#1 ○王国王城の召喚
私は日本に生まれ育った一般女性、24才。
仕事が休みの時は、ラノベや漫画を読み漁っている。
学生の頃から本の世界に夢中で、おしゃれはあまりしていない。
髪を染めたこともない。
その分本が買えるならそっちがいいから。
そう聞くと眼鏡をかけた黒髪黒目の..
ステレオタイプな子をイメージするでしょう?
私の名前はエミリア。
お母さんがイギリス人のハーフ。
地毛は金髪で瞳は菫色だから、初対面の人にはあまり、
話しかけてもらえない。
時々観光で来た海外の人から、声をかけられるけど、
身振り手振りと、片言英語で交番の場所を伝えている。
英語は本当に苦手で、教室に通ったりしても、
長続きしなかった。
なので家族が、イギリスへ引っ越すといった時は、かなり困った。
結局日本の大学に通いたいと、説得して私一人だけ、
残ることになった。
卒業した後も、日本で暮らして働いていた。
日本に残った理由は、他にもあって、日本の味付け、
食文化が好みだった。
日本人向けの味付け、フレンチやイタリアンとか。
パスタも日本独自の、タラコ、明太子とか...。
日本独特の甘塩ぱいタレと、ごはんとの相性も最高。
これは、うなぎ、天丼、焼き鳥、照り焼き、牛丼...。
お醤油もいいね。
煮物とか(肉じゃがとか、旬の野菜、...)。
天ぷらとか(野菜の天ぷら、かき揚げ、魚介の天ぷら、...)。
海鮮食材(お造り、お刺身)とワサビとの組合せ。
お味噌の味付け料理もいいね。
そうやって、日常を楽しんでいる。
あの日までは...。
今日は、駅近くのショッピングモールへ来ている。
いつも休日は昼前まで寝ていて、ここのフードコートで
ランチを楽しみ、いつもの書店で、ラノベや漫画を漁っている。
いつものように、端から並んでいる作品を1つ1つじっくりと眺めて
いると、高校の制服を着た、二人の女の子がいた。
黒髪モブカットのかわいらしい子だった。
その二人の間で肩越に本を見ようとしたら、幼い男の子がぶつかってきた。
見ると、勢いよく走ってきたのか、床にお尻をついていた。
私は、「僕、大丈夫?」と声を掛けた。
その後を追うように来た母親が、「ソーリー」と言っていた。
男の子は、「うん、大丈夫」
私は、「走ると、危ないよ、普通に歩こうね」と優しく言った。
すると、母親が「お姉さん、日本語がうまいですね」
もはやお決まりの流れ。栗色の髪のウィッグ、こげ茶のカラコンを
付けているのに、間違われている。
二人の高校生も、こちらを見ていた。
私は、「気にしないで、男の子は大丈夫だから」と
二人の高校生へ声をかけた。
男の子と母親は、もう手をつないで歩いていった。
二人の高校生へ、「表紙買いやるよね」
「イラスト見て何読もうか考えてたんです」
話のきっかけにできるから最近は楽しい。
「お姉さん日本語上手ですね」
「私、日本生まれよ~」
「..すみません」
「謝らないで、二人もラノベ読むの?」
「はい、特にファンタジー物は、旅をしているような気になれて好きです」
「ふふ、私も行ってみたいね」
異世界、ファンタジー好き3人がここに集まった。
その時、突然、大きな揺れが起きた。
縦に揺れている。何かパラパラと落ちてきた。
私は思わず、雑誌を手に取り、頭にかざしながらしゃがんだ。
二人も私につられて、手近な本をとりながら、しゃがんだ。
揺れが収まってくると、天井から照明器具がぶら下がっていた。
また、窓ガラスも割れて飛び散っていた。
二人は、怖かったのか、泣いていた。
そこで、私は思わず二人の肩に軽く、手を乗せた。
次の瞬間、目の前が暗くなり、下降していくのを、感じた。
あれ大変! 床が抜けたのかな? と感じた。
目の前が明るくなった瞬間、何か大きな声が聞こえた。
「聖女召喚、転移完了しました!」
「聖女の召喚者、が現れました!」
「おお~! 三人も召喚できたのか!」
「聖女召喚、成功おめでとうございます~」
ワーと一斉に歓声や拍手が響いている!
