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54 儘同天皇

 儘同天皇(じんどうてんのう)はね、大化の改新後のややこしい時代の女帝でね、かなり無理をして即位したようだ。今ですら皇室で天皇に女性が即位するのは結構もめるのだから、ましてや、天皇は神であった時代だ、本当に大変だったのだろうね。

 カルばーちゃんは、儘同天皇の意思霊について説明を始めた。


 在位期間については、善政だったようで天皇としては申し分はない、それだけ出来る女性だったのだろうね。ところがこの天皇は自分の女帝としての正当性を示すために、『神ごろし』をやっちゃったのさ。そして、殺された神があなた達の母親、瀬織津姫様だったんだ。


 なぜ、瀬織津姫様だったかと言うと、最高神のアマテラス様が女神であることで、自分の女帝としての正当性を示したかったそうだが、それには、アマテラス様が男神であったという時代の妻であった瀬織津姫様が邪魔だったのだろうね。アマテラス様が女神ではなくなってしまうからね。

 もっとも神ごろしと言っても、葦原の人間なり神なりが、高天原や常世におわす神々に実際に手をかけれるわけではない。葦原で瀬織津姫を祭る神社に、片っ端から圧力をかけて祭神を入れ替え、執拗に人心の中から瀬織津姫様を消そうとしたんだね。


 元々、瀬織津姫様を主祭とする神社は多くて、人々に愛されていた神様だったから、当時の人民や土地神には反対も多くて、それに対しては、あの女は容赦なく弾圧していったそうだよ。

 瀬織津姫様につく人民は処刑され、八百万の神々は妖怪に蹴落とされてしまったそうだ。


 ここまで聞いて、俺と、愛吹、蘭の三人は顔を見合わせる。三人ともアマビエのことが頭に浮かんだようだ。それで…と納得した顔になる。アマビエも気の毒な神さまだったんだな。しかも自分達の母を守っていてくれたとは。


 この弾圧は、明治まで続いたというから驚くよね。儘同天皇の意思霊だけではなく、秘密結社のようなものがあることまでは分かっている。人間は霊に操られているだけのようだがね。

 たぶん瀬織津姫様には、こんな時代があることが分かっていたから、儘同天皇の意思霊があなた達に害し難い、比較的平安な時代を選ばれたのだろうね。あなた達の育ての親と大和君が先に来て、それに合わせて後から天龍殿夫妻、そして蘭ちゃんが、三千年を飛び越えてこの時代にやって来たということだ。


「そうだったんだ、叔父さん、そんな大変なこととは全く知らなかった、叔父さんほんとうに何も知らずに、すみませんでした」

「はっはは、何を言うか大和君、私はこの時代が結構気に入っているし、時奴さんのお陰で、結構楽しんでいるぞ。蘭を育てるのにも最高の環境だった、環境はな」

 チラッと蘭を横目で見る。

「私は、なにも間違った選択はしておらんと思っているし君たちは何も謝る必要などない」

「そうだぞ、大ちゃん、私は生まれたときからこの時代だからな。三千年前より、大ちゃんや愛吹ちんと一緒の方がいいぞ」

「ほんとうにごめんなさい」

 愛吹は涙ぐんでいる。


「気に入った! 私は三人が気に入ったよ」

 カルばーちゃんは、なんのツボにはまったのかニコニコしながら、次の話しへと進む。


 儘同天皇の意思霊と秘密結社の話しなんだけどね。今でも残っているんだよ。

 あなた達の育ての親の釜克殿があなた達を守るために意思霊を退治すると聞かなくて、うちの手練れを数人連れて退治に行ったんだ。けれど武器もなにも効かなかったらしく、全員返り討ちにあってひどい怪我を負って帰ってきた。


 叔父さんがうんうんと頷きながら口を開く。

「そうなのだ、私も行くと言ったのだが、もしもの時に大和君達を守るものがいなくなると言ってな、私の同行は許されなかった。結局、千霧子さんが療養のために、常世に連れ帰ることになったのだ。神力さえたっぷりあれば、あんなもの消し飛ばしてやったのにのう」


「折り入って大和君に頼みがあるんだよ。ここにいる皆さんにも関係があることなのだが」

 とカルばーちゃんが切り出す。

「なんですか?」

「今直ぐにとは言わぬが、現人神である、大和君に儘同天皇の意思霊を退治してもらいたいのだ」

「えっ…」

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