第六輪
――うっ眩しい
私は太陽の眩しさで目が覚めた。
「おはよう!今日もいい天気だね」
ノアが元気な声で言った。
私は人が通らなそうな裏路地で木箱の上で横になっていた。
ゆっくりと重い体を起こす。
「ここどこ?」
「街の中だよ。まあまあ、落ち着いてこれからある村に出発するよ。」
「なんで?」
「これを見て」
ノアは一枚の紙を渡した。
「『指名手配』
以下のものを殺人で指名手配する
・ ノア・テイラー
・ エイバ・ムーア 」
私は動揺で一瞬めまいがした。
「これはそこら辺にに貼ってあったのを取ったんだけど、多分同じやつが市内全域に貼られているみたいだよ」
――ヤダ、捕まりたくない!
自然と紙を持っていた手は震えていた。
「君、オブセットって知ってる?」
「この市の近くにある検問所をやってる村のこと?」
「そう、あそこはこの市から少し遠いはずだから、情報が来るのが遅いはず。一旦そこに行って、体制を立て直そう」
目的地が決まった私達はひと目につかないようポンチョのフードを深々と被り、秋の風でフードが取れないよう手で抑えながらオブセットへと向かって歩き出した。
街にはところどころに昨日の雨でできた水たまりがあり、朝日を反射して光っている。
市の中を歩いている間、私は人とすれ違うたびに息がつまり、ずっと冷や汗が出ているのがわかった。
そんな調子で歩き続け、数十分経ったくらいで無事に市を抜けることができた。
「エイバやっと街の外だよ」
そんなノアの声を聞いて私は顔を上げた。
そこには爽やかで、青々とした草原が広がっていた。
そして真っ直ぐな道がその草原を貫くように地平線が見えるくらい続いていた。
草一つ一つが暖かいそよ風に吹かれて揺らいでいる。
深呼吸をすると草のぬくもりで体が満たされた。
それを見た瞬間今までにたまりに溜まったストレスが一気に開放された。
私は緊張の糸が解けて、その場に倒れ込んだ。
「大丈夫?一旦ここで休もうか」
ノアは足を止め、後ろを振り向いて心配そうに言った。
「ちょうど僕も疲れちゃったんだよねー」
ノアは口ではそう言ったがこんな状況でも明るい顔で元気のある声で喋っていてまだまだ余力がありそうだった。
――なんでこの人はこんな状況でも小さい子供みたいに元気なのか?
私たちは少し歩いて草原の真ん中で腰をおろした。
雨上がりでムシムシとしていた街とは違い、草原は気持ちいいほどにカラッとしていた。
草が擦れ、サラサラという単調で優しい音が私の睡魔を刺激した。
私はその場で寝てしまった。
「エイバちゃん、なに読んでるの?」
声が聞こえた方を見た。
そこには自分のクラスメイトの女子がちょうど私の横にいた。
「えっと……」
めったに学校では話しかけられないから少し戸惑った。喉からうまく声が出ない。
「これは経済についての本かな」
「へ〜!スゴイね!」
その子は私に興味があるのか、その本に興味があるのかわからなかったがこちらをじっとみていた。
「なにか用?もしかしてこの本貸してほしいの?」
すると彼女はフフッと笑った。
「私あんまり頭良くないからその本貸してもらっても内容一ミリも理解できないよ。」
「じゃあなんで?」
「ただお話がしたかっただけよ」
「起きてもう行くよ」
ノアの声で私は目が覚めた。
その後、私たちはまた村に向かって歩き始めた。
空が紅に染まったくらいになにか建物が見えた。
「オブセット村?」私は向こうに見える建物の集合を指さす。
「そうだよ」
そうして私達は無事に村に着く事ができた。
私たちは最初に村にある宿へ向かった。
こんなところでも宿なんてやってるんだと私は関心していた。
ノアは受付に向かい、手続きをすました。