バレンタイン動画を配信してみた?
藤乃澄乃様ご主催『バレンタイン恋彩2』企画参加作品です。
藤乃澄乃様、皆様、宜しくお願い致します。
「くっくっくっw!
ようこそ! バレンタインデーを意識した今回の動画に!
バレンタインデーだけに三人!
チョコレート作りに挑戦する動画となっているぞ?」
腕組みをした偉そうな少年が
モニターにアップで映る。
分かるヒトには分かる様な上質のセーター……は良いが
エプロン三角巾を着用なのはお茶目なのであろうか。
言う迄もないだろうが
「三角巾」というのは頭に着けて髪を押さえるモノである。
「くっくっくっw!
食品関係の仕事には
エプロンに髪を押さえる着衣は必須だろう?」
偉そうな少年は
地の文に応えているかの様だが
特殊な能力は無い……筈である。
恐らく画面の向こうの視聴者の反応を想定して
発言しているのであろう。
其して。
「何だコレ? 何なんだ⁈」
騒ぐ今一人の少年がモニターに映る。
瞳には理知の光が見えるが
明らかに気品は備わっていない。
服装は其れなりに整っているというのに
「貧相」という言葉が迚もしっくりくる少年であった。
「動画の配信ですわね。
個人の動画でもテレビ番組に負けないものも有る……
というか
テレビはもう廃れたと言いますからね。
テレビを知らなくても問題ありませんわ?
陣さん」
「おー! カガクのチカラってスゲー!」
貧相な少年の後ろから
答える様に語る二人の少女。
どう見ても?
貧相な少年を盾にしていた。
どちらかというと
賢そうな少女がバカそ……無邪気そうな少女の手を引いて
二人して貧相な少年の陰に隠れていた。
扨。
貧相な少年は「陣さん」と呼び掛けられたか。
陣と少女達も
エプロン三角巾姿だ。
更に。
陣達には其れぞれ一人ずつ成人女性が。
偉そうな少年の両脇には成人男性が付いていて。
成人男女は全員が黒スーツ。
更に男性達はサングラス。
如何にもボディガード、という出で立ちであった。
更に更に。
全員がエプロン三角巾着用なのは。
やはりお茶目なのであろうか。
兎も角。
其れだけの人物が画面に映っていた。
陣が偉そうな少年に訊く。
「神威ぃ! 何なんだよ此れはあ!」
偉そうな少年、神威は堂々としたまま。
だが窘める。
「こら。 JIN!
此処では呼び方を変えろ。
オレの事はHASETOと呼べw!」
「何じゃ其りゃー‼
キモチワルイぞっ⁈」
JIN(笑)は嫌悪感を示すが。
「プライバシー保護の観点ですわね。
苗字が特定されると困りますから」
「おー其れはダイジだな!」
少女達がぽそっと補足する。
HASETO(笑)は満足そうに言う。
「うむ!
拙い言動は編集でカットするからな! 気を付けろw?」
という事であった。
「さあ! 此の動画はバレンタインデーに際して
三人がチョコレート菓子を作るというものだw!
まw!
参考にしたければすれば良いw!」
HASETOが宣言するが。
「だから何で俺が作らなきゃならんのだ⁈」
JINは尚も騒ぐ。
JINを少女達は宥める。
「まあまあ。 楽しく作りましょうよ」
「おー! たのしーぞー!」
……バカそ……無邪気な少女も宥めているのであろうか。
「三人を改めて紹介しようw!
JIN、MIU、UMIだw!」
HASETOが言うと
画面が其れぞれを大映しにする。
賢そうな少女がMIU、
無邪気な少女がUMIだ。
「何で名前がローマ字なんだよ⁈」
尚もJINはイチャモンを付けるが。
「プライバシー保護の一環ですわw?」
MIUが付け足す。
「タイヘンだなー?」
UMIは吞気であった。
騒ぐ三人を余所に。
HASETOは平然と続ける。
「実は此の三人、
昨年もチョコレート作りをしたのだがなw?
板チョコの成型だった!
此れがだなw!
形を作っているだけだと思うなw?
繊細な技術で味が天地程も変わるのだ!
下馬評みたいな事を言っておくとだなw!
