④ 現代の高校生がいる場所。
今回は現代が舞台です。
ムゥ『女子高生、正義!!』
今回は心が和むものを……。
『今日は快晴なり~なのです!』
ムゥちゃんたちは青空の下をふわふわと飛んでいきます。
まだまだ【おひとつ、どうぞ】を求めて、ムゥちゃんは時間も世界も飛び越えてますが、それは悪魔の能力としてスルーしておきましょう。
『わっ! ここは大きい建物が多いのです!』
次にたどり着いた場所はたくさんのビルが並ぶ大きな街。
道路には車や人たちが行き交っています。
『これは……! 噂に聞く“コンクリートジャングル”ってやつですね! 都会人はみんな忙しいという!』
どこの噂で聞いたのでしょうね。
『フッフッフッ、都会の寂しい心にそっと忍び寄っていく…………なんて悪魔らしい行動! ムゥのしもべを増やすチャンスです!』
何故か妙にテンションが高くなっておりますが…………そんな忙しい現代の都会で【おひとつ、どうぞ】ができるのでしょうか。
『悪魔の腕の見せ所ですよ! ムゥにメロメロにしてやります!』
ちっちゃい腕をペテペテと動かし、ムゥちゃんは【おひとつ、どうぞ】ができそうな人を捜します。
『ターゲットは可愛い女の子が良いです! ムゥは男の子なので女の子にモテたいのです!』
どこの世界に行っても男子の欲は変わらないですね。
「ムキュ! ミキュキュ♪『あ、良さそうな子たちを発見! 突撃してみるのですよ♪』」
ムゥちゃんが発見したのは三人の若者。
三人とも制服を着ているので学生さんのようです。女の子二人に男の子一人のグループですね。
「ムキュウ~~♪『こんにちは~♪』」
「…………弥生くん、あれ……何だろう?」
「何だろうね……?」
「え!? 何、あの生き物!? 可愛い~~っ♡」
「ゆかりも見えてるの?」
「見える見える!! 何あれ!!」
「じゃあ、ちゃんと生きてる物だね」
「あはは! なんか、悪魔っぽ~い♡」
本当の悪魔ですが、三人とも怖くはないみたいです。
・~・~・~・~・~・~・~・~
「ムキュウ♡『お嬢さんたち【おひとつ、どうぞ】です♡』」
「わぁ、ハートのカード? えっと……【おひとつ、どうぞ】か……こっちも何かあげれば良いのかな?」
「じゃあ、この“花”は? みんなで沢山買ったし、おばあちゃんのは残りでも充分に多いよ」
「良いの?」
「うん」
男の子が持っていたキレイな花束を差し出します。
「この中から【おひとつ、どうぞ】。これだけあれば、好きな花もあるんじゃないかな?」
「ミュウ~♡『キレイです♡』」
「僕はけっこうチューリップが好きだな」
「私は……こっちの花が好きかな? 派手じゃないけどホッとするし……」
黒髪の女の子は“ピンクの花”がオススメみたいですね。
「ムキュ♡『お姉さんにお似合いですよ♡』」
たくさんのお花は心が和みます。
「ミキュミキュ!『いい男は花の価値がわかるのです!』」
お花は大事に扱いましょう。
・~・~・~・~・~・~・~・~
「この子可愛いねぇ。あ、他にあげるのがあった! ねぇ、ゆかり。私たちが作ったカップケーキ、いっぱいあるから少しこの子たちにあげてもいい?」
女の子が持っている大きなビニール袋には、たくさんの“手作りカップケーキ”が入っていました。
「えっ、このことはお手製のカップケーキを!? みつる兄のお見舞いだけど……いいの?」
「良いの良いの。お兄ちゃんにはちょっとあればいいし…………ダメ?」
黒髪の女の子に小首を傾げられて、もう一人の女の子は苦笑い。
「う~ん、まぁ……たくさんあるし……良いけど。その前に袋からのいい匂いを堪能させてください……」
「ふふ。ゆかりにも、またたくさん作ってあげるね」
