2話 警察ごっこ
「とうとうHRで話題になるほど大事になったね」
夕方、学校からの帰宅途中の2人の少年。
「捜査の方は進展なしか」
太田陽介と月条透は、登校時と同じように2人肩を並べて下校していた。
「全然。もっと早く犯人にたどり着けると思ったんだけどなあ」
「陽介の眼でダメなら、大人しく警察に任せた方がいいと思うんだが」
捜査、そう言われたように、陽介は単独でーつまり勝手にー野良猫殺傷事件の犯人を探している。
「そこで今日は犯人を先回りして、犯行現場を抑えようと思うんだ」
「先回りって、いつどこで次の事件が起こるかわかるのかよ」
自信ありげにプランを話す陽介に至極真っ当な疑問をぶつける透。
「犯人に繋がる証拠や手掛かりは掴めなかったけど、犯行場所や時刻のパターンがおおよそ見当がついたんだ」
「なるほどな。それでも予測して先回りできるほどに場所や時間を絞り込むのは大変じゃないのか」
「そうなんだよ。おおよその予想では中々難しい。そこで」
「断る」
「まだ何もいってないんだけど」
何かを提案しようと満面の笑みで話す陽介。幼馴染としての付き合いがそうさせるのか、話の続きを聞くまでもなく答える透。
「手伝ってくれ、だろ」
「御名答。頼むよ、透」
寮の掌を合わせ、お願いのポーズを取る陽介。目鼻立ちの整った彼がするそのポーズは、それだけで女性を動かすほどのものであったが、透には関係ないらしい。
「勘弁してくれ。今日は読みたい本があるんだ」
「そこを何とか。お願い!」
「断る」
「お願い!」
「断る」
‥
「はぁ。何でこんなことに」
日も落ちて外はすっかりと暗くなった。そんな中、街外れの薄暗い雑木林を歩く怪しげな男が1人。
「おい陽介、本当に先回りできてるんだろうな」
ぶつくさと文句を垂れながら、ポケットに手を突っ込んで歩く透。
『いやあ、手伝ってくれて本当に助かるよ』
耳につけたイヤホンから陽介が話しかけてくる。
「まったく、そこそこ巡回したら帰るからな」
『うん。それまではよろしく頼むよ』
やれやれ、とため息をつきながら、のしのしと雑木林を歩く透。枯葉や小枝が散らばっている上を歩いているのだが、彼の足音は異様に小さい。
結局、陽介に根負けする形で今日の『捜査』に協力している透。
どこか気怠げな雰囲気を醸し出しながら、しっかりとした足取りで、かつ静かにしなやかに、見る人が見れば洗練されているとわかる身のこなしで雑木林を歩いていく。
30分ほど時間が経過した頃。
「ん?」
透は落ち葉に紛れて落ちている謎の物体を発見した。その物体の正体を確かめるべく、近づいていく透。そして、
「聞こえるか、陽介」
『あいよ。聞こえてるよ』
足元を見下ろしながら、耳のイヤホンに手をやり連絡を入れる。すぐに相手からの返事があった。
「猫の死体を発見した」