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66 京都

「すまないな。京都にまで押しかけて」

「うううん、丁度休みの日だし、何かあったの?」

「そうだな。大変なことがあって、まだこれから大変なことになる」

「何よ、それ、大スペクタル映画のコピーみたいな」

 ははは、と俺は笑って暮羽に返す。彼女の職場の近くの嵐山で彼女と待ち合わせして渡月橋から嵯峨野に向かって歩いている。

 真夏の京都は暑い。お盆を過ぎたというのに、まだ蝉時雨が聞こえ、今年の暑さは衰える気配がない。


「暮羽だから正直に言うよ」

「うん」

「俺と愛吹は神さまの子供だったんだ」

「えっ…! それは、どういうリアクションすればいいのかなぁ~?」

「いや、真面目な話しなんだ。暮羽と会えるのも多分これが最後になるんじゃないかと思う」

「…」


 俺は暮羽に、ヤサカニノマガタマ事件以降を詳しく話した。常世のこと、意思霊のこと、それを退治することが、知らずに世話になっていた人の願いでもあり自分達の成人の儀でもあること。そして成人の儀が終わると本当の神になって、多分暮羽からは見えなくなってしまうこと。


「うーん、また眩暈がしてきたわ」

「大丈夫か?」

「いえ病気じゃなく、本当に大スペクタクルな話しだったから、理解がついていけなくて」

 竹林の中を吹く夏風で笹の葉がザワザワとそよぐ。比較的涼しいこの竹林のベンチに座って、暮羽は長い俺の話を今まで黙って聞いてくれていた。


「実際のところ、もうあまり時間がなくて、先週襲われたところだし、さっさとケリをつけないと手遅れになりそうなんだ」

「意思霊かぁ~、厄病魔や神力ついては私なりに体感しているから理解は出来るわ。でも、大和と愛吹ちゃんが神さまだったってところは、まだちょっと無理かなぁ~」


「まぁ、いいよ。全部を理解してもらおうとも思っていなから、ただ俺達がいなくなってしまっても、こういう事情だから心配しないでってことを伝えたかったんだ」

「うん、それは分かったわ。出来ればいなくならないで欲しいけど、危なくはないの?」

「危ないかも知れないけど、自分達で戦わないと誰も助けにはならないから。それに三人だしね」

「三人って?」


「従姉妹の蘭って子なんだけど、彼女も神さまの子だったんだ。実は俺、彼女と婚約したんだよ」

「蘭ちゃんなら知ってる、二度ほど会ったことがあるよ。へぇ~、そうなんだ、あの子と婚約したの」


「うん、お前とのこともあったから、今度女の子と付き合うなら結婚って決めてたからな」

「トラウマになってたのね」

 暮羽は、にやっと笑い少し叔母さんぽい表情をした。


「そういうことなら、おめでとう! って言わなきゃね」

「ありがとう」

「でも、フィアンセを危険な目に合わせちゃダメよ」

「そうしたいのは山々なのだけど、なんせ、眩しいくらいに真っ直ぐなヤツだからね。それに、今回のは俺達三人に与えられた試練だから、三人でやり遂げなけりゃならないんだ」


「まぁ、色々と神さまの事情があるのね」

「ああ、そんなところだ」


「いろんな事情は全部は理解できないけど、私は大和が蘭ちゃんと婚約したって聞いてホッとしたなぁ」

「ははは、俺もお前の同じ話しを聞いたらそう思ったかもな」

 暮羽は竹林の香りを吸い込むように、大きく手を上げて深呼吸をした。


「分かったわ。どんな形になるにしても、蘭ちゃんを幸せにしてあげてね」

「うん、もちろんだ」

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