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52 ルーツ

 やっと叔父の天龍は、主従関係のない今まで通りの関係の話し方に戻してくれ話しは、俺達がこの世界に来た事情から始まった。


 まず、高天原や常世には、時間の流れというものがほとんど無いことから話そう。だから、神々の国は不老不死だといわれるが、常世からみれば葦原の中つ国は、そうじゃな、居間で本を読んでいるように見える。

 過去のページを見ることも、ずーっと未来のページを見ることも出来き、そのページに同期すれば、本の中に入って話しを変えることもできる。但し、神といえども過去を変えることは出来ぬので、一度同期した時代よりも未来には入れても過去には入ることは出来ぬ。


 規則的な時間の流れがないために、禊ではじめから成人として生まれた神々ならともかく、生んだ子はそのままでは大きくならん、葦原に降ろして育てねば大きくならんのだ。これが、きみ達や蘭をここに降ろした理由じゃ。


 ただ、あまり葦原に派手に介入し神の存在を示し歴史に変更を加えると、他の神々からも文句が出たり、他の介入が起こったりするので自分の子を降ろしても静かに育てるだけで、神にしか無しあえないような特別な加護は行わぬのが通例での、その為に今まできみ達には秘密にして育ててきた。


 瀬織津姫様のことになるが、アマテラス様は最初は男神であった。なので乙姫様、いや瀬織津姫様を娶られたのだが、子が出来ぬ。そのため、アマテラス様は少年から青年になろうと葦原に降りられた。すると、どういうことか男から女に変わられてしまったのだ。


 うんうん、魚にもそういう雌雄転換があるな。チヌ(黒鯛)なんかも、二年魚くらいのときはオスだが、その後メスに変わる。などと、俺はアマテラスを魚に置き換えて理解した。


 女どうしでは、結婚は成立せぬ。このため、瀬織津姫様は離縁されて常世のワダツミ様を頼り、竜宮を与えられ乙姫様となられた。こんな話しは古事記には書かれてはおらん。


 母の乙姫様がバツイチだったとは、また衝撃の事実を知った。


 そこに、葦原から男神がやってこられた。ニギハヤヒのミコトと言う、アマテラス様の孫にあたるお方だが、天皇の直系にあたるニニギノミコトの兄上でな、天磐船(あまのいわふね)に乗って高天原より降りてこられた。葦原を経て常世にこられたのだ。

 お二人は一目ぼれというか良い中になられて再婚され、そして君たち二人が生まれた。

 愛吹ちゃんを身籠もられた時、お父上は呼び出されて葦原に戻られた後、神武天皇の家臣になられ、もう竜宮へは戻ることはなかった。このときの事が伝説となり、君たちも知っている浦島太郎の話しができたのだ。神が臣下になったが、髪が白髪になったと変わっておるがな、ふわはははっ!


 叔父さんのジョークらしい。笑っておこう。


 母上の瀬織津姫は、南のほうでは、『海の神さま』として祭られている。イザナギ様の禊で生まれた神で古事記ではアマテラス様、ツクヨミ様、スサノオ様の三貴神となっているが、実は母上を入れた四貴神が本当だ。だから、君たちはイザナギ様の孫となりお父上よりも格式の高い神なのだ。母上と同じ『海の神さま』と言っても間違いないだろう。


 アマビエが海の神さまだと思っていたので、自分が海の神さまだと言われ、かなりの抵抗を感じる。


「いや、俺達はまだそんなの神力は持ち合わせていないですよ」

「神力? 神力といわれたか? そうか、もう大和君は神力に目覚められたのか。そうだろうな、ヤサカニノマガタマは神力がないと使えぬものな。そうかそうか、それは喜ばしいことだ」


「愛吹も蘭も常世の神魚を釣って、神力が使えるようになったんですよ」

「なんと、蘭までもか?」

「そうだぞ、お父さん。私は神力で斬撃も飛ばせるようになったんだぞ。無敵だからな」


「神力で斬撃? 聞いたことがないが、そんな事も出来るのか、今度、道場で見せてくれ」

 そうだ、蘭の家…と言っても場所は違うが紅毛流には道場があったんだ。

「俺は、神水が出せるようになりました」

 お茶を飲み干したコップに、神水を出してみせる。

「おぉ、まさしく神水ではないか。これほどまでに簡単に…流石は乙姫様のお子様じゃのう」

 叔父さん、叔母さんはそれを見て少し涙ぐんでいる。


「さて、神力まで得ていらっしゃるというならば、お二人、いや蘭も含め三人に是非とも会わせておきたいお方がおられる」


 叔父さんは、改めてそう話しを切り出す。

「島野家と我が紅毛家が突然常世からやってきて、いくら神がかりとはいえ自分達だけで今の生活や地位が出来たわけではない。当然、この葦原においてそれをお膳立てし、お二人が神力に目覚め神として成人するまでをサポートしてくれた御仁がおられる」


 もっともな話しだ、いくらこの世界で子供を育てる必要があるとはいえ、三千年もぶっとんだ今の時代に預けるにはそれなりのお膳立てと組織が必要だったはずだ。それに守られていたからこそ、俺達は自分の出生の秘密も知らず、普通の人間としてこれまでのうのうと生きてこれたのだろう。


「その御仁は時奴(ときやつ)カル様と言われてな。日本の神社の氏子総代と関西経済界の裏のドンと言われる、財界にも政界にも影響力のある方だ」

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