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ポールダンス

 ──同じフロアの別室に入る。


 ゆったりしたハウスミュージック。

 中に入ると確かにスタジオだった。

 正しくはイベントスペースなのかな?


 スタジオの中央には金属のポールが立てられている。

 上部に、Tシャツ&スパッツ姿の幼女。

 ポールを掴んで体を床と水平に伸ばしながら大股を広げている。

 ポールダンスショーか。


 ポールと幼女の周囲を囲む様に観客達。

 きっちりと整列し、正座で上体を乗り出しながら中央を観ている。

 言っちゃ悪いが、まるで養豚場だ。


 よくこんな態勢で止まれるものだ。

 体も柔らかい。

 まるで中国雑伎団を思い起こさせる。。

 元は大道芸から発達したんだっけな。

 「芸」と呼ぶだけあって、まさしくこれは芸術だと思う。


 ポールダンスには「扇情的」とか「下品」との批判もなされている。

 批判する側の気持ちもわからなくもない。

 でも、そんなこと言い出したら新体操とかフィギュアスケートだって同じだろう。

 一体何人もの選手の股間が盗撮され、雑誌や動画サイトに投稿されているか。


 スポーツ萌えと変態の境界は、見る者によるのではなかろうか。

 つまり卑しい豚が見ればいやらしくなるのだ。

 もちろん俺は豚ではないので問題ない。


 後ろからツンツンとスーツが引っ張られる感覚。

 いけない、つい見とれてしまっていた。


「おともだちはあそこだよ~」


 りかちゃんの指さす先には卑しい豚――もといブロンド輝く外国人男性がいた。

 周囲と同じく正座したまま上体を乗りだし、ブヒブヒと鳴くがごとく観戦している。

 せっかくの狼を思わせる外見がすっかり台無し。


 歩いていってパシンと頭を叩く。


「ジョージ、何をやっている」


「Hellow,Mr.AMAGI.It’s late 5 minutes」


 振り返ったジョージは妙にドヤ顔。

 きっちり時間を把握してやがった。

 だけど英語で何を言われたって聞こえないね。


「ここは日本だ、日本語で話せ。俺が英語話せないのは知ってるだろう」


「ハッハー、アマーギ。いつものアメリカンジョークじゃないか」


 相変わらず陽気な奴だ。

 ジョージに限らず日本にいる世界各国の諜報員はみんな日本語がペラペラ。

 だから英語が話せない俺でも仕事が勤まる。


「まったく。時間に遅れた俺も悪いけど、大の大人が恥ずかしいと思わないのか」


 大の大人どころではない。

 CIAの採用基準は学歴アイビーリーグでIQ一三〇以上。

 こいつもハーバード大学卒でその例に洩れない。


「ポールダンスはいずれオリンピックの正式種目にもなろうかという立派なスポーツだ。その素晴らしい演技に見とれるのがどうして恥ずかしい」


 ジョージがポールで踊る幼女もどきに視線を戻す。


「その台詞を吐くなら、一点を食い入る様な目つきはやめろ!」


 視線で射貫いてるのは間違いなく幼女もどきの股間。

 邪悪なポイズンハーブの生えてない聖なる丘でも想像してるのだろう。


 幼女は突っ張っていた体をポールに戻してしがみついた様な格好になる。

 そのままするすると下りると、腰をくねらせながら股間をポールに擦りつける様なアクションをとりはじめた。


 ジョージが涎を垂らしながら、四つん這いで前方へずり寄っていく。

 あまりに目立つのでスーツの背を掴んで制止する。


「だからやめろってば」


「こうやってじっくりと人間観察するのもスパイの仕事さ。もし彼女が敵国のスパイだったらどうするつもりだ」 


 そんなわけないから。

 それ以前に人前で「スパイ」なんて単語を使うスパイはいないよ。

 少しはスパイとしての自覚を持て。


「ほら、行くぞ」 


「待ってくれ。今いいところなんだから」


 その台詞が出る時点でスポーツを観戦してるヤツの態度じゃない。


「腰をくねらせる幼女なんていないから」


「うっかり未知の快感に気づいてしまったかもしれないだろう」


 ああ言えばこう言う。

 イラっとしてきた。


「だからそんな幼女もいねえ!」


「沸点低いなあ」


「どこでそんな日本語覚えた! さっさと仕事するぞ!」


 ジョージの襟首を掴んで、スタジオから無理矢理引きずり出す。


 仕事とはいえ何が悲しくてこんなヤツとこんな店で……。


 もし国民にばれれば「税金で幼女喫茶なんてふざけるな!」と叩かれるのだろう。

 でも、そんなこと言うなら俺と代わってくれ!

 今すぐ喜んで代わるから!


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