ええ~! 何が起こったのか~?
二人の高校生はまだ、泣いている!
周りを見ると、私達は異世界マンガにありそうな、
魔法陣? みたいな内にいる。
こちらは、まだ、泣いている二人の高校生としゃがんだまま。
目の前の中央に、大きなイスに座っている?
白地に、キンキラの服装?
あれは、王様?
その横に立っている、同じような服装の若い人、王子様?
王様が「よし、成功見事であった」
「すぐに、鑑定を始めよ」と言っている?
こっちは、それどころじゃないよ!
ところが、高位の神官の服装をした方が、
「お待ち下さい! 聖女様達を見ると、何かあったような、ご様子!」
王様が「そうか、それでは、そなたは、どうするか?」
「一旦、別室で落ち着かせては、いかがでしょうか?」
「あい、分かった。我らは、戻るので、そのほう達に任せるぞ」
「落ち着いたら、祝賀会へ呼びに来い」
そして、王様?と王子様? は部屋を出ていった。
ゆっくりと、数人の方がこちらに来た。
二人の高校生を見ると、少し落ち着いた?
それとも、混乱して固まっている? ようにも見えた。
神官服の方が「別室で、落ち着いて、ゆっくりと話を聞きましょうか」
と静かに語りかけてくれた。
◇◇別室(応接間)にて聞き取り
今は、王城の別室(応接間?)にいる。
二人の高校生は、お互い肩を抱きながら、私の横に座っている。
ここは、異世界マンガでは、ありのままに、伝えないところだね。
私達のこの状況は、難しいけど、分かり易く伝えないと、
説明がつかない。
思いを巡らせ考えが出てきたが、中々、話を切り出せなかった。
少し考えながら、時間をかければ、必ず伝わると!
自分に、言い聞かせた。
お城のような強固な高い建物に居たこと。
突然、大きな揺れがあった。それは、私達が天災の一つとして
地震と呼び、恐れるものであること。
その地震で天井が崩れかけたり、窓ガラスが割れて飛び散った
ことなどを説明した。
説明は聞いてくれてたようだったが、何か感じたことがない話を
聞いたような、表情をしていた。
やはり、私の母親が、フランスの曽祖母に、地震を説明しても
体験していないから、似たような表情をしていたな、と思い出した。
そうだ、「この世界には火山はありますか?」と聞いてみた。
意外と、神殿長が幼い頃に、山が火を吹いたことがあったようだ。
その話を聞き出してみた。
「近くの山が火を吹き、激しい揺れで、町中の建物が崩れたり、
倒れたりした。自分も立っていられなかった」
「幼い私は、転がりながら泣き叫んで怖かった思い出があります。」
と話してくれた。
周りの人達にも少し、恐ろしさが伝わったようだ。
二人の高校生も
「そうです、立っていられないんです」
と必死に伝えてくれた。
私は、体験した人が語って、くれて良かった。と思った。
そこで「私の国は特に、火山が多くて、平地でも揺れるんです」
心の内では、かなり省略してるけど...、と呟きながらも。
続けて、「私の国では、その位の大きさのものが、数年置きに
頻繁に起こります」
すると神官が「そうか、そんな土地柄の人だから、なんだ!」
「歴代、召喚した方々は、とても素晴らしいお力を、
お持ちになっていらっしゃいました」
「異世界から召喚した聖女様は必ず、黒髪黒目の方で、
歴代の聖女様の絵も、そうだった」と言い出した。
「聖女様が厄災や天災を払ったことも、記録には、いくつもある」と。
「聖女様は、ありがたいお方です」
「神に授かったことは、大いに感謝しなければなりません」と。
私は、それは説明できないなと思って、肯定できなかった。
でも、皆は一応納得したような表情になっていた。
二人の高校生は、私の説明に首をコクっとしてくれて、
肯定してくれたし、気持が段々と、落ち着いてきたようだ。
ちょうど、お茶が入ったようで、一区切りついたなと思った。ふ~
お茶を飲み始めた頃に、向こうから先に、紹介が始まった。
紹介を始めた人は、この国の宰相だった。
補佐の人は、宰相のご子息シルバーリオン。
神官服の方は、神殿長と鑑定の神官。
ローブ服の魔導士は、副師団長、宰相のご令息ブロードリオン、
と鑑定のリザリア。
次は私達を紹介した。
「私はエミリアです」
「エリカです」
ああ、髪が不揃いなウェーブがかかっている。天然パーマだね。
「ユミナです」と名乗った。
メガネをかけた子だね。
その時リザリアが、一瞬ニヤとしたのを見逃さなかった。
「エミリアへ、質問がありますけど、よろしいですか?」
「あなただけ、黒髪黒目ではないですね」
「顔つきも彫が深いような?、違っているな? と感じます」
「それとこの国でも、あなたと同じ名前の人が、いますよ」
「どうして、でしょうか?」と、
みんな一斉に、そう言っていた。
え、嫌なところを突いてきたな!
