閑話 女神業は天職でした
愛の女神さまプロデュースのメガネっ娘は大人気となっていた。
睨み癖が仇となってボッチで過ごしていた彼女は最初は銀縁メガネへの好奇心から声をかけられはじめ、次第にその心優しい人柄から多くの友人を得たのだった。
もちろん男どもも初見のメガネっ娘にハスハスしていたのだが、それまで邪険にしていた負い目もあり、さらに彼女が婚約者と大恋愛中であることを知って遠巻きにするしかなかった。
そして自分の恋人に装着させようと銀縁伊達メガネを件の職人に発注する同好の士どもが。
愛の女神さまは「メガネっ娘ブームキター!」とほくそ笑んでいたのだった。
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シャルロットは王太子からの逃亡生活が終わってからは悠々自適に女神ライフを送ることにした。
どうせ世間に波紋しかよばない存在なのだから前向きにいこうということで、
美女狩り…じゃなかった、磨くべき原石を探すのだ。
休憩時間には使徒マリエルをお供に学園中を歩き回る。
愛の女神の通り道には女子が自然と並ぶ。
お声がけいただく名誉に与ろうとしているのだ。
「貴女はなぜ笑わないの?」
日向のような髪色の青い目の可愛い系。
いつもムッツリ黙りこんだような表情でいる典型的なモブだがシャルロットは知っていた。
校庭の野良猫が欠伸をしたのを見て思わず微笑んだ笑顔が最高に可愛いかったのを。
「なぜと言われましても…」
「貴女は笑うと可愛いエクボが出来るでしょう?もったいないわ。」
驚くモブ。
「なぜそれを!」
「たまたまよ。たまたま見た笑顔が可愛いかった。それだけ。
でも知っておきなさい。可愛いは正義。
それを隠すのは悪なの。」
「エクボが可愛いなんて…醜いって、言われたので…」
「え、誰に?」
「義弟です。」
「まあ!ほほほほ、それって嫉妬よ。他の男に見せたくないのね。
幼稚な独占欲だわ。真に受けてはダメなの。」
「貴女は可愛い。可愛いは正義。さあ笑って。」
「ありがとうございます!」
元モブが跪いて祈りだしたのを周囲が感動に包まれて見ていた。
「ほら、貴女もそんな窮屈な服を着ないの。」
近くにいた黒髪に泣きぼくろの妖艶美女系にタゲを移した。
「大きなお胸が苦しいでしょう?
大方、婚約者にでも「そのみっともない身体を晒すな」とか言われたのではなくて?」
「な、なぜそれを?」
「同じなのよ。幼稚な独占欲。本音と真逆なことを言っちゃうバカな男は多いわ。
鵜呑みにしないで。
他の男から隠したくなる気持ちは理解するけど、それに甘んじて隷属なんかしちゃダメよ。
自分の魅力を自ら隠さないの。もったいないわ。せっかく神に与えられたのだからね。」
「皆さんも勘違いしてはダメよ?
男に自分の価値を決めさせないで。自分で決めるのよ。
自分のために美しくおなりなさい。よろしくて?
女は男の言葉で生かされているのではないわ。
淑女たるもの気高くあれ!」
ちょっと熱が入り過ぎたようだがイイ女がイイ女のままあって欲しいとの願いは本物だ。
マリエルが泣きながら高速で御言葉をノートに書きつけているのを見て頃合いかと思う。
いいタイミングで周囲の皆が我慢出来ずに跪き祈りを捧げはじめたので、休憩時間の探索行を再開することにしよう。




