登場艦艇紹介 その1
申し訳ないですが本話は色々と行き詰まった結果として、設定の一部を公開する場所になります。ストーリーと直接の関係はないので、別に読み飛ばしてもらっても構いません。
また話数が増せば掲載位置の変更や分離も行うかもしれせん。
コリンウッド級巡洋戦艦(1921年英条約型戦艦案F3)
艦種:主力艦(巡洋戦艦)
分類:設計案
就役年代:戦間期
状態:第二次大戦時中期を想定した仮想改装版(※印は改装により変更されたか、不明部分を作者が補完した箇所を示す)
全長:225.5m
幅:32.3m
基準排水量:35,000t
機関※:海軍本部式三胴重油専焼ボイラー 12基、ブラウン=カーチス式ギアードタービン4基
最大出力(SHP):96,000馬力
速力:28.5ノット
航続距離:7,000海里(16ノット時)
武装
42口径381mm三連装砲 3基
50口径152mm連装砲 4基
40口径120mm単装高角砲 6基※
39口径40mm八連装機関砲 6基※
70口径20mm単装機銃 20基※
622mm単装魚雷発射管 2基
電子兵装※
捜索レーダー:281型(対空)、273型(水上)、271型(水上予備)
射撃レーダー:284型(主砲水上)、285型(高角砲)、282型(機関砲)、283型(主砲、副砲対空)
その他:逆探、91型(電波妨害)、HF/DF(短波無線方向探知)など
装甲
垂直装甲:305mm(18度傾斜)
水平装甲※:弾薬庫172mm、機関部108mm
主砲塔※:前盾406mm、側面254mm、天蓋178mm、バーベット356mm
司令塔:305mm
航空兵装※:カタパルト1基 水上機2機
解説
本級のモデルとなったのは、1921年11月にイギリス海軍が作成した巡洋戦艦案「F3」である。
同年同月に開催されたワシントン会議では、新規建造される主力艦を「基準排水量3万5千トン以内」に制限する事が有力視されていた(実際に主砲口径16インチ以内という内容と共に、来年の条約で正式に規定される)。これにより会議前に計画していた「G3」級巡洋戦艦の建造が絶望的となった英海軍は、上記制限に基づく新型艦の計画を開始、その中で作成された案の一つが「F3」である。
つまり簡単に言えば、最終的にネルソン級として完成する戦艦の不採用案である。
(以下の内容はネルソン級との比較など、同級を知っている前提の内容が多いのはご了承頂きたい)
本級もネルソン級と同じく、主砲三基の集中配置や集中防御の徹底、六角柱の密閉式塔型艦橋など、これまでの戦艦には見られなかった、先進的(かつ一部独特)な設計を経て生まれた艦である。
最大の違いは、ネルソンが日米の16インチ砲艦に負けない火力、ユトランド海戦後の遠距離戦闘に対応した防御力の二点を重視し、結果として23ノットの中低速艦となったのに対して、本級は速力を重視した点である。最大速力は28.5ノットと、第二次大戦時でもやや高速の部類に入る。
一方で同等の排水量に収めるために、主砲は一回り小さい15インチ砲9門に過ぎず、副砲も二基少ない8門。防御面でも主に垂直装甲を中心に装甲厚を削減されて、速力の代償としている。
それ以外に外見上の違いも幾つかあり、まず前部に集中された主砲三基は、第三砲塔と第二砲塔が背負い配置になる、最上型の前部主砲のような形を採用。またネルソンより全長が長く主砲塔が小型である事から、艦橋は船体の真ん中に近い位置に寄っており、副砲塔はその両舷に置かれる。そして機関配置の違い(ネルソンはタービンの後ろにボイラーを置く独特な配置なのに対して、本級はボイラーが前に来る常識的な物)から、艦橋のすぐ後ろに太い煙突がある点も特徴である。
戦艦としての性能的な面だと、やはり直接的な戦闘力では主砲と装甲に勝るネルソンよりは格が下がるが、高速力により、対戦艦以外での対応力で勝ると言った所だろう。
また格が下がるとは言え、主砲15インチ砲は信頼性の面では英16インチ砲より優れた傑作砲であり、砲架と砲弾さえ最新の物へ対応すれば、後の時代でも通用する事は証明されている。加えて防御面でも、G3までに導入された強烈な傾斜を持つ舷側装甲と、非常に分厚い水平装甲や砲塔天蓋を組み合わせた、ポスト・ユトランド型の極致とも言える装甲配置が健在である。これは多少装甲厚を減じても、大改装前の長門型やコロラド級相手なら確実に上回る防御力を有している。
一方ネルソン級で悪評として付きまとった、主砲爆風の影響や艦橋の視界不良などは、本級でも欠点となるだろう。また艦橋と煙突の近さから、ネルソン級よりも排煙の干渉が多い事も予想される。そういった部分にも注意を払う必要があるが、全体的な能力としては攻防速を兼ね備えた非常に有力な高速戦艦と言えるだろう。
また本作では、第二次大戦中を想定した姿として、1942、43年までのネルソン級に準じた改装状態が登場する。
その内容は機関や装甲配置などにも手を加える大改装とは言えない物で、また英戦艦らしく魚雷発射管すら撤去していないレベルだが、それでもレーダー類の設置や対空能力の強化、航空機の搭載など、第二次大戦の戦場で求められる役割への適応を図った強化がなされた。
なお航空艤装については、史実ではロドニーのみが第三砲塔の上にカタパルトを乗せる形で搭載していたが、本級では比較的余裕のある艦尾に置かれたと想定。爆風を心配しなくても良い位置である為、運用プラットホームとしてはこちらの方が勝るものと思われる。
この時代の戦艦としては、射撃指揮装置に一部最新の物に比べると古い部分が存在するが、攻防走と言った基本的な能力は、キングジョージ五世級やノースカロライナ級など本級より後も登場する条約型戦艦と比べても大きく劣るものではない。設計年代を考慮すれば非常に優秀と言える。
その上で欠点としては、主砲以外の火砲は片舷で副砲4門、高角砲3門に過ぎず、またボフォース40mm機関砲のような有効な中距離対空火器が存在しないなど、副兵装の対空、対水上能力は改装後もやや弱体な点が挙げられるだろう。
最後に、ネルソン級の没案である本級だが、ゲーム内では区別の為に「コリンウッド」並びに「ダンカン」というオリジナルの艦名が与えられている。
それぞれトラファルガーの海戦で一番槍を務め、ネルソン亡き後には艦隊の指揮を執ったコリンウッド提督、1797年のキャンパーダウンの海戦に勝利したダンカン提督という、英海軍の提督名を由来とする。戦艦の艦名としては、1880年代のアドミラル級装甲艦、1900年前後のダンカン級戦艦にて使用されるも、どちらもネルソン級が登場する前に退役している事から、同艦種内での名前被りを避ける意味で採用された。
(なお戦艦以外では、コリンウッドは陸上施設として、ダンカンは30年代のD級駆逐艦から戦後の14型フリゲート、そして最新のデアリング級の艦名として、両者とも今日まで使用されている)
今回もご覧頂きありがとうございます。以降もネタ切れがひどい場合、このような設定を投下する方針です。ですが次話については、ちゃんと話を進められればと思います。
毎度の事ですが、気になる点などあれば、感想や指摘を頂ければ幸いです。