JINは頭カチカチで
詰まらなくも小ぢんまりと纏まった味!
MIUはまあ……
素人の手作りは此んなものだろうなという味!
UMIがだな……w!
此れがプロとも張り合える出来だったのだ!
驚きだなw?
評価等すれば結果は見えているがw!
さあ三人は今年は何を作るのだかな?」
「直接訊いてみようか。
JIN! どうだw?」
HASETOが司会進行みたいな語りをすると
苦虫を嚙み潰した様な顔のJINが。
「だから何で
俺が作らにゃならんのだ?」
其処へMIUが口を挟む。
「男性方は唯貰う貰わないで一喜一憂なさいますがね。
贈る女の苦労も知って欲しいのですわ?
JINさんは
男性代表、という訳ですわね」
MIUは
目が全然笑っていなかった。
「でw? 何を作るのだw?」
HASETOは平然と纏めに入る。
「形を作った板チョコで良いだろうっ?」
JINは投げやりだった。
「ふっw! 詰まらん男だなw!」
HASETOは鼻で笑い。
然しJINは反論する。
「はせっ……HASETOは言っただろうっ⁈
繊細な技術で出来が変わると!
じゃあ突き詰めてみたって良いじゃあないかっ!」
必死なJINを
HASETOは軽くあしらうが。
「其ういう事にしておいてやろうw!
ではMIUはどうするのだ?」
「わたくしはチョコレートケーキを作りますわw!」
MIUは笑顔で即答する。
何処か冷たい笑顔だが。
HASETOは
余裕の表情で評価する。
「成る程w?
技術の繊細さでは勝負にならないから
過程の複雑さで対抗、という訳かw!」
「何か問題でもw?」
HASETOは何かを作る訳でもないのに
何故かMIUと火花を散らす。
「いやあw? 是非頑張ると良い!」
飽く迄HASETOは余裕な態度だが。
「ではw?
プロと張り合えるUMIはどうだw?」
愈々?
HASETOはUMIに話を振る。
が。
「あたしは何すればいーのー?」
ぴしりと。
罅入った様な雰囲気があった。
HASETOの余裕の表情に
何処か引き攣った感がある。
然しHASETOは直ぐに再起動する。
「くっくっくっ……w!
くっくっくっくっくっw!
是が「天才」かw!
「天才」は何も考えていなくても
凡人をあっさり越えて行くw!
「天才」を目の当たりにする事になろうとはなあ……w!
くっくっくっくっくっw!」
HASETOには
何処か取り繕った感があるのだが気のせいであろうか。
「おー天才ってスゴいねー?」
一方UMIはボケ……吞気であった。
「ねーせつな。 どーすんの?」
「わっわたしに訊かれましてもっ?」
UMIはお付きの女性に尋ねる。
UMIのお付きの女性はせつなという様だ。
「チョコババロア等如何ですかっ?」
此処でMIUが声を上げる。
「準備も簡単! 直ぐ作れますよっ?」
「おー! ソレ良いな! つよそうだ!」
UMIは直ぐに賛成し。
「何言ってんだ⁈」
JINはつい? 野次を飛ばす。
「まあ良いw!
早速製作に入ってくれw!」
HASETOが取り仕切り。
三人は製作に入る。
「作り方は動画で簡単に視られますわw?
ほらババロアは殆ど材料を混ぜるだけ!」
「おー! カガクのチカラってスゲー!
MIUはやさしーな! 大好きだ!」
「はうっ⁈ え、ええ。 頑張って下さいまし?
わたくしも作らねばなりませんから! まなこ!」
「はいMIU」
少女達はじゃれ合って? お付きに声を掛ける。
MIUのお付きはまなこという様だ。
此処でHASETOの解説が入る。
「くっくっくっw! 解説しよう!
三人に付いている女性達は補助だな!
