③ 和風?な場所。
ムゥちゃんさらに加速!
ムゥ『知らない場所でも張り切っていきますよ! 仔悪魔に人見知りはありません!』
今回も食べ物ネタ?
出てくる人たち多め。
『ミッキュッキュ~、ミッキュッキュ~!』
さらなる【おひとつ、どうぞ】のために、ムゥちゃんはちょっと遠くへお出掛けしました。夕飯までには帰る予定です。
ご機嫌で飛んで来た場所は、ムゥちゃんがよくわからない町でした。
解りやすく言うと、和風と中華風を足して二で割ったような石や瓦の建物が多いでしょうか。歩いている人たちも何となく着物が多い気がします。
ムゥちゃんは着物とかわかりませんけどね。
『ふむふむ、変わった町並みの世界に来たのです! 言葉は紙に書いて伝えましょう!』
悪魔なので人間の言葉は話せません。
この世界の人にも解るように、魔法の紙に書いて自動で翻訳するシステムにしました。これくらいのご都合主義は許してもらいましょう。
『あ! なんか、可愛い女の子たちの集団がいます! さっそく突撃なのです!! 【おひとつ、どうぞ】~!!』
・~・~・~・~・~・~・~・~
「ん? 何だ、この生き物?」
「まん丸ねぇ……何かしら?」
「何だろうねぇ?」
「おっ、近寄ってきたぞ!」
早速、ムゥちゃんは銀髪の女の子に突撃していますね。
「ミキュキュキュ~~~!!『ヘイ! お嬢さんたち! ムゥからの【おひとつ、どうぞ】ですよ~!!』」
ムゥちゃんが飛んでいった先には旅人風の三人の人物。
それぞれ、銀髪、茶髪、黒髪の女性でしょうか?
「あ、この子……なんかぷにぷにしてる………………ぷにぷに……」
「角と羽が生えてるけど……妖獣? 小鬼? ケイラン、あんまり触らない方が………………」
「ぷにぷにしてる…………可愛い…………」
「アタシも! アタシも抱っこしていーい?」
数分間、撫でたり触ったりのサービスタイム。
「ムキュウ~!『お姉さんは大歓迎なのです!』」
「「きゃ~~~~っ♡」」
「盛り上がってるけど、これ…………何の生き物だろうね?」
黒髪の人は警戒気味ですが、銀髪と茶髪の女の子二人はムゥちゃんの魅惑のボディにメロメロです。悪魔としては、これはもう勝ったも同然ですね。
「ミキュッ!!『お嬢さんたち、こちらをどうぞなのです!!』」
「……え? このキレイな紙をくれるの?」
「紙に何か書いてあるね」
「何々……【おひとつ、どうぞ】? ああ、もしかして物々交換? 何かあったかしら……?」
どうやら意味は通じたようです。
・~・~・~・~・~・~・~・~
最初にムゥちゃんを抱っこしていた銀髪のお姉さんが、何やら重箱を取り出しています。
「そうだな……これなら、おやつにちょうど良いから食べられるかな? はい、どうぞ」
ちょっと大きめな桃色のお餅を、ようじに刺してムゥちゃんの前に出してくれました。
「ミキュッ! ミュウウウ~♡『これは“ア~ン”ですか! お姉さん、見掛けによらず大胆なのです♡』」
パクリ! と、ムゥちゃんはお菓子をそのままいただきます。
「…………ようじごと受け取ってほしいのだけど」
「ムキュッ!『美味しいのです!』」
「“すあま”、口に合ったみたいだな。じゃあ、他の人も【おひとつ、どうぞ】…………あ! ようじごと持っていってくれ!」
「キュウウウ?『お姉さん照れ屋ですね?』」
皆さま、“ア~ン”ではありませんのでご注意を。
・~・~・~・~・~・~・~・~
「キュキュキュ~~!『“すあま”美味しいです~!』」
「わぁ……こんなに小さいのに、たくさん食べてる……ふふ、もっと食べていいぞ」
「ちょっと、あげすぎは良くないわよ! じゃあ、アタシは“これ”にしようかしら?」
今度は茶髪を三つ編みにしたお姉さんが、何かの飲み物を竹でできたコップに注いでいます。
「はい、これ。飲んだらスッキリするわよ!」
普通の“お茶”のようですが………………
「ブキャンッ!! ムギャウウウ~!!『ぶはっ!! なんか、おもいっきり苦いのです~!!』」
「胃腸を整える“漢方のお茶”よ。飲んだら身体に良いやつ!」
「ギュッギュッ! …………ムキュウ……?『ゴホッゴホッ! …………苦いですが、飲んだらまたお腹が空いてくるような……?』」
良薬口に苦し…………ですね!
・~・~・~・~・~・~・~・~
「う~ん……僕からは何をあげようかな?」
最後は黒髪の美人さんです。
「ミュウ~……ムキュ!『この人、お姉さんでしょうか? 美人はお姉さんですよね! ムゥはお姉さんが好きです!』」
「………………………………」
「ムキュ…………『何でしょう……なんか抗議的な視線を感じます……』」
むぎゅううううう~~~っ。
「ムキュウウウウッ!?『ぎゃああああ~ひっぱらないでっ!?』」
「あっはっはっ。伸びる伸びる♪」
「ムギュ!? ムキュッミキュッ!!『この人、男の人ですか!? この容赦の無さは絶対男なのです!!』」
悪魔語は通じてなかったはず……?
