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王都のお仕事 前編

「おじさんありがと。これお代ね」


小袋からくしゃくしゃのレニ紙幣を五枚差し出す。


二人で遠のく馬車を見届けると、早速検問所へと入った。

テントでできた検問の中は机すら無く、殺風景にも見えた。


「なんの用で王都へ?」


胸当てを付けた若い兵士が尋ねた。


「コナリアからき、来ました。ギルドで募集を見たので・・・」


「お嬢さんはそんなに気にしなさらないで大丈夫ですよ。問題は―――」

「お隣のお姉さん。あなたはその、出自に問題がありそうですね」


何となく分かってはいたがこれは小銭惜しさで服を買わなかった私の責任だ。


「私―――は、その異国から来ました―――」


「どこの国ですか?」


間髪入れずに出自を聞かれる。

それもそのはずで、私のこの格好(迷彩服)はこの世界では異様だ。


「あ、あ〜っと・・・・・・」


ここは素直に答えることにした。


「実は、気が付いたらそのコナリア村に居て。この子(リル)に実質養われています」


はぁ?と言った顔で見られる。


「上官を読んできます。少し待っていてください」


門番二人を残して、彼はどこかへと行ってしまった・・・・・・



「おっと。この嬢ちゃんがその”怪しい”人物か」

「何とも独特な見てくれだな」


トホホと思いながらも、話は続いた。


「こんな服はナジーランにもないしなぁ・・・・・・」

「良いんじゃないか?通しても」


「で、ですが」


「ナジーランの連中なら、こんな華奢な嬢ちゃんじゃねぇだろうに」


何とも面倒くさそうな雰囲気を漂わせる兵士。それから王都へ入るまでは早かった・・・・・・


▲▲▲


「ここが王都!なかなか栄えているわね」

「早速何とかケーキを食べに行きまし―――」


「お金、無いですよ」


ハッと愕然とした表情で小袋を探る。中にはくしゃくしゃのレニが一枚と銅貨二枚・・・・・・これでは宿にも止まれない。


「リルちゃんはお金、ある?」


「三レニだけ・・・・・・」


既に宿泊代や運賃、移動中の食事の為に簡単かつ少ないクエスト報酬はすり減っていた。

そんなこんなで二人は有無を言わさずギルドの門まで足を向ける―――



▲▲▲



「こんにちはッ!クエストを下さい!」


直球な要求と特徴的な見てくれに引き気味な受付嬢は何とかテンプレートを並べる。


「ほ、他の町から来られた冒険者さんですね。クラスはお幾つですか?」


「黄色です!」


「今だと・・・・・・農村部の警備くらいしか」


なんとも、王都でも変わらない仕事を出されてしまった。


「その、化け物討伐とかは?」


「化け物―――モンスターはだいたい上位クラスの方々で埋まっていまして・・・・・・」


「一件、あるじゃねぇか」


影から髭面の金髪男が間に入る。何とも陽気そうなロン毛金髪日焼け肌の、ビーチが似合いそうなその男はサーフボードと海パンでは無く茶褐色の服に汚れた厳つい鉄の鎧を着て、腰に太めの剣を引っ提げている。


