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エイジ・オブ・リヴァイアサン ~仮想世界の海戦録~  作者: NM級
【第一章 六月十五日の遭遇戦】
7/8

船団護衛 ※戦闘ルール掲載

説明多め+末尾でルールを再度まとめる形になります。

 チアキとの戦闘に臨む前に、MK38は取り巻きの二人に指示を出す。


「一応チグサは見張っていろよ。まあ、ここまで来て逃げる女ではないとは思うが」


 この時になってチアキは初めて、チグサと呼ばれた彼女――MK38達に狙われている女性――の姿アバターを注視した。


 壁際に立つ彼女は、白色の士官服に身を包み、長い黒髪をポニーテールにして制帽から垂らしている。年格好はチアキ達と同じぐらいだろう。

 そして今は顔を上げ、その表情を伺う事もできた。男装の麗人と言った第一印象に反して、両目をぱちくりとさせ、当惑を隠せない様子だった。


 無理もない反応だろう、どこの馬の骨かも知れない人間が、詳しい事情も知らずに首を突っ込んできたのだ。彼女はこれまで、MK38達を相手にしていないとはいえ、切断して逃げるような事はせず、未だにここに留まっている。何か理由があるはずだが、チアキはそれすら知らないのだ。


「「……!」」


 直後に二人の目が合うが、すぐさま彼女の方が気まずそうに目を逸す。そして殆ど感情を読み取れないまま、取り巻きが間に割り込んだ事で、彼女の姿はチアキから覆い隠される。

 この際に二人を知り合いだと思ったのだろう、男女の仲に関連した下世話な質問が取り巻きの一人から聞こえたりもしたが、チアキは雑念を排除し、再びMK38に向き合った。


「さて、レギュレーションだが、そこまで時間を掛ける気にもならないからな、公式戦の軽いヤツで行こうと思う」


 準備の無いまま決まった二人の戦闘は、まずは野良試合の流れに則り、レギュレーションを決める所から始まった。


「戦闘ルールは『船団護衛』の『両船団交錯』、マップは中部地中海、『艦隊規模』は中、『CPU戦力』は最低。これでどうだろうか」


 一つずつ説明すると、野良試合などで採用される戦闘ルールは主に三つ存在する。シンプルに艦隊戦を行う「艦隊決戦」、陸上部隊の輸送や上陸戦がキーとなる「拠点争奪」、そしてMK38が提示した「船団護衛」である。

 これは船団を護衛する側と攻撃する側に分かれる形式と、お互いに自らの船団を護衛しつつ、敵船団を攻撃する形式の二つがあるが、「両船団交錯」は後者という事になる。


 「艦隊規模」は文字通りプレイヤーが操作可能な艦隊の規模を示す指標で、隻数並びに各艦艇に設定された「編成コスト」の合計値からなる。

 そして「CPU戦力」は、上記の細かい操作が可能な艦艇とは別に、CPU操作限定で実装されている兵器もあり、具体的には陸上機や潜水艦、魚雷艇など小型艦艇が該当するが、それらの使用可能な規模を表す。


「それで大丈夫ですけど、さっき言ってた米戦艦の優位性とやらを証明するには、『艦隊決戦』ルールで直接戦った方が手っ取り早くないですか」


「……フン、殴り合いだけが戦艦の役割と思っているのなら心外だ。現実的な戦場での優位性、って奴を思い知らせてやろうじゃないか」


 了承ついでの質問を軽く受け流すと、MK38は使用艦の年代や種類など、より詳しい部分を固めていく。


「他も公式戦に則るとして、一応説明はするが、艦艇の年代は第二次大戦期まで、使用艦種は空母と水上機母艦が禁止、『就役艦』『未成艦』『設計案』すべて使用可、改装は就役艦が『史実改装』のみ、それ以外は『想定改装』あり」


 本ゲームにおける艦艇は、建造や就役年代による分類、戦艦や巡洋艦と言った艦種による分類に加えてもう一つ、「就役艦」「未成艦」「設計案」という三つに分類されている。

 「就役艦」は文字通り実際に完成し就役した艦なのに対して、「未成艦」は建造自体はされていたか、もしくは建造可能な状態まで計画が進んでいたが、(予定されていた姿で)完成には至らなかった艦。そして「設計案」は計画段階で不採用になったり、そもそも建造可能な状態まで計画が進まなかった艦が該当する。

 また艦によっては性能を大きく左右する改装の有無については、今回は就役艦では「史実改装」、つまり艦艇年代である二次大戦期までに実際に行われた物のみ、一方で未成艦や設計案はそれ以前の艦が多く、計画時そのままの姿では不利な面が予想される為、「想定改装」として同海軍の近い艦が受けた改装をベースにした内容が適用可能となる。


 乱暴にまとめると、今回使用可能になるのは、二次大戦期(1945年8月)までに就役もしくは建造される計画のあった、空母と水上機母艦以外の艦で、改装は就役した艦は第二次大戦時までの実際の姿、それ以外はその頃に保有されていた場合を想定した姿で使用可能という設定である。


