#14 ○王弟殿下直轄領へ旅の始まり(幽閉→退避です)
宰相とリリアーヌのガンバリで、幽閉→退避にかえることができた。
リリアーヌの抱えた、超難題も身代わり王女様のお陰で解決していた。
これから、都落ちの旅が始まる。寂れたノンビリとした旅になるかなー
◇◇王弟直轄領へ向けて出発
翌日の朝、王弟直轄領へ移動が始まった。
先頭の馬車は、ギルバートとその配下達で、次が私とリリアーヌ、マリア、リザリアになり、そして、私の専属侍女達の馬車が続いた。
護衛騎士は、リリアーヌが王女様と懇意にしている騎士団の騎士達と聞いた。
また、私の専属侍女達は、王弟直轄領近くの領地出身なので、一度王弟直轄領まで、一緒に行くことになっていた。
私は、馬車の中から騎士たちを眺めてみた。頭に刷り込まれている記憶から? 騎士たちは、知っている人達だった。良かった~、安心できるな(^^)/
私は、都落ちなのでヒッソリとした、寂れているが静かな旅が始まると、想像している。一緒に召喚された聖女様達は、この国が落ち着けば馬車でこの国の各地を巡る旅に出ることになるからだ。聖女様達はどこの村・町・都市に寄っても、大歓迎されてとても賑やかな旅になるだろうと思った。
私は静かに異世界、ファンタジーな風景が見られると期待している。風景といえば、北海道に旅をして湿原で見た風景を思い出した。高台から見渡す限りの草原と果てしなく続く風景、そしてその中に電信柱や送電線が全く入っていないこと。異世界召喚され不便さはあるけれど、異世界だからこそ現代文明を象徴するものが全くない風景に期待して、胸がワクワクしてきた。そして、ノンビリとして目的地まで色々な特産品を味わえたら楽しめるな~と思っていた。
王都の北門(北街道に繋がる沿道が近い)周辺に、大勢の人が集まっている。
先頭の騎士が来て、王都民が王女様のお見送りに集まっています、と報告を受けた。
リリアーヌが、「これでは、幽閉(退避)になる都落ちじゃなくて、遠征みたいなお見送りですね」と言ってみたものの、変ねー!宰相達と表向きは幽閉としたはずなのに、何かウワサを流した可能性がありそうだと思った。
集まった王都の人達は
「王女様ー! 私達のために、必ずまた戻って...」とか
「王女様ー! お元気で...、私達は待っています...」など
驚くほどの、お見送り状態!!
北門を出ると沿道の両側にも、まだお見送りの人達が続いていた。
私は、「朝から王都民が、こんなに集まってくれるなんて、予想していなかった」と呟いていた。
リリアーヌが「先日の式典での、堂々とした王女様の人徳からです」と言っていた。
そこを、リザリアが、先日の事件で、強大な魔法を使った者がいたでしょう。実はその者は、西方諸国一番の賢者だったそうですよ。ある筋からの情報だと言った。
リリアーヌは、たぶん王宮魔導師団の情報筋ね、と思った。王女様やリザリア、侍女達に宰相からの情報を統制していたからなんだ。
リザリアは続けて、西方諸国一番の賢者は、都市1つを一瞬で灰にした! と反乱鎮圧の実績を挙げた定評のある話をしていた。
みんなからも、え~、王弟殿下と王太子殿下からは、何も聞いてませんね。それじゃあ、西エルムズ国絡みじゃないですか!! 競技場の事件から臭いと思っていましたよ!! と罵声が上がっていた。
まだ罵声は続き、隠し事があるから、私達がいたら、都合が悪かったんですね。リザリアの情報が、本当なら西方諸国一番の賢者を相手にしたんですか?
しかも、それなら王女様は、西方諸国一番の賢者を、簡単に倒したことになりますね!! それならこの国最強の武人が、敬意を示したことは、納得できますね。とみんなは騒ぎたてていた。
私は、それを聞き流すようにして、パレードの時のように、手を振ってスルーしていた。
でもその話を聞いて、ガラーム将軍が私の味方になってくれたのは、そうか、武人としての勘なのだと、思うしかなかないねー!!
