64 襲撃
人影の数はざっと七人。無言で俺達を取り囲んでいる。なんだ、なんだ? どう見ても穏やかではない。
薄明かりの中、そのうちの二人が別方向から現れたこのグループとは違う別の二人組に手刀で倒された。
「私達の後ろに隠れてください」
近くに寄ってきた二人組は、俺達を守るようにそう言った。スミス君とラパラ君だった。えっ? 今までずっと見てたの?
恥ずかしいと思ったが、そうも言っていられないい。俺と蘭はスミス君から貰った、神水サングラスをかける。残った五人から紫の靄が立ち込めていた。
黄泉の厄病魔に憑かれた連中のようだ、たぶん意思霊の手下ってことなんだろうな。それ以外にこんなグループに襲われる覚えがない。
「スミス君、大丈夫だから」
俺はそういうと、戦闘意欲に燃える蘭を庇いながら神石を握りしめた。
翳した手の平の前の空気に神力をこめながら、念ずる。
パシュ! パシュ! パシュ!
あたかもサイレンサーで撃つ銃のような、押し殺した射撃音を伴って、五人に空気砲が命中する。
命中した五人から、紫の靄が消え正気に返った。
五人は自分がここで何をしていたのか、戸惑っている様子だ。
「えっ? 今、何を?」とスミス君
「神力で撃ったんだよ。黄泉の者は消えたと思うよ」
「これが、神の力ですか!」
「いや、まだ見習いだけどね」
倒れた二人にも、直接神力を注ぎ、紫の靄を消す。
少し離れた車の陰から、男が飛び出してきた。
なんだ? ボスか?
「アリエナイ! アリエナイ!」
男が懐から武器のようなものを取り出す。
ヤバイ!
そう思った瞬間、男は俺の後ろから鎌型に三発飛んでいった斬撃で倒されていた。
スミス君とラパラ君が、間髪を入れず駆け出し男を取り押さえる、武器も確保したようだ。
「ありえないは、こっちのセリフだ! 大切な日なのに!」
振り返ると、蘭が三段式警防を手にしていた。
「そんなもの持ってたのかよ」
「護身用だぞ、初めて役に立った」
キスしようとしていた自分のフィアンセが、三段式警防を持ち歩いていたとは知らなかったよ。
先の正気に戻った七人は、それぞれに逃げて既にいなくなっている。まぁ操られていただけみたいなので、問題ないだろう。残されたのは最後の男だけだった。男にまとわりついたかなり濃い紫の靄を神力で消し去ったが、それでも男は正気には戻らず、宙を見つめて何か言っている。
「・・・・・」
何のことやらさっぱり分からない。
「ひとまず、この男については、こちらの組織で確保し取り調べの上、しかるべき処置を行います」
とスミス君。男が落とした武器のようなものを拾って見せてくれた。武器に見えたものは、星のマークがかかれているカードだった。
「なんだろう?」
「これは、五芒星ですね。魔よけの印です」
「なんで、こいつらが魔よけのお札を持ってんだろ?」
「でも、逆さまにすると、逆五芒星、デビルスターって呼ばれる地の底とのつながりを意味するものになります。悪魔の召還なんかに使われる記号です」
「じゃ、これで親分を呼ぼうとしたってことかな?」
「たぶんそうでしょう。でもこれではっきりしました」
「そうだな。こいつらに俺達のことが知れて、敵として仕掛けてきたってことだな。用心しないとね」
「ラパラ君もこれ持ってて、やつらに憑かれる心配はなくなるから」
俺はスミス君に渡したのと同じ虹色の神石をラパラ君にあげた。
「アリガトウゴザイマス」
ラパラ君は初めて話したが、あまり日本語は得意ではないようだ。
「龍を釣るときに、お世話になるのでよろしくね」
「ヨロシクオネガイシマス」
「ラパラはギャフマンです。龍に最終的にギャフを打ち込むのは彼になるでしょう」
とスミス君。
「じゃぁ、スミス君とヤマシタさんは?」
「私が、リーダーマン。釣った龍のショックリーダーを掴んで手繰り寄せます。ヤマシタはスキッパーで船の操舵を行います。アングラーは貴方です。これが今回のチームジャッカルです」
「いやぁ、心強いな。よろしくな」
「では、長居も出来ませんので」
スミス君とラパラ君は、ボスを連れて消えて行った。
「俺達も長居せずに帰ろうか」
「うん。なんだか龍釣りが大層なことになってたんだな」
「そうなんだ、カジキと同じ釣り方で挑戦することになったんだ、だから蘭と愛吹は側で応援だな」
「なんだ、私も釣りたかったぞ」
「龍玉が出るとは限らないだろうから、出るまで交代で釣ればいいさ」
「じゃ、私も釣れるかもだな」
「そんときは、ビキニの水着で釣ってくれよ」
「また、大ちゃんはおっぱい好きだなぁ~」
海外で美女がカジキを釣るときは、ビキニ姿と相場が決まっている。俺は蘭がビキニでカジキと格闘している姿を想像して、鼻の下を伸ばしていた。




