、少し姿勢を直されたが
キツイ目つきで、色々な角度から見ていた。
そして、リザリアへ
「本当に、今日の聖女召喚で、召喚された異世界の方なの?」
「うん、最初からズートと見てきたよ」
そうして、二人でヒソヒソと話合っていた。
リリアーヌは、
「お部屋を準備させます」
「祝賀会の食事を、ここへ運ばせる手配もします」
リザリアは
「私の分もね、よろしく」
「うん、分かっている」
「でも、毒味はどうするの?」
「マリアがいるでしょう、それに、マリアに食事を運ばせるから」
「あなたも、いつも通り、サッサと食べて、確認をお願いね」
「チョット、それって私にも毒味役をしろって!」
「あなたも、毒耐性はあるでしょう?」
「そうだけど、強烈なのは、無理よ!」
「うん、分かったわ」
「マリアには、直接自分で持って来るよう指示するから」
マリアは
「はい、お任せ下さい。必ず、確認の上で持ってきます」
私にとっては、とっても異常な会話に聞こえてた。
え、毒ありきが、前提! また、別な異常なものに、巻き込まれた!
リザリアへ聞いてみた
「毒殺される役どころが私の仕事なの?」
「う~うん、あなたが毒殺されたら、こちらの負けだから」
「でも影武者なんでしょ、だから最後に本物が出てくればいいじゃない?」
「それが...。」
リザリアは言いかけた時に、リリアーヌに止められた。
「エミリアさん、あとで、部屋で話すから」
「ここじゃ、どこで盗聴されてるかわからないから」
私は、物騒な国に召喚されたことが、災難の始まりか! と思った。
どうせなら、ワクワクした異世界を味わいたいな! と思った。
二人の高校生は、いいよな~。聖女様ー。