私のチート能力様が、私自身の墓穴を掘っていたのは、知らなかった。いや、まだだ、王女様はまだ治療中なのだから。例えどこか不自由でも、出てきてくれれば、私は問題ないと信じたいと思った。
そして、北街道の東方向に出ると、街道の両側に馬車が、ズラーと並んで止まっている。
リリアーヌは、それを一生懸命眺めると、王女様、あれは王都の西側の貴族様達や、ご領主様たちですね
王女様のお見送りにしては、凄い数が並んでますわね、と驚いていた。
すると、私の馬車が通ると、軽く片膝を折り、深々と頭を下げている。
私は思わず、え! 私への忠誠でしょうか!! と呟いてしまっていた。
リリアーヌもそれを見ていて、そうです、間違いありませんね。王都の西側は、王女様を主と認めていますよ!! 「これは、オモイッキリ凄いことですね!! と興奮しながら涙ながら言っていた。
私は、その意味を噛みしめながら、更に嬉しそうに手を振っていた。
内心は、王女様いなくなると、この方達と、その配下の方達が大変なんだな~! と深い沼に頭まで、スッポリと浸かった気がした。いやいや、王女様さえ皆の前に現れれば解決すると思いたい。
私は召喚される前は、24才の普通のOLなんだからねー!!
これでは、旅の出発前に思い描いた、寂れているけどノンビリとした旅は、満喫できるのかなー、と思っている。いや! まだ旅は始まったばりだー。と気持ちを前向きに切り替えた。
◇◇旅の休憩地、宿泊地にて
馬車は北街道を東に向かっている。休憩のため、北街道沿いの町に寄ったりしている。
その度ごとに、周辺の貴族様達や領主様たち、町民一同が揃って歓迎してくれていた。
私はなんか、戦記物にある場面で、挙兵して進軍して行くと、各地から支持する者達が、続々と集まってくる、壮大なパノラマが頭に浮かんでしまった。ええーーー!!
これって、王族の行幸ではない、ただの都落ち(退避)なのにーーー!
私は召喚されたのだが、この状況では、王女様に憑依してたほうが、まだ本人なんだと諦めがついて、いっそスッキリできたのかな? と不穏な思いが、よぎってしまった。
◇◇都市エルムトでの宿泊
旅は出発してから数日が経った。
今日はまだ王都寄りの、エルムトの都市で宿泊する。
私こと王女エリーヌとギルバート、王女様専属侍女長のリリアーヌは、エルムトの領主エルサル、都市の代表達と会見することになった。
最近、シュトリアル国からの商人や旅行者が増えてきて、一時は寂れる一方だったが、今はかなり盛り返していると報告があった。これは、王女様の婚約者、シュトリアル王国第二王子ユリウス様のお陰でございます。王女様とユリウス様の今後の更なるご活躍と共に、この都市の発展にも期待して下さい、と。
是非、婚礼の際はご招待いただきたいと、領主エルサルからのご挨拶を受けた。また、都市代表達もユリウス様のお陰で、古くなって使えなくなった設備の新設や改修が進み、都市の住民の表情も明るくなってきていると報告を受けた。私はトッテモ嬉しそうな表情となり、会見は和やかに終えた。
私は、王女様とリリアーヌのお陰でだね。と心の中で人ごとのように思ったが、やはり人の喜びは伝わるもの。とても嬉しそうになっている自分に気づいた。
エルムトでは、とても歓迎を受けて晩餐会が開催された。
明日はエルムトの景勝地、エルムレイラ湖のほとりの案内を領主エルサルが提案してきた。王女エリーヌとギルバート、王女様専属侍女長で打ち合わせをし、案内を頼むことになった。
この予定変更は、すでに予定から遅れて、急ぐ必要もないからだった。明日はエルムレイラ湖のほとりにある領主邸に宿泊することになっている。
私としてはノンビリとした旅の実現になるから、この提案についても心から歓迎した。
翌朝、昨日の晩餐会は盛大に開催したため、王女様専属の侍女達までお手伝いをお願いして、手伝ってもらった。その代わり、今朝の朝食は王女様専属の侍女達まで、朝食の用意から配膳までを領主の用意した侍女たちが準備していた。
私は、王女様専属の侍女達が、朝ノンビリしてもらったので、日頃のネギライができたので良かったと思った。
