chapter84 埋葬する前に
目的地に着くと、目を覆いたくなる光景が広がっていた。
ゴブリンや他の魔獣たちの死体には大量のハエがたかり、腐敗臭が辺りに立ち込めている。森が近いため、火魔法で処理するには燃え移る危険があった。
「お前たちは、魔法は使えないんだよな?」
おれは新入りのゴブリンたちに尋ねる。
「そうでやすね……使えやせん……」
予想通りの答えが返ってきた。
「今度、教えようか?」
「いいんでやすか?」
ホブゴブリンの目が輝く。
「習得できるかはわからないけど、努力次第ではできるはずだ。おれも最初は魔法を使えなかったからな」
おれはそう言うと、作業に取りかかった。
◆ ◆ ◆
死体と森の距離が近いため、火魔法だけで処理するのは危険が伴う。
そこでまず土魔法で死体の位置を下げ、安全な場所に移動させることにした。
「今から魔法を使う。よく見ておけ」
おれは詠唱する。
「シンクホール!」
陥没をイメージした魔法が地面を凹ませ、死体は穴の底に落ちていく。
次に火魔法「ファイア」を使用。穴の底の死体を燃やし、炎の勢いで一部のハエを焼き払う。残ったハエには風魔法「ウインド」を送り、さらに炎を押し戻す。
最後に土魔法で陥没した穴を塞ぎ、蒸し焼き処理は完了。
この方法なら魔力をほとんど消耗せず、かつ安全に死体処理ができる。
おれは同じ手順で、残りの死体も順に片付けていった。
◆ ◆ ◆
新入りのゴブリンたちは、作業をじっと見守る。
「こうやるんでやすね……」
「なるほど、火と風と土を組み合わせるんだ」
少しずつ、魔法の連携の意味を理解し始めたようだ。
「次はおれたちもやってみたいでやす」
ホブゴブリンが目を輝かせて言う。
おれは微笑みながら頷いた。
「そのうちな。まずはよく見て覚えることだ」
こうして、おれと新入りたちは、森に放置されていた仲間たちの死体を安全に処理し、埋葬の作業を終えた。
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