7 オモリグ
「別にそんな特別な力が欲しいとは、思っていなかったんだけどなぁ〜」
「じゃろうな。今のそなたには必要のない力じゃろうな」
「なんで俺にそんな力をくれたんだよ?」
「力を与えたいと思ったのではなく、釣らせてやりたいと思ったから、ちょっと常世の国の海と繋いでみたのじゃが、そなたが思いの外早くに力に気づいて使い始めたのでの、我も面白くなってしばらく様子を見ることにしたのじゃ」
「面白半分かよ! バカ神様じゃないのか?」
「バカ神様!」
アマビエは、目をキラつかせている。
間違いない、コイツは罵られて喜ぶヘンタイ神様だ。
最初出てきた時とは、随分キャラが変わってきたぞ〜。
「まっ、そういう事じゃから、常世の国の海は、そなた限定でしか開かぬ。周りの者にもそなたが神魚を釣っておるのは見えぬ。その力で何が出来るかは、そなた自身で考えてみよ。では、また会おうぞ。」
そう言い終わると、アマビエは海に飛び込んで消えて行った。
神魚かぁ〜
神力ねぇ〜
アマビエと会話をした事で、訳も分からずに釣っていた神魚やハンドパワーの理由も分かった。
俺にしか出来ない釣りだということも分かった。
しかし、この神力を何に使えば良いのか? ヒーローや、勇者なんて悪の組織も魔王も目の前にいない状況では、需要も無い。
治癒力を使って、按摩屋やエステでも始めたら、儲かるかも知れない。
絵に描いて持ってるだけで疫病が避けるって、すごい事を言ってたなぁ〜
何に使うのかは、まだ分からないがこのまま帰るとアマビエに怒られそうなので、もう少し釣りを続けることにする。
「そうだ、イカなんかも釣れるのかなぁ〜?」
船倉をゴソゴソと探ってみる。
「あったあった。」
オモリグ仕掛けと餌木。
ティップランという選択肢もあったが、水深六十メートルともなると、流石にオモリグの方が手返しが良さそうだ。
タイラバロッドのリーダーにオモリグ用の三俣サルカンを結び、錘をセットし、一メートルほどリーダーを取って先に餌木を付ける。
これで、一度底まで落とし、シャクって餌木を沈降させを繰り返しながら、イカのタナを探る。