朝食の後は、まだ出発の打ち合わせで、ギルバートとリリアーヌが領主達と打ち合わせしているので、私は久しぶり侍女エミリアの姿で、侍女達のところへ遊びに来ている。彼女たちは雑談をしていた。
彼女達の話は、4~5年前に王城へ向かう途中で寄った時の都市や町の様子を、振り返っていたようだった。やはり、寂れているようだった。
話題は王弟殿下に集中していた。今はギルバートとリリアーヌがいないから本音が出ているようだ。王弟殿下の直轄領に隣接した領地出身の侍女などは、ご自身の出身である北地方を3年位前から放置してことに呆れていた。何度も北街道や周囲の都市や町の改修など申請したが、全て却下していたようだった。
王太子殿下も婚約破棄とその態度に批判が集中していた。まあ、私もざまあは協力してあげたいけね。
しかし批判もそのまま放置すると彼女達が当局から睨まれてしまうことは避けたかった。そこで、私が領主や都市の代表者から受けた報告を話した。
今は、シュトリアル国からの商人や旅行者が増えており、繁盛して盛り返しているよ、と。彼女達はそう言えば、城壁が補修されて綺麗になっていたり、他にも設備が新しくなっている話が出てきた。
ユリウス様のお陰でございますね。王女様ともご協力して、是非北地方の立て直しにご尽力頂きたい、との話になった。
まあ、王女様とリリアーヌもいるから大丈夫だよ。うん、キットね。
◇◇エルムレイラ湖にて
少し時間がかかっているなと思っていると、ギルバートとリリアーヌが戻ってきた。ゆっくりした時間に出発だけど、お昼すぎには到着する予定で出発した。途中、トラブルもなく進んだ。
予定通り、エルムレイラ湖に到着した。天気が良いので湖がそよ風に揺られる度にキラキラと輝いていた。とても透明度の高い美しい湖だった。野花の群生がみられてとても自然ゆたかなところだった。
夜には領主邸の庭を開放して、近所の人達も参加する宴が行われるそうだ。
私の侍女達もこの解放感のある湖のほとりで景観を堪能している。木陰に座り、自然の吹き抜ける風や野生の野花の群生から送られる香りが時々感じられる。大自然に包まれていると感じられるひと時を満喫できた。
私はふッと思い出した。昔家族でオーストラリアのケアンズでディナーのあと、エアコンの無いタクシーにみんなで乗り、窓全開にしていた。その時に、窓から入る風に乗った花の香り、あれは花粉? とまで感じるほどの強い香りだったことを思い出した。たぶん、日本から突然消えた私を家族はイギリスで心配しているだろうなーと思った。うん、必ず日本に帰る方法も探さなきゃね、と思った。
王都から旅をして来ていまだに、私の探知にそれほどの不穏な気配は感じられない? 戦闘メイドのマリアにそれとなく聞いてみた。マリアは、はい、それは取るに足りない小物の暗部やアサシンだからですよ。
何か変ですよね王城の離宮の方が強力な暗部やアサシンがいましたけどね。王城を出たら、あれはこの国の盗賊ギルドでしょうか? 遠くから様子をうかがう微々たる者を倒してみたら冒険者ギルドのD級冒険者でしたね。リザリアが試しに分析したら、ログに記録された犯罪歴が結構な数記録されていましたよ。
強盗、婦女子への暴行、新人冒険者への恐喝から殺し、奴隷に人売りまで、それとこの国の裏ギルドの紋章がありましたね。一人瞬殺したら周りの人達はザーットチリジリになって散って行きました。まるで集まっていたゴキを一匹潰したら逃げて行くのと同じに見えました。
代わりに冒険者ギルドの高ランク、C級冒険者以上のような気配の人達が散って行った奴を潰してました。潰されたのは、キットD級冒険者でくすぶっているゴロツキ達ですね。
王女様はそこまで気遣いされなくても、私にお任せ下さい。それと、この国の冒険者ギルドやシッカリした冒険者は、王女様の味方になっていますよ。それと、今晩の領主邸の庭を開放した宴もご安心ください。C級冒険者以上の方々が守ってくれますから。
そうね! 私の探知は問題がなかった。王都を出てから都市、町、村で歓迎を受けるたびに休憩してる。私はこの異世界に召喚されて初めて、異世界・ファンタジーな風景や地方独特の特産品などを味わい楽しめている。こんなゆっくりと進む旅も、いいなーと嬉しくなった。
2025/05/02 追加・更新しました。