どうやら、色々と間違えてはいけない人だったようです。
「じゃあ僕からは“魔除けの札”をあげる。好きな札を【おひとつ、どうぞ】♪」
「………………キュキュウ……『なぜかカードから禍々しい感じがするです……』」
「はい、どうぞ♪(笑顔)」
「ギュウゥ……『なんか、笑顔に圧があるのです……』」
黒髪のお兄さんからは御守り(?)をもらいました。
・~・~・~・~・~・~・~・~
【おひとつ、どうぞ】をして、三人と別れたムゥちゃんは一休み。
「キュウ~……?『ふぅ、そろそろ別の所に行きましょうかね……?』……………………ミキュッ!?」
移動しようかと思った時、急に体を掴まれて持ち上げられてしまいました。
「キュキュッ!?『え、なんですかっ!?』」
「…………………………これ小鬼……でやすかね?」
ムゥちゃんの目の前にいたのは真っ黒い服の人物。
全く気配もなく、見えているのはにんまりと笑う口元だけで、はっきり言って怪しい人みたいです。
「ミ、ミキュ……?『ど、どちら様……?』」
「…………………………まんじゅう……」
「ッッッ!?『――――まんじゅうにされる!?』」
「…………“饅頭”食べやすか?」
「ミ?『へ?』」
「……【おひとつ、どうぞ】でさぁ」
「ミキュッミキュキュ!『あ、普通にこのお饅頭、美味しいのです!』」
「……もっと食べやすか?」
「ムキュッ! ムキュウミキュッ!『ハイ、食べやす! この人、普通に良いお兄ちゃんですね!』」
食べ物をくれる人は、ムゥちゃんの中ではみんな良い人です。
※この後、ムゥちゃんのお腹を無言でぷにぷにと触って、黒いお兄さんは帰っていきました。
・~・~・~・~・~・~・~・~
「ねぇねぇ、可愛い小鬼ちゃ~ん?」
「ミキュ?『はい?』」
黒いお兄さんがいなくなってすぐ、物陰からムゥちゃんを呼ぶ声が…………
「お楽しみだね。ボクも、い・れ・て♡」
「キュキュキュ!『セクシーなお姉さんがあらわれたのです!』」
現れたのは、なんともセクシーなボクっこのお姉さま。子供にはちょっと目の毒のような気もします。
「わぁ、綺麗な紙ね。じゃあ、ボクからはこれをあげるね♪」
「……ムキュ?『……“棒つきの飴”?』」
「ふふふ……他の人も【おひとつ、どうぞ】。ちゃあんと食べてね♪」
細い棒の先には、水飴にくるまれた木の実のようなものが。
「…………中身はアンズ……かなぁ」
「ミ?『――――アンズってこんなだっけ?』」
アンズにしては固そうな……?
「ミキュウ~?…………キュ?『本当に食べて良いのかな~? …………あれ?』」
ムゥちゃんが飴に気を取られている間に、セクシーなお姉さんはどこにもいません。
「ミーミーキュー?『おねーさーん? いないのー?』
呼び掛けてもいないので、帰ってしまったようですね。
・~・~・~・~・~・~・~・~
不思議な町での【おひとつ、どうぞ】を終えて、ムゥちゃんはもらったものを整頓しておりました。
『たくさんもらったのですよ~♪ これは“すあま”、“お茶”に“お饅頭”………………』
――――ちゅどぉんっ!!
『ッッッ!? なにごとですか!! 爆発!?』
突然、背後で大きな爆発が!!
『…………あぁ!! なぜか“魔除けのカード”と“アンズ飴”が真っ黒の粉々にっ!?』
何が爆発したのかはわかりませんが、もらったカードと飴はブスブスと黒い煙を上げていました。
『う~ん……魔除けのわりには危ない目にあったのです。アンズ飴ももったいなかったですが…………しょうがないのです!』
怪我がなくて何よりですね。
『よし! 気を取り直して出発するのです!! みんな、行くですよ!』
まだまだ【おひとつ、どうぞ】の旅は続きます。
お読みいただき、ありがとうございます!
動物には食べ物をあげるのが基本?
※補足
今回のキャラ。出てきた順に、ケイラン、コウリン、ルゥク、ホムラ、ゴウラ。
『不死<しなず>の黙示録』
https://ncode.syosetu.com/n5193ez/
中華と和風の足して二で割ったような世界観が特徴。暗めのお話ですが、異世界恋愛ジャンルのファンタジー。一応、恋愛ジャンルらしくイチャイチャしている人たちはいます。
ルゥクの札はよく爆発していますが、それはちゃんと『魔除け』が働いたということです(笑)
次回『現代の高校生がいる場所』
一番、話が通りやすそうな感じ?