 再度確認を取るMK38。今回は特に言い返す事もなく、チアキも同意する。


「で、そちらから何か提案はあるかな」


「いえ特に。十分です」


 これ以上の会話は気を取られるだけ、後はとにかく戦うだけだと、チアキは艦隊の編成へと進んでいく。


(空母なしでマップは中部地中海、それにCPU戦力最低ってことは……。「現実的な戦場」なんて言いつつも、戦艦の殴り合いが鍵になるな)


 レギュレーションでは空母等の禁止に加え、陸上機を含むCPU戦力も少なく設定されている。つまり予想されるのは水上戦であり、その場合戦艦の有無が大きな差を生む事は明白である。

 もちろん戦艦運用には、他の水上戦闘艦よりも重い編成コストを消費する必要があるが、今回の艦隊規模は複数隻の編成が可能な物で、むしろ小型艦のみの編成では、隻数上限内で編成コストを使い切る事が出来ないという、殆ど戦艦必須といって良い設定である。

 

 一方でルール的には、勝敗はあくまでも船団の護衛と攻撃の成果で決まる。いくら水上戦で戦艦が重要と言っても、全体の数を必要する場面も予想される。

 そうなると、コストの重い戦艦は一隻のみに留め、残りを巡洋艦や駆逐艦で固めた、バランスのとれた艦隊編成が基本になるだろう。


(戦艦は心情的にはネルソン級だけれど、最善は尽くしたい。やっぱり高速艦が欲しいし、就役艦以外も使えるなら、アレが出せるか)


 チアキは上記の基本に則り、手持ちの中から中核となる戦艦一隻を決めた後、さらに十数隻からなる艦隊を編成していく。


 一通り準備を終えた彼は、再び周囲を見渡した。

 野次馬の中にはロトの姿があった。ライトの元へ行くよう頼んでいたが、この戦いを見届けるつもりのようだ。そもそも自分自身が今ここに居るのも、彼の言う事を何度も破った結果なのだから仕方ない、そう思い別の方を向くと、今はチグサの姿も見えた。だが今度は俯いていて、再び表情を読み取る事は出来なかった。

 そうしているとMK38 も編成を終え、ついに準備は整った。


「さて、そろそろ準備は出来たかな。こちらは始めても問題ないぞ」


「どうぞお構いなく」


「それじゃあ、また戦場で。戦闘開始だ」


 戦闘開始を承認すると、チアキの目が映していた交流スペースの光景は一瞬にして消失する。そして次の瞬間には、戦場となる海原が広がっていた。






◇ 戦闘レギュレーションまとめ ◇


ルール:船団護衛(両船団交錯)

マップ:中部地中海 150海里(約280km)四方

制限時間:48時間(※ゲーム内時間、実際は数十分)

艦隊規模:中(編成コスト合計30以下、隻数15以下)

艦艇年代:第二次大戦期まで

艦種:空母、水上機母艦除外。就役艦、未成艦、設計案全種使用可能

改装:就役艦は史実改装、未成艦と設計案は想定改装可

CPU戦力:最低


ルールの概要

両プレイヤーは自身の艦隊に加えて、10隻の輸送船からなる輸送船団を指揮。これを敵艦隊から守りつつ、事前に定められた目標ポイントから離脱させる事を目指す。


勝利条件

・相手の輸送船10隻全てを、離脱前に撃沈もしくは航行不能にしたプレイヤーは、その時点で勝利する

・戦闘は制限時間に達した時点、もしくは両プレイヤーの輸送船全てが海域を離脱するか撃沈されるか航行不能になるなどで、離脱可能な輸送船が一隻も存在しない状態になった時点で終了し、勝敗は判定で決定される

・判定では獲得した戦果ポイントが多いプレイヤーが勝利する

・戦果ポイントは、離脱に成功した輸送船の数と敵艦艇に与えた損害に応じて獲得できる。輸送船は1隻につき6ポイントの最大60ポイント、敵艦艇は各艦の編成コストと同じ値、つまり最大で30ポイントを獲得可能

(仮に敵艦隊が無傷、自艦隊が全滅という状態でも、こちらの船団が全隻離脱に成功し敵船団で離脱したのが4隻のみの場合、戦果ポイントは60対54で判定勝ちとなる。と言う風に、判定では敵艦隊の撃破よりも船団の離脱に比重が置かれる)



艦隊編成:チアキ

主力艦1、巡洋艦4、駆逐艦8 計13隻


前衛部隊

ダイドー級巡洋艦「アルゴノート」

L級駆逐艦「ルックアウト」、M級駆逐艦「ミーティア」、O級駆逐艦「オンスロー」、S級駆逐艦「ソーマレス」


主力部隊

英1921年条約型戦艦案F3「コリンウッド」

ダイドー級巡洋艦「ユーライアラス」、クラウン・コロニー級巡洋艦「トリニダード」、利根型巡洋艦「利根」


護衛部隊

キャノン級護衛駆逐艦「アザートン」、松型駆逐艦「松」、「竹」、「桜」



艦隊編成:MK38

不明



今回もご覧頂きありがとうございます。

相変わらず言い訳が書ききれない作品ですが、投げ出さずに続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

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