「だ、ダメですよ!彼女方は最低クラスのイエローですよ!?」


「荷物持ちにはなるだろうに」

「死ぬかもしれんが、やるか?報酬も相応払おう」


「で、内容は?」


首をブンブン横に振る受付嬢に目配せし話を聞く。


「要はとてつもねぇ化け物―――いや、亜人二人を討伐する」

「王国直々のご依頼さ」


小袋を手に取り開けて見せる。


「前金として金貨二枚だ。どうだ、やるか?」


「標的の情報は?」


「一人は吸血鬼と獣人の混血女。もう一人はオーガの様な筋骨隆々の狼男だ」

「とにかく素早い。そして魔法でかなり手こずってんだ」


創作物で聞くような単語に興味を示しつつ、リルに向けて首を小さく縦に振る。


「そ、そそ、そんな嫌ですよぉ」


「それほど強い相手なら、勉強には良い機会でしょうね。それに吸血鬼やら獣人やらも見てみたいし」


リルのいつもの首の横振りが見て取れる。

何とか話だけでもと説得するとギルドの隅にある椅子に腰掛けて話を続ける。


「で、姉さん方は強いのか?さっきは荷物持ちとか言ったが、流石に勝ち目が無いのを戦わせるのは気が引けてね」


「まあまあ、かしら?」

「例としてはゴブリン退治をしていた冒険者二人を一人で倒せるくらいかしら」


「なるほどな」


「わ、わわ私は、強くないですがバックアップは・・・」


「居るなら、バックアップも必要だな。もう一度聞くがやるか?」


「決まり」と指を弾く。


「やるわ。ただ、条件として私はこの子、リルちゃんは絶対に死なせない」

「倒せなくてもリルちゃんの生死を優先するってのでも良い?」


「構わんさ」と言うと男は手を差し出す。


「俺は、ベリマーナ。一応王国御用達の冒険者―――って奴だ」


「私はミア。異国の地で軍人をしていたわ。下っ端だけどね」


手を取り、握手を交わす。

―――こうして、王都初の仕事が決まった―――



◆◆◆



翌朝、私達は前金を使って安宿に泊まり、指定された呑み屋へ向かった。


「酒はやめとけよ。これから仕事だ」


「分かってますよ兄貴」


べリマーナと会話を交わす陽気そうな大柄の坊主頭の男―――

私とリルは彼らの向かいの席に着くと早速本題に入るよう促す。


「標的は、斥候に出た部下が見つけたんだが北東部にある山中の―――ここ」

「古い小屋が立っていてな。そこに隠れてんだ」


「成程、ね。交戦するのはその二人だけよね?」


「ああ」っと応えると、ベリマーナは雑嚢から人束の粉を取り出し、机の上に置いてみせる。


「これは、被弾した仲間の右腕・・・だった物だ」

「そしてコレが粉にしやがったダガー」


刃の全体が赤茶色に錆びた古い両刃の刃物。不思議な事に左右に飛び出た鍔だけは黒々とした紫を輝かせている。


「ひっ、ここ、これって闇魔法の加護がついてますよね!?」


「なんなの?その加護って」


「魔法の特性を物や人に付与するんです。こ、このダガーにかかった加護が人の腕を粉々に、したんです」


「その通り」そう言うとベリマーナは粉を片付け、ダガーを仕舞う。

こんなものが刺されば、死なずとも致命的は不可避だ・・・・・・


「吸血鬼ってのは元々夜に動き朝に眠る。だが、混血の影響もあるだろうが何とか昼夜を逆転させて昼間に行動している」

「そこで俺たちは夕暮れ時―――吸血ハーフの獣人女がヘトヘトで眠りにつく直前の時間帯に攻撃を仕掛ける」


「って事は・・・・・・八時間後かしら?」


「いいや、連中の行動パターンだと十六時―――六時間後だ」

「眠気まなこで帰ってきた所を仕留めなきゃならん」


「そんじゃ兄貴、作戦を練りましょうぜ」


▲▲▲


「・・・・・・よし、これでいいな」


標的の拠点に移動した私達は、夕焼けへと移りつつある太陽を背に林の中で隠れていた。


Mk3手榴弾をポーチに仕込む。


「その質素で変な模様の鎧は役に立つのか?」


「ええ、破片も矢も受け止めてくれる」


一人の合図を知り、全員が無言になる。もうすぐ標的が現れるのだ―――


「―――きたっ―――」


まるきり狼を人型にしたような生物と、獣耳と尻尾を携えた色白の女―――

あれが標的の二人組だ。


「三数えたら攻撃ッ」


三、二、一・・・・・・


「行けぇーー!!」


一斉に林から飛び出し、手榴弾を目標めがけ投げつける。


五秒で爆発するMk3―――

ドンと鳴り響き破裂。


「弓撃てぇ!!」


二人が弓を放ち矢が標的に突き刺さる。

だが怯むどころか自ら矢を引き抜くと牙を剥き出しにしながら咆哮・・・・・・


「た、盾構えろ!!」


一斉に横に並んだ盾が弓使いの前を守らんと立ち塞がる。


「ガガァルァ!!!」


「来るぞー!!」


ガシャンと衝突すると、何とか狼男を抑える事が出来た―――

右端の男が崩れ落ちる。

頭部は砂となり地面にちらばっていた。


「いっ、一瞬空いた隙間をッ」

「リル、ミア!吸血鬼を抑えてくれ。そのうちにオオカミ野郎を殺る!」


ベリマーナの指示に、リルは足止めの為の魔法を唱え始めていた―――



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