文部省仮想空間対策本部
初小説です
お手柔らかにお願いします
ー 10年前 とあるカフェにて
恩師が死んだ。
「…自殺、ですか。」
「死因が出てこなかった。ここから先の捜査はもう期待できない。」
当たり前のことだった。
恩師を殺したのは紛れもなく恩師が封印したはずの妖怪だった。
目の前にいる青年は少し気力を取り戻したような、諦めがついたような顔をしていた。
妹が目を覚ましてから、彼は少し落ち着いたようだった。
「……もう、いいですよ。御子柴さん」
「何もいいことはない!倉持くんの親御さんの仇は必ず俺が取る!その為にも」
「もういいんですっ!!!!!!!!!」
「…妹が目を覚ましました。
けど、‘’あの日”のことを覚えてはいませんでした」
「それは…」
「俺は、もうアイツに……灯里にあんなこと、思い出させたくないんです」
凄惨な現場。
妹を守るようにして抱きしめる青年と明らかに助からない両親の死体。
凶器も何も無く、唯一の手掛かりは幼い兄妹だった。
もうきっと、彼も妹も忘れたいんだろう。
「御子柴さんには凄くお世話になりました。」
「いや…俺は何も…」
「これからは妹の為に生きていこうと思います。」
深々と頭を下げた倉持くんは悲しく微笑んだ後、走り去っていった。
「何の為に公安に来たんだかな…」