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63 神水サングラス

「そうでした。カル様から、これを預かってきました」

 スミス君がくれたのは、おしゃれな伊達眼鏡だった。

「アナタの神水をレンズの間に封じたメガネです。私もかけていますが、これは凄いですよね。悪いものが紫色で全部見えます」

「そうだろ? 時々人の格好をした、紫の影みたいな奴がいるだろ? それが厄病神で、意思霊に操られている人達にとりつく黄泉のヤバイ奴だよ」


「見えると分かりやすいですね。気配も分からないから、まるでプレ○デターと戦っているようでしたから」

「だろうな。人に憑いたのは神水で消せるけど、自力でうろついている奴は神力が無いと難しいな」

「そうなのです、味方に憑いて敵に変わるんです」


「そうだ、これを持ってて、護身用だよ」

 俺は、スミス君に虹色の神石をプレゼントした。

「神力の塊だから、身に着けてると、とりあえずスミス君が憑かれる心配は無くなると思うよ」

「貰っていいんですか?」

「うん、これから釣り仲間になるからね」

「ありがとうございます」


「カル様は、これも作りました」

 スミス君が取り出したのは、どう見ても水鉄砲だ。

 子供用のものに比べると重厚で片手持ちのハンドガンとして使えるように出来ているが、カートリッジで神水の入ったカプセルを交換できるようになった水鉄砲だ。


「炭酸ガスの圧縮ボンベを使用しているので、二十メートルは飛びます」

「マジでこれで戦うのか?」

「普通の銃火気は役に立たないことは分かっていますから、これ意外に効果のある武器がないのです」


 いや、ワルサーとかベレッタとか、諜報部員ならそういう武器で立ち回りそうなものだが、うちのエージェント達は水鉄砲で立ち回るのか。なんだか気の毒に思えてきた。


---------------


 その夜、久しぶりに蘭と街に出た。

「うふっ」

 俺と腕を組んで歩いているだけで幸せそうな蘭。

 確かにこうしていると、俺の婚約者は超可愛い。このまま永遠の時間を二人で過ごすってのは、悪くない話しだ。


 食事の後、俺はバッグから婚約指輪を取り出し蘭に差し出した。やはりこういうことは、ちゃんとした手順を踏んでおかないと後で後悔することになりそうな気がするので、愛吹から蘭のサイズを聞き出し、こっそり購入したものだった。


「蘭、これ」

「これって! エンゲージリング?」

「うん、正式にはまた常世に行って蘭のお母さんに話してからだと思うけど、ちゃんと形にしておいたほうがいいと思ってね」

「うわぁぁ、すっごく嬉しい!」

 俺は指輪を取り出して、蘭の指にはめてやる。


 蘭は微笑みを浮かべ、自分の左手薬指にはめられたその指輪を愛おしそうに右手で擦りながら聞いた。

「大ちゃんは、成人の儀の後、どうしようと思っているのだ?」

「実際のところ、まだ決めていないんだ。もう少し詳しいことを知らないとなんとも言えないだろ」

「そうだな。でも子供を育てるにはどの道、この世界で育てる必要があるのだから、私としては自分達で育てたいぞ」

「そうだな。俺も自分の子は自分で育てたいな」


 俺の心中は本当にこの通りなのだが、これには、気になっている問題があった。

「神になって、回りから見えなくなった状況で、この世界で家庭を持って子育てをするって出来るのな?」

「うん、私もそう思うのだけど、うちの母さんに聞いたら、なんとでもなるって言ってたぞ」

「なんとでもなる…か、まったく神さまらしい言葉だよな」

 なんとでもなるんなら、その時考えればいいかと思えてきた。


 蘭と再び腕を組んで、店を出る。蘭とだと背の高さが丁度いいというか、それよりもずっと腕にあたる柔らかな感触が心地よすぎる。

 薄暗く人気もない街の中央から外れたところにある、車を置いた無人駐車場まで歩いて蘭が立ち止まる。ペトーっと抱きついてきて

「今日はありがとう。私の秀真名(ほつまな)は、豊紅蘭咲姫とよあかのらんさくひめだぞ」


 そう言って、目を閉じる。

 これは!… そういえば、蘭の秀真名(ほつまな)を知らなかった。

 ここで、わざわざ教えるってことは、全てを委ね与えるってことなのかな…

 俺が蘭にキスしようとした時だった。駐車した車の陰から現れた数人の人影に囲まれた。


「なんだ? 今、いいとこなのに」

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