chapter79 ゴブリンたちの教育その2 狩りの指導その2
新入りのゴブリンたちに、即席で作った石の槍を渡してから、おれたちは獲物の捜索に出発した。
人数は増え、大所帯になってしまったが――
新入り以外のメンバーは、ここ数日一緒に狩りに出ていて、それなりに成果も出せている。問題はないはずだ。
おれは魔力切れで魔法が使えない状態だったが、気術でなんとかカバーしていた。
ホブゴブリンやゴブリナが魔法を使えない時は、ゴブリンメイジの魔法やゴブリンアーチャーの弓で補っていた。
最初こそ失敗が多かったが、アドバイスを重ねるうちに、みるみるうちに狩りの精度が上がり――今では、おれが指示を出すだけで、ゴブリンたちだけでも狩りが成立するようになった。
狩りグループに正式に入らないか、と聞いたこともあったが、断られたので、それ以上は口にしていない。
だからこそ今は、新入りゴブリンたちに狩りのやり方を教えていく必要がある。
今日は新入りたちを主力にして、狩りの実践訓練を行う。
それに合わせて、既存メンバーには「足止め役」をお願いすることにした。もちろん、これはあくまで「練習」として。
「今日からは、新入りたちが狩りの中心になる。みんなはサポート役に回ってくれ。
魔法の訓練も兼ねたいから、よろしく頼むな」
そう告げると、案の定、ここ数日一緒に狩りに出ていたゴブリンたちから、不満の声が上がった。
が、それも想定内。おれはあらかじめ考えていた言葉を口にする。
「これは練習だよ。自分で獲物を仕留めるだけじゃなく、仲間を支える練習も必要なんだ。
一人ひとりが強くなるのは悪くない。でも、“強いやつ一人”に頼った集団は脆いんだ。
たとえばこのグループなら、おれがやられたらどうなる?
この森には、おれより強いやつもいるはずだ。おれが倒されたら、君たちも太刀打ちできない相手ってことだ。
だからこそ、誰かを支えたり、助けたり、時には“逃げるための判断”ができるようにしておく必要がある」
そう説明すると、みんな納得してくれた。
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