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かかった獲物

入学して3ヶ月が過ぎた頃、マリエルの小冊子は全校生徒数を上回る部数が出回るようになっていた。

熱狂的な信徒が必ず普段使い用と保存用として2部要求するからである。

これも青春…か?まあいいや。

マリエルは最初から印刷所に依頼しているので何部出ようが困ることはない。

予算はクロエ経由でたんまり頂いている。

女神さまからも買い食いくらいしてもいいのよと天上の笑顔付きでお言葉を頂いて身悶えたものだ。

すっかり使徒業が板についてきて、もう王太子いいかな〜なんて思い始めたらかかりましたよ獲物がね。

3年生の騎士団長の息子の某に呼び出されて連れて行かれた学内の王族専用サロン。

いや、某も攻略対象者ではあったが女神からの御神託によって改心し清められた心にはもはやモブと変わらずですよ。ごめんねごめんねー

サロンのでっかいソファに愛しのディオン王太子殿下がおひとりでデーンと鎮座ましましていました。


「君がマリエル・ルロワ嬢かな?」

「はい、王太子殿下。ルロワ男爵家長女マリエルでございます。」


一応は失礼にならない程度の簡素なご挨拶。

ゲームの攻略だと最初から馴れ馴れしくするのだが、女神と接しているうちにあざとい誘惑に嫌悪を覚えるようになった。

ダメならダメでいいや。

自分の素が求められないなら恋愛とは言わないでしょ。

その先のお話を小首を傾げて待つ。

これは素の癖。私は素でも可愛いんだよ。女神に愛された自分に自信がある。

若干お顔を赤らめながら続きを話出す殿下。


「簡素な書籍のようなものを毎週発行して配布していると聞いてね。

面白い試みだと思って話してみたかったんだ。」

「コレのことでございますね。」


常に持ち歩いている最新号を殿下にお渡しする。


「ほう、よく出来ているね。これを毎週新たに作っているのかな?」

「はい、殿下。手書きした原稿を毎週、清書屋に取りに来てもらい清書後、それを印刷所が取り決めた部数印刷して私の元へ届けられます。」

「ああ成る程。そういう体制を作っているから安定して毎週欠かさず新たな書籍が発行出来ると。いや、素晴らしいね!」


たぶん殿下はシャルロット様への繋ぎを依頼するつもりだったんだと思うけど、小冊子の制作過程にすっかり夢中になってしまわれたようだ。

作業効率化について幾つか意見を求められたので適当に思いつきを話したらえらく感心され、また後日呼び出すのでよろしく頼むと言われたのちに解放された。

そういえば俺様な態度とは裏腹に性格はいたって真面目な人だった。

そんなところが好き。大好き。TSの女神さまありがとう。


「ぃよっしゃー!」


マリエルは寮へ戻ってから隣室に聞こえない程度の声量で雄叫びをあげたのだった。

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