スーツにエプロン三角巾なのはご愛嬌という所かw!」
HASETOは自身を棚に上げて言う。
JINのお付きはというと。
「ふふふふふ……! わたしウチじゃあ末っ子でして。
妹とのお菓子作りが夢だったんdeath!」
何やら目がイっていて。
「さつきさあああんっ⁈ 俺男なんだけどおっ⁈」
「まあまあ。
股間に一寸ナニカ付いているだけの妹だと思えば……!」
「コエえよっっっ⁈」
JINを恐がらせていた。
所でさつきという様だった。
扨製作風景が暫く流れたが。
場面が切り替わり。
再びHASETOのドアップだ。
「さあ完成だあw!
言う迄もないが冷やすのには時間が掛かるからなw?
今は作っていた次の日だあw!
其れがMIUの要望でなあw?」
「ええw! 一晩寝かせた方が美味しいのですわ!」
という事で実食だ。
食べる面子は。
HASETOと両脇に控えた黒服の男二人。
作った三人とお付きの三人。
九名であった。
HASETOはというと。
「先ずは詰まらん板チョコから食うかw!
ふむw! 星形かw!
昨年はハートだったのだがw!」
「此処で暴露すんなああああっ!
俺を恥ずかしがらせて楽しいのかよっ⁈」
騒ぐのはJINである。
「抑も昨年は型がソレしかなくてっ……!」
「分かったから騒ぐなw! お里が知れるぞw!」
やはりHASETOは余裕であしらい。
「……腕が上がったかどうかは微妙だなあw?」
と評価する。
「其りゃあ別に俺
お菓子作りの修業とかした訳じゃあねえしっ?」
当然の結果だった様だ。
「ショコラティエールへの道は遠いデスね」
何やらさつきがぽつりと言い。
「一寸待てえいっ⁈
ソレ女性形ダロさつきさんっ⁈」
「ダーイジョウブdeath!
一寸股間にヘンなモノが付いているだけdeathカラ!」
「昨日からさつきさんヘンなんだけどおっっっ⁈」
JINは迚も恐がっていた。
其れを余所に少女達はお喋りをする。
「じょせーけー……!」
「何時だか言いましたでしょう。
西洋言語では男女で語尾が変わるのです」
「某ぽけもんのゲーム(笑)で
おんな? がぱてしえさんとか言っているんだけど。
ムシじむで」
「其れは
言語を知らないおヒトが其う作ってしまったのですわねえw?」
「あたしの方がコトバ知ってんなw!」
「ふっふふふふふふっ……w!(失笑)
其の通りですわねw?」
二人で笑い合っていた。
HASETOは其れ等には一切構わず。
水をじっくり口の中で転がして。
「さあ次はチョコレートケーキだなあw?」
「おいHASETO!
さつきさんを何とかしてっっっ⁈」
JINは其れでは困る様であった。
然しやはりHASETOは平然と
チョコレートケーキを食べ始める。
「……うんまあ。
手作りとしては上等だろうなw!」
MIUへの評価は昨年より上がったであろうか。
更にHASETOの右側の黒服が言う。
「オンナノコの手作り! サイコーですっ!」
「おおおおおいっ‼
何かアブない発言のボディーガードが居るぞおっ⁈」
絶叫するのはJINだ。
まあ万が一にも暴走したら手が付けられないボディーガードは
恐ろしかろう。
然し黒服は
悔しそうに言い返す。
「此のトシ迄モテない男の悲しみが分かるかっ⁈
イイじゃねえかよう!
おカシ一つで喜んだってようっっ……っ!」
流石にJINも言葉に詰まる。
「あー……うん。 頑張って……?」
然しHASETOには訝しむ目を向けるが。
HASETOは何処吹く風であった。
「はっw! 喚くなw!」
其して左側の黒服が言う。
「チョコは遭難した時の非常食にもなるっスからね。
此れで二週間は生きられそうっス」
「何かもう一人も悲しい事言っているぞおっっっ⁈
HASETOちゃんと給料出してんのかっ⁈」
又もJINは絶叫し。
HASETOは平然と返す。
「失敬なw!
オレ自ら計算した充分な給料を払っておるわw!」
「は? 自ら?」
JINは呆気にとられる。
「某社長が経理に敵を飼ってしまって
失脚させられたからなあw?
クズがよく使う手だw!
企業にはなあw?
他人には任せられないキモが有るんだw!」
「……大変そうだね……?」
JINにはもう何とも言い様がなかった。
「さあ愈々チョコババロアだなw!
