おしまい
刑事と警官達が俺達を取り囲んだ。
しかしまゆちゃんは平然と首を傾げる。
「強制わいせつ罪って何の事ですの?」
「そこの嫌がるお客さんの下半身に手を突っ込んだだろう」
刑事が目を向けてきた。
こくこくと頷いて返す。
しかしまゆちゃんは軽い拳を口にあて、くすっと笑う。
「お兄様とは自由恋愛してただけですわ。ちょっと行き違ってしまっただけで」
再び刑事が目を向けてきた。
ふるふると首を振って返す。
「とにかく同行してもらおうか」
「生活安全課にしょっぴかれることなんてしてませんわ。密室での自由恋愛ですからソープランドと同じ。下半身に手を突っ込むどころか、お兄様の分身を私の中に迎え入れても文句言われる筋合いありませんの」
刑事がニヤリと笑った。
「あいにくだが、私は警視庁外事課の者だ」
ええっ!
「なんですって!」
警視庁外事課は敵国のスパイを焙り出して摘発する仕事。
言ってみれば同業であり仲間だ。
「『露利まゆ』こと『林真由』。お前が某国の息がかかった『みみかきようじょ』の工作員として水面下で暗躍していたのは掴んでいる。洗いざらい吐いてもらうぞ」
「ど、ど、どういうこと?」
声に出してしまった。
「アマギ、騙してゴメン」
ジョージ! そしてのじゃーさん!
のじゃーさんが刑事に向けてフイッと顎を外に向けた。
手錠を掛けられたまゆちゃんが連れられて行く。
「※○△×※※※△×!」
鬼のような形相をして母国語で喚いている。
本当の素はこっちか。
「わしから説明しよう。実はCIAと警察で仕組んだ罠だったんじゃよ。みみかきようじょ、引いては背後にいる敵国を摘発するためのな」
「はあ?」
「みみかきようじょが目障りだったのは本当。そこで潰すべく、ジョージに命じて同店へ行かせて嘘をばらまかせた。警察庁キャリアの若きエースがおにすきに出入りしてるとな。そうやって、まゆを誘き寄せた。摘発すべく警察とも話をつけての」
「ふんふん」
「しかしまゆの魅力は尋常じゃなく、並の男なら逆に篭絡されてしまう危険があった。そこで雨木に白羽の矢を立てて本日店に呼んだ。報告書を読ませてみみかきようじょの存在を教え、わしがさらに情報を加えたわけじゃ。事前に警戒してもらうために、後で混乱せんためにな」
「ふんふん。で、どうして俺?」
「『童貞は好きな女に捧げる』のがポリシーなんじゃろ? ただですら非ロリなのに、会ったばかりのまゆを好きになるなんてありえまい」
「ジョージ! 何をペラペラと他人のことを喋ってる!」
「ゴメン、でも仕方ないよ。のじゃーさんはボクの上司だもん」
「はああ?」
のじゃーさんが自らを指さす。
「わしもCIA。日本人でなく日系アメリカ人。おにすきはCIA日本アジトの一つ」
「はああああああ?」
「わしの趣味なのは本当じゃけどの。こう見えてもお偉いさんの身じゃから好きにやらせてもらっとる」
「はあ……」
さすがは五三歳。
「と、ところで雨木……」
な、な、なんだ?
のじゃーさんがスパッツの前で手を組み、急にもじもじし始めた。
「わ、わ、わ、わ、わしなんかどうかの? 初めての相手に」
「はあああああああああああああああ!?」
「もちろん無理矢理じゃなく。わしに惚れた上で」
いかにも恥ずかしそうに顔を背けるな!
「なんで自分の母親より年上の女に惚れないといけない!」
「どういうことじゃ? わしはまだ二八歳、ジョージと同じ年齢じゃぞ?」
なにいい!
「五三万歳で惜しいって言ったじゃないか! だから五三歳って!」
「その駄菓子屋みたいな数え方はなんじゃ。五+三で八じゃから惜しいと」
「わかるか! だいたいジョージと同じ年齢で上司でお偉いさんってなんなんだよ!」
ジョージの顔が暗くなった。
諦めたように頭を抱えて、のじゃーさんに手の平を向ける。
「この人、本物のギフテッド。一三歳で大学卒業したときには既にアメリカ医学会で権威と呼ばれてたほどの医学者だよ……」
「ぶっ!」
「そしてボクにトラウマを植え付けた張本人……」
「はいいいいいいい!」
じゃあ、ジョージの童貞奪った同級生って。
のじゃーさんが照れくさそうに頭をかく。
「いやぁ、若気のいたりって怖いのう。ははは」
「若気のいたりですますな! のじゃーさんは俺にまでトラウマ植え付けるつもりか!」
それにジョージと兄弟なんてなりたくねえ!
「つれないのう。純な童貞相手なら幸せな一時を楽しめると思ったのに」
口をとがらせ拗ねてみせてるけど。
もはやマッドサイエンティストの台詞にしか聞こえねえ。
ジョージが封筒を差し出してきた。
「今日渡すつもりだった本当の情報。みみかきようじょは摘発しちゃったから、さっきの情報ファイル持ち帰っても意味ないだろ?」
「おお、助かる!」
ざっと目を通す。
みみかきようじょより、もっと高度な敵国のスパイ工作活動について記されている。
「これ、いいの?」
「囮になってくれたバイト代とでも思ってくれ」
役所帰ったらすぐにまとめないと。
今日は残業だな。
「ありがとよ」
「いいってことよ。その代わりクリスマスまでにサンタのコスチュームを用意してくれ」
「本気でプレゼント配りに行く気かよ!」
のじゃーさんが口を挟んできた。
「小学生にプレゼントが嫌なら、妙齢のわしにプレゼントしてくれ」
「プレゼントくらいいいけど、何を?」
「雨木の童貞」
「まだ言ってるのかよ!」
のじゃーさんの目元に、まゆちゃんの比較にもならないどす黒い影が差した。
ただですら悪い目つきがさらに鋭くなる。
「くれるならジョージはわしが止めてやる。くれないなら当日は警察にチクる」
ああっ! もう!
俺のクリスマスは不幸しか待ってないのかよ!
これって何の罰ゲームだよっ!
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