44 たこ焼き大作戦3
俺は、台所から空のコップを三つとってきた。
「これにも入れてくれ、どんな味か飲んでみたい」
「お安い御用じゃ」
あっという間に、三つのコップが濁り酒でなみなみと一杯になる。大吟醸を思わせるフルーティな香り、飲んでみる。甘いのにベタベタせず、あっさりと飲みやすい。仄かに酸味があり、口の中に甘い果実を食べた後のような爽快感が残る。
「これ、旨いぞ。軽いし」
「どれどれ、私も飲んでみるぞ」
「私もいただく」
愛吹と蘭も興味深々で飲みたくなったようだ。
「これは、飲みやすいぞ」
「うん、たこ焼きにも、煮付けにも合うね」
「ほっほっほ、いくらでも出してやるぞ」
たこ焼きの鉄板は二順目に入っている。自分達で釣った魚を、こんな美味しいお酒を飲みながら食べるって最高の贅沢だな。
「危険な食べ物だと思ったが、よく冷まして食べると、このたこ焼きとやら、美味しいものだのう」
「でしょ? 私は明石焼きが好きだなぁ~」
「私もだぞ、愛吹ちん」
女子達には好評のようだ。それにしても、この酒うまいなぁ~。
「バカ神様、このピッチャーに満タンに出しておいてくれ」
「ほいの」
アマビエは、直ぐに一杯にしてくれた。
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タコ焼きが五順目に入った。お腹がだいぶ良くなってきた。ピッチャーは、既に残り少なくなっている。
「ヒック、酒が切れたのう、それ!」
また、アマビエが満タンにする。
「いや、アマビエ、そんなに飲んだらいくら神酒でも身体に悪いから…」と俺は、少し目が座ってきたアマビエに言う。
「なに、我の酒はもう入らぬと? そなた、常世の門を開いた時も、釣れすぎて面白くないとか言っておったのう?」
ええっ、バカ神さま、からみ酒ですか?
「そなたは、淡白すぎるのじゃ、男なら、もう少しガツガツとじゃのう…」
「そうだそうだ、大ちゃんは淡白すぎるぞ~。こんな美女三人に囲まれているというのに、タコ食っててどうする」
蘭、こいつもかぁ~? 勘弁しろよ、アマビエの酒、ヤバイ物でも入ってんじゃないのか?
「タコ焼きパーティーだから、タコ食ってんだよ、愛吹、なんとか言ってやってくれよ」
「ぐす…二人の言うとおりよ。お兄ちゃんはね、淡白っていうか優柔不断すぎるから…私は暮羽さんがお姉ちゃんになると思ってたのに…ぐす、ぐす」
えっ! 愛吹は泣き上戸だったのか? やっぱり、この酒ヤバイぞ。
「ハイハイ、分かった分かった。もうお酒お仕舞い、いいな」
「だめだ~! まだ飲むぞ。ほーら、大ちゃんの好きなノーブラおっぱいだ、これをツマミに飲めぇ」
蘭は、いきなり上着を脱いで、タンクトップ姿になった。
「蘭、お前、脱ぐとかやめろぉ~! 自分のおっぱいをツマミとか言うな!」
「そうじゃった、そなたは、おっぱい好きであったのう、ほれほれ」
アマビエが自分でおっぱいを持ち上げて、寄ってくる。
「やめろー、キャミソでおっぱいとか持ち上げるなぁ~ こぼれるぅ!」
「ぐすぐす…二人とも、おっぱいが大きくていいなぁ~ …ぐすぐす」
愛吹ちゃん、そっちですかぁ~?
たこ焼きパーティーは、どういう流れかおっぱい祭りに変わってしまった。うーん、淡白な俺が悪いんですかぁ?
嬉しいような、悲しいような。手を出したら、とんでもないことになりそうだから、見せびらかされて手を出せない自分がやっぱり悲しい。
そうこうしているうちに、アマビエは座ったまま眠ってしまった。客間に布団を敷き、アマビエをお姫様だっこして連れていき寝かせてやる。あまりに軽いので驚いた。
蘭と愛吹は、愛吹の部屋へ引き上げていき、俺は後片付けをして、なんだかとても幸せな気分でベッドに入った。
こうして、たこ焼き大作戦改め、おっぱい祭りの夜は終わった。