考えていると、ふと手に持った雑誌に気が付いた。
ああ、持ってきちゃった! お店の人ごめんなさい、と心の内で呟いた。
雑誌名は、《ファンタジーの世界、現代に残る中世の街並み》? おお!
少し雑誌を開くと、レポーター役の女性が複数紹介されていた。
そして、中世の街並みや小規模なお城があった。これだよ!
私は、雑誌を開いて説明を始めた。
私達の世界では、国が違うと、特徴が違ったりします。
私はこの二人と同じ日本で生まれ、父も日本人です。
母はこの雑誌にあるような国の生まれです。
雑誌の金髪、碧眼の女性を指した。
すると、それを眺め、他の人も見て納得した表情になり、
「おお、私達の国の人々と変わらないね」
「あなた達の世界は、すべての人が黒髪黒目だと思っていた」
皆は、一斉に雑誌を眺めていた。
そして、納得してもらえたようだった。
◇◇神殿長から聖女様の扱いについて説明
神殿長から、聖女様の扱いについて、説明があった。
「色々な国で、100年単位で、異世界聖女召喚が行われてきました」
「聖女様は様々なお力で、我々をお救いくださっています」
「歴代の聖女様は、神殿で丁重に扱って、生涯の生活を保障しています」
「今回も、我々の神殿に住まいが用意されています。」
「但し、召喚される聖女様は、今までお一人だった」
「別にご用意できるまで、しばらは、一緒の部屋とさせて頂きます」
「我が国の聖女も、専属の侍女が付きます」
「こちらも、聖女見習より、専属の侍女を選ぶようします」
私達三人から質問をした。
「元の世界に帰れますか? 出来れば帰りたいです」
神殿長以外は、え! と困惑した表情になった。
「今まで記録によると、勇者召喚され、魔王を倒した者が、
元の世界に戻った記録があります」
「残念ですが、聖女召喚された歴代の聖女様で、元の世界に
戻られた記録はありません」
二人の高校生は、暗い表情になった。
次に、魔王について質問をした。
「今は、魔王はいますか?」
「700年程前に魔王は討伐されました」
「まだ千年は現れないものと思っています」
次に「聖女は魔物討伐や浄化など期待されていますか」
「いいえ、この国では、それほど必要はありません」
「期待しているのは、治癒の力や農産物の豊穣に係る力です」
「ですが、ひっ迫してませんので、先ずは力の訓練から始めます」
二人の高校生は、何かを二人で話し合っていた。
ふと気づくと、二人の高校生も本を持っていた。
そこで、本の題名を3人で一緒に見てみた。
題名は、
《異世界へのいざない》と《ようこそ異世界へ》
私達はこの状況なのに、一緒に吹き出してしまった。
これって、今の私達そのものじゃない~!
私は二人の高校生が、明るい表情になり、異世界に来られたね。
せっかく、異世界に来たなら、色々と異世界のファンタジーな
風景を見てみたいな~、と言っている姿を見ていた。
神殿長は、
「聖女様には、各地の人々を元気づけるお役目もございます」
「これは、各地を馬車で巡回していきます。色々な景色も見れます」
「また、歴代の聖女様も、旅に出るので楽ではありませんが、
これを楽しまれていた記録があります」
「また、川の恵みや湖の恵み、各地の特産料理なども楽しめますよ」
二人の高校生は、楽しみたそうな顔になり、二人で話していた。
2025年04月24日 改訂しました。