chapter76 来客
みんなで夜ごはんを食べて就寝した翌日。
狩りグループが出かけて行き、昨日の整地作業の続きを始めてから、数時間が経過した頃だった。
――犬たちが、突然吠えはじめた。
何事かと作業を中断して向かうと、そこには一体のホブゴブリンと、複数のゴブリンたちの姿があった。
敵意はなさそうだが、念のため犬たちを制止しつつ、彼らの用件を聞く。
彼らの話によれば――数日前からこの辺りに流れ着いたという。
空腹に耐えかねてさまよっていたところ、樹木と獲物が大量に倒れている場所を発見し、そこにあった肉を食べて飢えをしのいだらしい。
そして、樹木が倒れた方向へと進んでいたところ、この場所にたどり着いたのだという。
……なんだか、すごく見覚えのある話だな。
「それで、君たちはこれからどうしたいの?」
そう問いかけると、ホブゴブリンが少しだけ考え、代表して答えた。
「……食べ物があれば、分けてほしい」
……まぁ、予想はしていた。
とはいえ、おれたちもそこまで余裕があるわけじゃない。
仲間でもない連中に、施しをする余裕などあるはずもない。
だから、ハッキリ言ってやることにした。
「そうしてやりたいのは山々だが、おれたちも食料に余裕があるわけじゃないんだ。
ましてや、仲間でもない相手に分けてやる余裕なんてない」
言い換えれば――“仲間になるなら分けてもいい”ということになるが、それをあえて伝えるつもりはない。
「……どうしても、か?」
ホブゴブリンが問う。
「ああ。どうしてもだ。
どうしても諦めきれないなら――魔物らしく、奪ってみたらどうだ?
……できるものなら、な」
おれは目の前のホブゴブリンとその仲間たちに、そう言って挑発した。
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