72 ウザ龍
「すみません」
龍はしょんぼりしている。
「お前は、雄なのか雌なのか?」
「私は女の子です」
「何が出来る?」
「何でも食べれます」
「はぁ~?」
「だから、何でも食べれます」
「ただの大食いか?」
「いや、ゴミでも人でも魔物でも、自分でも」
「ウロボロスの蛇かぁ…自分は食べなくてもいい」
そうか、スクナビコナ様が言ったのは、こいつに意思霊を食わせろと言うことか。
「食ったものは、どうなるのだ?」
「私に消化されて、永遠に閉じ込められます」
「例えば、さっき蘭が飛ばした斬撃も食えるのか?」
「はい、追いつけれれば食べれます」
「やってみろ。蘭頼む」
蘭が斬撃を龍から離して、三発撃つ。
龍は空を駆けて器用に食べた。ほんとだ。
「これ楽しいですね。しかも美味しい」
「神力だからな。言うことを聞いたらもっと食べさせてやろう」
「はい、ご主人さまぁ」
次は愛吹が、ビーチボール大の神力玉を作った。
「よし、これを取ってこい」
神力で飛ばす。龍はそれを追っていき、パクっと食べた。
「ばかー! 誰が食べていいと言った。取って来いと言ったんだ」
俺が神力で龍を撃つ。
パンパンパン
「あう! あう! あう!」
龍は命令を勘違いして怒られたのでしょんぼりしている。
次はアマビエだ。直径三メートルはあろうかという馬鹿でかい神力玉を作った。
「これを食えるかのう?」
龍は自分の半分以上もあるサイズの神力玉を一飲みで食べた。
「あれが食えるのか!」
「よーし、いい子だ」
龍は尻尾を振って、嬉しそうにしている。
「ほんとに、何でも食べるなぁ~」
蘭が船べりから手を出して「お手!」と言った。
龍は何をして良いのかわからず、困っている。
「お手と言われたら、その前の手を出された手にチョンとするんだぞ」
龍は恐る恐る蘭の手に、チョンとお手をした。
「よーし、よし。えらいぞ!!」
誉められて、龍は嬉しそうだ。
「じゃ、おかわり! おかわりと言われたら、今度は反対の手だ」
龍は、反対の手でおかわりをした。
「よーし、よし。食べてよし」
蘭は、斬撃を飛ばす。龍は喜んで尻尾を振りながら、斬撃を追って食べた。
今度は愛吹が、ビーチボール大の神力玉を浮かべている。
「おあずけと言われたら、よしと言われるまで食べちゃだめなのよ。おあずけ」
龍は鼻先に、神力玉をくっつけて食べるのを辛抱している。
「かしこいねぇ~」
愛吹は龍の頭を撫でてやっている。龍は嬉しそうだ、尻尾をバンバン振っている。
「じゃぁねぇ、よし・もと〇喜劇!」
龍は、食べかけて「よし」ではないと気づき、慌てて横を向いて空噛みした。カポンっといい音がする。
「えらい、えらい~!」
「じゃぁ、よし!」
ハグンっと龍は大急ぎで食べた。
出てきたときは、ウザかったが、ちゃんと言うことを聞くので、みんな段々と可愛くなってきた。
沢山、神力玉や斬撃を食べているので、実体化も長持ちしているのか、結構な時間、龍玉に戻らずにいる。
「名前をつけてやったらどうだろうか?」
蘭の提案である。そうだな。
「じゃ、マルキュウ」
「なんで?」
「バクバク食うから、釣り餌メーカーから頂いた」
「うん、可愛いんじゃない?」
「じゃ、お前は今日からマルキュウだ」
「ま・る・きゅ・う」
龍は、名前をつけてもらえて、ちょっと嬉しそうだ。
「丸い玉から出てきた、究極の力。我が名はマルキュウ!」
ドヤ顔のマルキュウ。自分で登場シーンの台詞を考えたようだ。
「やっぱり、うざっ!」
「ハウス!」
「ハウスと言われたら、玉の中に帰るのよ」
マルキュウは、しょんぼりして玉に帰って行った。




