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第三話

―終わった


私は高々と上げられたナイフを見て、恐怖で反射的に目を閉じた。


しかしいつまでたっても感じるのは雨粒だけだった。


不思議に思い恐る恐る目を開けてみるとナイフを持った男の後ろに赤髪の男がおり、彼がその男のナイフを持っている方の腕を掴んでいるのが見えた。


「あれ、ケイドンさんじゃないですか」


赤髪の男はニッコリと友達に話しかけるようなノリで言った。


「はい、もちろんですよー。この市の警察の中で一番成績の良い班のリーダーで、数々の凶悪犯罪から市民の命を守ったことがある。そのため市民の信用が警察内で一番あり、次期警察トップと言われている人ですよね。そんな方がここで何をやってるんですか?」


「ほのぼのとしたお前には関係ねえよ、邪魔すんな!」


「邪魔とはひどいなーたまたまここを通っただけなのに」


ナイフを持った男の低い声に物怖じせずに笑顔で赤髪の男は言った。


私はこの状況を理解できず、混乱してころんだままその場から動けない。


「うるせえ!」


そんな声と共にナイフを持った男は彼の手を振りほどいた。二人から水しぶきが飛んでいく。


一瞬沈黙が入った。


どんどんと体に当たる雨粒は大きくなり、緊張感を増すように雨音は大きくなっていく。


「お前はクビだ」


そんな声とともにナイフを持った男はポケットから新しく短剣を出し、いきなり赤髪の首もとに向かって襲いかかった。


――危ない!


そう思い私は思わず顔を手で覆い、伏せた。


前ではひたすらにナイフが空を切る音とそれを避ける足音が聞こえた。


私は混乱と恐怖で動くことも考えることもできない。


ただ赤髪の男はこのピンチを切り抜けられる。


そう思うしかなかった。


「うああああああ」


そんな悲鳴が聞こえたあとドサッという音が聞こえた。


その後こちらに向かってくるタッタッタッという足音が聞こえる。その時私の肩が誰かに叩かれた感覚がした。


ゆっくりと顔を上げてみる。そこに居たのは……




赤髪だった。


「こっちが大通りだ早く逃げよう!」


彼はそう言って私の腕を掴み、走った。


後ろを見るとナイフを持っていた男が立ち上がろうとしている。


「ねえ!立ち上がって来てるよ」


「やばいね~じゃ走るスピード上げるか~ついてきてね」


すると彼は更に走るスピードを上げた。それは雨粒が横に見える位のスピードで、彼から離れかけそうだったが、腕を掴まれている私はかろうじてついて行くことができた。


少し走るとそこは大通りだった。


大通りにはいきなりの雨で焦り走って帰る人たちが何十人もいた。


私は助けを求めるために大声を出す。


「誰か助けてください!追われてるんです!」


すると数人が振り向いてくれた。がそれを遮るようにすぐ後ろから声がした。


後ろを見るとさっきまでナイフを持っていた男がさっきとは違う爽やかな声で


「皆さん聞いてください、この二人は人殺しです!皆さん気をつけてください!」


と言った。


私は耳を疑った。こんな暴論があって良いものかと。


周りの人たちは大雨の中でも立ち止まってこの不思議な場面を怪訝単語(けげん)な顔をして見ていた。


その男は話を続けた。


「私はパトロールをしていた最中に私は悲鳴を聞ました。そしてそこへ行くとそこにはこの二人と血を流して倒れている三人の人がいました。なので私は逮捕しようと近づきましたが、コイツらは逃げてしまいました。」


「そんなわけないじゃない!デタラメもいいところよ!あなたは私をナイフで殺そうとしたじゃない!」


私は必死に声を張り上げた。


「じゃあ、あなたのその服についている血はなんですか?あなたが殺したからですよね」



自分の服を改めて見てみた。服にはしっかり赤々した血がべっとりとついていた。


それに対して男の服を見てみると服が変わっていて、返り血一つついていなかった。彼はすべて準備周到だったのだ。



私は一瞬うろたえた。だが、すぐにハッとした。うかつだった。蹴られたときあの死体にしっかりと触ってしまったのだった。


「クッ……」


「ほらぐうの音も出ないじゃないですか。まあ、詳しいことは警察所で聞きますよ。あと……」


すると男は赤髪を指さした。


「あとそこの赤髪の男、あなたは私が彼女を捕まえようとしたときに、あろうことか警察官である私をなぐって妨害し、彼女の逃走の手助けをしましたよね。あなたもついてきてください」


ナイフを持っていた男は自分が正義であるかのように悪びれず淡々と答える。


「そんなの無茶苦茶じゃない!」


私はひっくり返るくらい声を張り上げた。



だが周りの人々は興奮している私と対照的に冷たい目でこちらを見ながらざわついていた。


さっきまで生温かかった雨はどんどんと冷たくなっていく。


相手はどんどんと私たちへと近づいていく。


「これしかないか」


そう言って赤髪の男は背負っていた袋の中から筒のようなものを取り出した。そしてそれを地面に叩きつけた。


すると周りが煙で包まれた。


「裏路地に戻るよ!」


そんな赤髪の男の声をもとに裏路地に逃げ込んだ。

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