プロローグ
わたしは…(俺は…)
ハッ!夢…
よかった(良かった)
いや、よくないです!(良くない!)
なんですかこれは?(なんだこれは?)
だれかが(誰なんだ?)
…
…
…
天蓋付きベッドの中で目覚めた3才の女児。
夢で得たあまりにも異質な知識…記憶に混乱したまま起き上がれずにいる。
知らない世界の知らない人の人生が生々しく蘇る。
「これが転生か…」
幼女の人格が変わったわけではない。
もとから大人びた子どもだった。
しかし…
「思い出しちゃったもんはしょーがねーな。」
嘆息しつつベッドを降りて姿見の前に立つ。
「うわ、ヤバッ!美人すぎだろ、いくらなんでも!
まだ3才だぜ、コイツ。
どうりで目にする使用人に男がいないわけだ。
公爵さまも危惧されてんだな。」
輝く豊かなプラチナブロンドの髪にペイルブルーの大きな瞳が憂いを帯びて揺れている。
吸いつくような一点の曇りのない白磁の肌。
ピンクに色づく小さな唇が艶めいていて幼女に不釣り合いな妖艶な空気を醸していた。
(うわあ、俺そんな趣味ないのに勃っ…いや、今は付いてないしコイツは俺だし)
「TS転生とか最悪!美人の公爵家令嬢なんて悪役令嬢のテンプレかよ!」
頭を抱えて蹲ってはいるが、乙女ゲームなんかやったことはない。
せいぜいラノベをいくつか読んだくらいのにわか知識では破滅回避なんて無理ゲーだった。
「ってか、この美貌が激ヤバすぎる!これでは傾国の美女じゃねーか。
ハッ!そっちの破滅回避のが重要じゃね?!
婚約も結婚もダメ絶対。男との恋愛もムリ!イケメンとか要らんねん。マジで。
いや、そもそも男に抱かれるとか考えただけでもゾッとする。
王子との婚約断固拒否!
はあ…公爵さまにとりいるか…」