「約束だぞぉ…………あ! それじゃ、カップケーキとこの子、一緒に写真撮っていーい?」
茶髪の女の子は女子高生の必須アイテムを構えています。
「えへへ~、このカップケーキはことはが作ったけど、デコレーションはアタシがやったんだよぉ。すごいでしょ~!!」
「ムキュム~!『盛り盛りですね~!』」
「写真撮るならこれくらいしないと!」
どうやら『映え』という文化のようです。
「よーし! いくよ~【おひとつ、どうぞ】!」
「ミキュッ!」
パシャリ。
「はい。じゃあ、ケーキはあげるよ♡ 悪魔ちゃんもかわいく撮れたね!」
「ムキュ!『可愛い正義!』」
出来映えにムゥちゃんもご満悦の様子。
・~・~・~・~・~・~・~・~
お花とカップケーキをもらって、ムゥちゃんはお礼にハートのカードとふれあいサービスタイム中。
「キュキュ~!『女の子に可愛がられて幸せなのです!』」
可愛いものが大好きな女子高生。
ちやほやされるのが大好きな仔悪魔。
お互いに幸せなのは良いことです。
「か~わい~い~♡ あ~あ~、こんな子を家で飼ってみたいな~♡」
「ゆかりの家、マンションだから飼えないもんねぇ。うちは犬がいるから一緒には無理かなぁ?」
「二人とも飼いたいの?」
「飼いたい♡」
「うん、飼ったら楽しそ………………あ!」
急に、黒髪の女の子がムゥちゃんを見て顔を曇らせました。
「あの…………弥生くん……?」
「ん? あぁ…………そうだね。これは……」
男の子がひょいっと、浮かぶムゥちゃんを抱いて道の端に寄りました。
「ミキュ?『何?』」
「え~と、ちょっと動かないでね? みんなも危ないからこっち来て」
「う、うん!」
「あ……はいはい!」
「ミ?」
何故か三人とも神妙な顔で道の端でびったりと動きません。
「ムムキュ…………『どうかした…………』」
ブゥウウウウウウウウンッ!
「大変だーーーっ!! ドローンが故障して暴走したぞっ!!」
ビユンッ!! と、目の前を大きな機械が猛スピードで飛んでいきました。
「ミキュ……『わ、危ないのです……』」
「「「……………………」」」
あんなのがぶつかったら、ムゥちゃんたちはひとたまりもありませんでした。当たらなくて良かったですね。
「……もう、いいね」
「うん、大丈夫」
男の子と黒髪の女の子が、ホッとした様子で頷き合っています。
「悪魔ちゃん、ラッキーだったねぇ。この二人と一緒にいたんだもの♪」
「ミュッ???『ラッキー???』」
茶髪の女の子がニコニコとしています。
何かわかりませんが、良いことがあったようですね。
・~・~・~・~・~・~・~・~
「悪魔ちゃん、バイバーイ!」
「またねー」
「気をつけてね」
「ムキュウウ!『バイバイなのですー!』」
高校生たちに別れを告げて、ムゥちゃんは再び飛びます。
『さ、次は何が待っていますかね!』
まだまだ楽しみはあるようです。
お読みいただき、ありがとうございます!
お花を大事にできる人。人間性ってそういうところだと思う。
※補足
今回のキャラ。出てきた順に、弥生誠一、柏木琴葉、平安紫。
『暗闇の眼は陽の下で開く』
https://ncode.syosetu.com/n4868fs/
弥生誠一主人公。ホラージャンル注意。
『暗闇の眼は陽の下に開く~夜明け前を知る人よ~』
https://ncode.syosetu.com/n1318gd/
柏木琴葉ヒロイン。ヒューマンドラマ。
現代が舞台のミステリー。琴葉メインの方が読みやすいかも。
弥生くんは黙ってフラグを折っていきます。ことはちゃんが頭上をじっと見てきたら注意? ゆかりちゃんは一般人。
次回『色々巡って……』です。
そろそろ【おひとつ、どうぞ】も終わりに近付いて……?