第七話
宿は木造の二階建てで一階は椅子や机が置かれ休憩スペース、二階はすべて部屋になっている。
新しいというわけではなかったが、しっかりと掃除をしているため、汚いところや壊れているとこはなく、過ごしやすい。
私たちは二階のそれぞれの部屋へ案内された。
「用意が済みましたら食堂の方へお越しください。夕食をご用意しております。」
部屋を案内した人はそう言って来た道を戻って行った。
「じゃあ、十分後にここで」そう言ってノアは自分の部屋に入って行った。
私も部屋の中に入るとそこはは机と椅子、コート掛け、ベットあと明かりでろうそくとろうそく立てしかなくシンプルで質素な部屋だった。
そうして私たちは、それぞれの準備を済ましたあと、食堂へ行った。
食堂の中は日焼けをした60代くらい強面のガタイのいい男と店の人と以外誰もいなかった。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
そう言われギシギシと鳴る椅子に座った。
少し待つといい匂いを漂わせながら料理が運ばれ、テーブルには鹿肉のステーキ、スープ、パンが置かれた。
「おいしそー!じゃあいただきます」
「いただきます…」
一日長い距離を歩き、ヘトヘトな私たちは、一言も声を出さず黙々と手を動かした。
そんな感じで食べているといきなりバンと大きな音を立てて食堂の扉がいきなり開いた。
そして若い女性の人が入り私たちの近くへと来た。
その人の顔は酷く焦っていた。
「すいません、今緊急事態です!手伝ってもらえますか!」
ノアはすぐにフォークをおいてその人のもとへ駆け寄った。
「どうしたんですか」
「村の子供の一人が夜になっても帰ってこなくて…今村の人総出で探しているのですが全く見つかる気配がないんです。なのですいません。探すのを手伝ってもらえますか」
「わかりました。もちろん手伝います!」
「ありがとうございます!」
その女性は深々と頭を下げた。
「どんな特徴がありますか?」
「確か前髪にキラキラした流れ星の飾りがついたヘアピンがついているはずです。あ、あとまだ村の西側の方は探している人が少ないので、そちらを探してくれると嬉しいです」
「わかりました!ほらエイバいくよ!」
そうして私たちは松明をもらい、村の西側の森に足を踏み込んだ。
そこは足首くらいまで草が生え、木がまばらに生えていた。
もう日は沈んでいたので、2メートルくらい先は松明の光が届かず、暗闇が広がっていた。
少し歩き進めると、少し開けたところが見え、そこにうずくまっている小さな人影が見えた。
「ノア、あそこに誰かいるみたい」
「探している子かもしれない、急ごう」
私たちは駆け足でそこに向かった。
「君、迷子になっちゃったの?」
ノアはしゃがんでその子の近くに寄る。その子の前髪にはキラキラの流れ星の飾りがついているヘアピンがあった。
「あのね、ちょうちょさんをね追いかけてたら迷子になっちゃったの」
その子は頬を赤らめながらえんえんと泣きじゃくっていた。
「そうか、今度からは気をつけてね。じゃ、みんなのところに帰ろっか」
ノアは男の子をなでて、立たせ、手を繋いだ。
はあ、これで一段落と思いホッとして村に帰ろうとすると、周りの草がざわざわと音を立てた。
「そこの坊っちゃん高そうなヘアピンじゃねえか。俺たちによこしてくんねえか。」
草の中からはみすぼらしい格好をし、大きい斧やこん棒を持った力強そうで荒々しい5人ほどの男たちが周りからあられ、囲まれた。
「絶対にヤダ!だって死んだお姉ちゃんの大切な大切な形見たんだもん!」
男の子は自分の紙にヘアピンを取り、取られまいと手の中でにぎりしめ、しゃがみこんだ。
「まあ、そういうことらしいから盗賊さんたちは帰ったほうがいいよ、じゃ、僕たちは帰るから。じゃあね〜」
そういってノアは男の子の手を引いて強引に前に進もうとした。
私もそれについていこうとする。
「くれないと言うならなあ…」