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8 アオリイカ

 オモリグを水中に浸けて、リールを解放する。餌木が真っ直ぐに近い状態で水中に沈んで行く。

 四十メートル、五十メートル・・着底。

 竿を大きく振り上げてしゃくる。

 餌木が底で跳ね上がったはず。

 ゆっくりと、竿を下げる。

 こうすることで、餌木に付いた錘の重さで自然に餌木がその本来のアクションでフォールするはずだ。


 イカがいるなら、大急ぎで近くに来たはず。俺はそうイメージしながら、もう一度大きくしゃくる。

 きっと奴は、ジッと観ている。

 触腕を伸ばそうとしている。

 再び、しゃくる。

 そして、フォール。

 !!!

 キター!

 ロッドティップが微かにお辞儀した、間髪を入れずに素早く強く竿を振り上げてフッキング。


 チーーー

 イカ用に緩めていたリールのドラグが引き出される。

 三十メートルほど走ったところで、やっと止まった。

 ラインを張り、リールをサミングし大きく竿を振るって追い合わせ。

 大きなイカは、足のグリップ力だけで掴んでいて、鍼がかりしていない事が多いからだ。

 念を入れてもう一度、追い合わせ。


 リールのカウンターは百メートル弱まで出されていた。

 ゆっくりイカの重みを感じながら巻き始める。

 六十メートルまで巻いたところで、またドラグが出される。そしてまた巻き取る。

 やっと水面下に獲物が見えてきた。

「デカぁ〜!」

 二いや、三キロあるかも知れない。

 アオリイカっぽい、もうこの際アオリイカとしておこう、虹色に光る神魚。

 ジェット噴射で、イカが水面下でバックする。


 ブシュっっ!

 やられた! 網を入れようとしたところで、イカに思いっきり墨を吹きかけられた。

「嗚呼…デッキが墨だらけになっちゃった。」

 網で引き上げる。

 重い。

 ブシュー、ブシュー。

 イカは、まだ墨を吐いていたが、程なく魔石に変わった。


「アレ?」

 イカが消えたら、墨も消えるのだと思っていた。

「墨は、消えねぇのかよ〜!」


 海のど真ん中で、俺はデッキブラシでデッキを磨いていた。

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