83 結婚式
俺達は、常世のワダツミ宮に来ていた。
今回は自分達で常世の門をワダツミ宮の前に開いた。
先ずは、蘭の母、豊玉姫に結婚の許しを乞う。
「蘭と結婚させてください」
「…喜んで…娘と…幸せに…なって…下さい」
相変わらずの蘭の母だ。
結婚の許可を得るときですら、可愛い。
「ほぉ~、そなたが孫の蘭姫か」
閻魔大王かと思うような、でっかい爺さんが出てきた。
「ワダツミ様よ」
小声で母さんが教えてくれる。
ワダツミ様といえば、海の神さまの親玉、そして蘭の爺さんだ。
「お初にお目にかかります、おじい様。こちらが我が夫となる大和命です」
と蘭もさすがに、かしこまって挨拶をしている。
「カッカッカ! スクナビコナの入れ知恵で、龍を釣ったらしいの、どうだったあれは、よう引いたろ」
「引いたなんてもんじゃ無かったです」
「カッカッカ! アレは釣り応えがあるでのう。これからはワシの孫でもあることになる、どうじゃ、ワシと一緒に釣りに行かんか」
「えっ、何処で何を釣るんですか?」
「実はのう、もう少しすると、海の神さまサミットというのがあるんじゃ、ポセイドンやらネプチューンやら、方々の海神が集まって親交を深めて雑談するんじゃが、お前と蘭も今回は、新米の海神として参加してはどうかと思うておる。釣りし放題じゃぞ」
「いや、まだ何も分かりませんけど」
「大丈夫じゃ、お前らは聞いておれば良い、今回は、カナロアが主催での、葦原で言う、パプアニューギニアとかでやるらしい」
「パプアニューギニアですか! パプアンバスとかバラマンディとか、GTとか釣れますよね」
「良く知っておるの、是非行こう! 一緒に行こう!」
「釣りならば、私も行きたいぞ」
「カッカッカ、蘭姫も釣るか!」
「ならば、新婚旅行代わりに連れて行ってもらうか」
「カッカッカ、ならばヨシ! オーイ、膳を持って参れ、宴じゃ、我が孫の結婚式じゃ」
こうして、俺と蘭の結婚式がワダツミ宮で行われ、俺と蘭は晴れて夫婦となった。結婚指輪は神石を指輪の形にしたものに、お互いの名前を刻印した。
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愛吹と叔父さん叔母さんは、このまま常世に残ることになり、俺と蘭だけが葦原に帰る。
戻ったのは、俺の家の居間だった。俺達は、このままここで住むつもりで、愛吹も義父、義母も居なくなった我が家だが、でも、蘭がいる。
「やっと二人きりになれたぞ」
抱きついてくる蘭。
ピンポーン。と狙ったかのように鳴る玄関のチャイム。
スミス君だった。
「カル様が会いたいとおっしゃっています。一緒に来ていただけますか」
なかなか、二人きりには、させてもらえないようだ。
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「すまないね、急に来てもらって。今日は私の遺言を聞いてもらいたと思ってね」
「何を言ってるんだ、ばーちゃん。まだまだ長生きしてもらわないと」
「ははは、まだ死にはしないさ、でも、どうしても聞いてもらいたい願いがあるんだよ」
カルばーちゃんの遺言とは、こうだった。
沖中島を時奴開発で買ったらしい。ここに、俺達の母、瀬織津姫と豊玉姫を主祭にした神宮を建てることにしたらしい。そして、俺、蘭、愛吹、アマビエも一緒に祭られるのだとか。
その裏、丁度あの窪地に、俺達の新居を建てるので、葦原にいる間は使って欲しいとのこと。
後はビジネスの話になるのだが、あのホテルも壊して新築を幾つか建て、リゾートとして開発するそうだ。
メインに神水を使った、スパをはじめとする、一大美容リゾートアイランドとして生まれ変わるらしい。また恋愛成就、豊漁祈願の神として俺達を海の神さまとして祭らせて欲しいとのこと。
俺達には、神水の供給で協力して欲しいと。
なんだか砕石とお化けの島は、若い女性で溢れかえる島になりそうだ。
「どうする。蘭?」
「あなたが良ければ、私は何処までもついて行くわ」
新妻に初めてあなたと呼ばれ、照れる俺であった。