期待されているだけ評価は厳しくなるぞw?」
「ばばあ! ろあああああ!」
「何言ってんの⁈」
HASETOの宣言に
意味の分からない絶叫を上げるUMI。
最早何を考えているのか分からなかった。
ついJINもツッコんでしまう。
其んな中でも大様に
HASETOはチョコババロアを一口。
……動きが凍結する。
「……どうしたんだ?」
何だかんだ言って
HASETOの評価を待っていたJINが確認する。
と。
「っうおおおおおおおおおおおおおおおああっっっ⁈」
突然叫ぶ。
溜めに溜めて一気に吐き出す様に!
「……何だよ?
どうした行き成り」
JINでなくても
其う訊くよりなかっただろう。
HASETOは応える!
「おっっオレがっ……! 此のオレが此んなっっ……っ!
安っぽい料理マンガみたいな反応をしようとはっっ……!
スゴいぞコイツはっっ……‼」
「おっおう……!」
JINでなくとも戸惑うしかない。
「疲れが吹っ飛ぶなんてっ……! 言葉には言うが
実際は大した事ない! ってなるだろうっ? 普通はっ!」
「其うだな?
変なクスリでもない限りはな?」
何か興奮しているHASETOに
JINは何とか理性的に返す。
「大丈夫か? 本当に!」
「……キサマも食ってみれば良いさ!
言葉でグダグダ言うよりもな!」
「ああ、其うだな……」
三人が作ったものは九人に配られているので
JINは自分に配られた器を取る。
チョコババロアは。
手に収まる大きさだが深い器に装われていた。
スプーンで掬い。
JINは一口。
「……。
…………嗚呼……っ!」
JINは。
HASETOと違って
しみじみという感じだったが。
変といえば変な反応であった。
「美味いな……うん。
何と言うか……美味いよ……」
UMIは言った。
「JINがばかみたいになってるよー?」
「「ぶっっ……w!」」
此れに吹いたのは。
MIUとまなこだった。
「其うねえw? JINさんでも其んな時がありますのねw?
其れが男性の可愛らしい所ですわねw?」
「あっはっはっw! かわいーかわいーw!」
此のMIUとUMIの言葉にツッコまないのも
JINがおかしかったからであろう。
「んで? 結局どうだったの?」
UMIが疑問に思うのも仕方がないだろう。
が、MIUはきっぱり言う。
「今年もUMIさんの一人勝ちですわw?
わたくしとJINさんの差はどうだかですが
個人で言えば
JINさんの評価は停滞、
わたくしは向上ですかしらねw?」
「あたしゆーしょー?」
「ええw!」
「あいむあちゃんぽーん!」
「ふっw! ふふふふw!
ちゃんぽーんw!」
オカしな男性陣は放っておいて
少女達は戯れていた。
お喋りも良いが
女性陣も実食し出す。
「此れなら何処に出しても恥ずかしくないですよっ!」
やはりMIUのお付きだからであろうか。
まなこはMIU推しであった。
MIUも自身のチョコレートケーキを一口。
「ふふふw! 美味しく出来ましたw!」
チョコレートケーキは普通に扇形のピースに切って皿に盛り
フォークで食べる。
JINの星形の板チョコは手掴みだ。
愈々UMIのチョコレートババロアを
MIUも口にする。
と……。
「……あらw! 此れは確かに……w!
酔っ払ってしまいそうですわw?
チョコ酔いって本当は
もっと違うものの筈ですがねw?」
本当の「チョコ酔い」とは
気分が悪くなるものだと言う。
「乗り物酔い」は悪いものに決まっている、
みたいなものか。
兎角試食は
皆が食べ終わる迄続く。
UMI等はどれを食べても普段と全く変わらない。
「全部うまうま~! しあわせだなっ!」
「ええw! 其うですわね!」
「お手々のしわとしわを合わせてしあわせ! な~む~!」
「UMIさん時々よく分からない事仰いますわね……w!」
兎角皆? 幸せそうであった。
せつな等涙を流しながら食べていた。
「UMI……美味じいでず……美味じいでずよ゛~……!」
「うんよかったね?」
UMIはいつも通りのほほんであった。