50 衝撃の事実
タコ神石が再び赤色に変わり通信が再開した。
「お母さん、本当にお母さんなの?」
「そうです。アイブキヒメ私があなたを生んだ、セオリツですよ」
「えー! セオリツヒメ? セオリツヒメがお母さんなの?」
「知ってるのか? 愛吹」
「勿論、セオリツヒメは、アマテラスオオミカミの奥さんだった神さま。伊勢神宮や出雲大社にも祭られているけど、古事記には出てこない謎の神さまよ」
「よーく勉強していますね、アイブキヒメ」
「あっ、アブって呼んで下さい」
「アブですね、分かりました。長い間名乗り出ず本当にごめんなさい、ヤマトノミコトもこんな母を許してはくれませんか?」
「俺はヤマトと呼んで下さい。許すも許さないも、俺達を育ててくれた父さん母さんからは、詳しいことは教えてはくれなかったけど、母さんの人柄と俺達のおかれている状況は悪いものではなく、その時が来たら何もかも分かるから、母さんだけは決して恨むなと言われて育ったよ」
「そうですか、釜克と千霧子はあなた方にそのように言いましたか。二人は今、こちらにいます」
「えっと、そちらはどちらなんですか?」
「常世の国の龍宮ですよアブ」
「義父さんと義母さんは、外国に行ってたんじゃなかったの?」
愛吹は俺を見る。いや、俺も今初めて聞いたよ。南米のホンジュラスだって聞いてたけど、嘘だったのか。
「確かに外国には違わないけど、義父さんと義母さんは元気ですか?」
「釜克は大変な傷を負って、常世に運ばれたのです。今は大分元気になりましたよ」
「怪我をしたって? なんで?」
「少し込み入った話になりますから、詳しいことは、紅毛天龍と常緑に聞きなさい。とにかく、命には別状ありません」
紅毛天龍とは、蘭の親父だ。しかし展開が大きすぎて、状況に俺も愛吹もついて行けない。また光が弱くなり始めた。
「アブ、ヤマト…会えてよかった。詳しいことと今後のことは天龍と常緑に聞きなさい…」
また通信が切れてしまった。
「おかぁさん…綺麗な人だったわねぇ~」
「いろいろと衝撃的な話の連続で頭も気持ちも付いて行かない。愛吹、一度整理しよう」
「うん、私もそう思う」
先ず俺達の本当の名前だけど
瀬戸浦島大和命
瀬織島愛吹姫
母親と父親は
瀬織津姫
邇芸速日命
で、乙姫と浦島太郎らしい。
義父乳母夫、義母は乳母は
島野釜克
島野千霧子
一応の叔父、叔母、従姉妹が
紅毛天龍
紅毛常緑
紅毛蘭(蘭姫?)
母、義父、義母は、常世の国の龍宮に居て、義父、義母は怪我の療養中、父親は昔に亡くなった。
「愛吹、父のニギハヤヒノミコトについて何か知ってるか?」
「えっと、アマテラスオオミカミの孫よ。古事記では皇室の直系にあたる、ニニギノミコトのお兄さんで、天磐船に乗って高天原から降りてきたと言われてるよ。最初の天皇の神武天皇に仕えたって」
「さすがは、日本史専攻だな。詳しいな」
「私だって、ボーっと生きてきたわけじゃないからね」
そうだった、愛吹は歴女だった。
「さっき、アマテラスの奥さんって言ってたけど、そもそもアマテラスって女神なんじゃないのか?」
「古事記にはそうあるけどね、秀真伝って江戸時代に発見された古文書があってね、これは古事記より古いって言われてるけど、それにはそう書いてあるらしいの。母さんは否定しなかったから、ほんとの話しなのかもね」
「それって、いつ頃の話なんだ?」
「古事記の編纂が七百年くらいだから、それよりも前?神武天皇の即位は紀元前六百六十年と言われてるから、父さんと母さんが結婚したのは、それよりも昔の話しということになるわね」
「ざっと、三千年以上昔の話しってことなのか、神さまって何でもありだな。二十七年くらいほったらかされても、刹那の時間ってことか」
日本海のイカはトホホな結果でした。
神石欲しい。
けど、神魚並みに入れ食いした、大きなアジと少ないケンサキイカの沖漬けは最高でした。
日本海、ありがとう!




